episode

 

 

 

 

 

 「………きって…」

「なに?なに、ナルト」

今にも途切れそうな息で何かを伝えようとナルトが唇を動かす。

「好き、って…伝えて………」

その言葉が、カカシの胸を引き裂く。

その言葉が、与えられる人間が自分ではないことを思い知らせる。

けれど、カカシに拒絶することは出来なかった。

だから、問う。

「誰に?誰に伝えれば良いの?」

カカシの問いに、ナルトは淡く微笑む。

そのまま、静かに瞳を閉じた。

「ナル…ト………?」

さっきまで、弱々しくもちゃんと聞こえていた鼓動が聞こえない。

薄く開かれた唇からも、もはや呼吸をする気配を感じられない。

「ナルト?ナル………」

腕に抱いた小さな体を揺さぶる。

目を開けて欲しくて。

再び自分を見て欲しくて。

「ナルト…ナルト………」

少しずつ失われていくぬくもりが怖い。

その現実を思い知らされることが怖い。

「ナル…なん………」

何故、という問いは、カカシの口からこぼれることはなかった。

ただ、押し殺したような嗚咽だけが噛みしめられた唇から漏れる。

その瞳からこぼれだした滴が、青白いふっくらとした頬に散った。

 

 

 

どうして黙っていなくなってしまったの?

 

どうして最後に俺のところに来たの?

 

どうして

 

どうして

 

 

 

腕の中でこと切れた小さな小さな、愛しい命。

その言葉は誰に向けたものだったのか。

今はもう、確かめる術も………ない。

 

 

 

 

 

 

 

 君は誰が好きだったの………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カカシは返ってくることのない問いの答えを、ただ声を殺したまま…待ち続けた。

 

 

 

To untruth

 

 

 

 

 

 

 

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