下ネタ井戸端戦線

 

 

 

 ある日の木の葉の里の一角で。

「どう思うよ?」

「ふん」

「バカらしい」

「………」

真剣な顔をして話し合っている人影があった。

「なんだよ、結局知らねぇんじゃん」

勝ち誇ったように言うキバと。

「チッ」

小さく舌打ちするサスケと。

「興味がないな」

切って捨てるネジと。

「………」

なにを考えているのか分からないシノ。

随分と変わったメンバーである。

と、いうよりも、このメンバーが集まったならば、話題はたったひとつ。

「だからさぁ。ナルトのヤツ、髪が金髪だろ?」

ナルトのことだ。

ナルト親衛隊とか、ナルトファンクラブとでも名付けたくなるようなこのメンバーは、自分の知らないナルト情報を定期的に交換し合っていた。

当然、おいしい情報などは独り占めしつつも、なぜか解散されることなくこの情報交換会は続いている。

そして、今回の議題(?)はというと………

「下の方も金髪なのか?」

で、ある。

頭痛がしてきそうな下品な内容だが、多感なお年頃(?)なメンバーにとってはかなり重要な内容なのだろう。

「なぁ、誰か知らないのかよ」

せっつくキバに、メンバーは沈黙している。

答えられないのだ。誰も知らないのだから。

「なんだ、誰も知らないのかよ」

「知っていますよ」

「どわっ!」

突然メンバー以外の声が響いた。

それも、キバの真後ろから。

「僕のデータでは、ナルトくんの髪の色は天然だそうですから、当然下も金のはずです」

さりげなく眼鏡を押し上げながら、カブトが姿を現した。

「この程度の情報を得られないようでは、忍の名折れですよ」

言われ、メンバーはグッと息をのんだ。

だが、勝ち誇った笑みを浮かべたカブトが消えようとした途端、

「残念だけど、君は少し誤解をしている」

別の声が聞こえてくる。

「なっ!!」

声に聞き覚えがありすぎるサスケが反応し、辺りを見回した。

「どこだ!どこにいるっ!?」

「ここだよ、サスケ」

からかうような笑いを含んだ声が聞こえたかと思うと

「ぐぇっ!」

サスケの真上に、イタチが現れた。

「やあ、サスケ。元気かい?いくら俺がいないからって、調子に乗ってナルトにちょっかい出したらお仕置きだからね?」

にっこり笑って言いながらも、サスケの上から退こうとしない。

「あのぉ…どういうことっスか?それ」

赤丸の尋常でないおびえ方に、一応控えめに聞いてみたりするキバ。

「ナルトはね、昔は髪が今と違って黄みがかった茶色だったんだよ。髪は多分日焼けでよけいに色が抜けちゃったんだろうから、多分下は茶色だね」

ふふふ、と笑うイタチだったが、なんだかその笑顔が恐ろしく感じるのは気のせいだろうか。

「いい加減退きやがれ、このクソ兄貴!!」

「おっと」

なんとかイタチを押しのけて立ちあがることに成功したサスケが、肩で息をしながら怒鳴りつける。

「危ないじゃないか」

「”危ないじゃないか”じゃねぇっ!人の上に出てくるなぁっ!!」

ホルダーから引き抜いたクナイを投げつけるが、それをすべてイタチは受け止めてしまった。

「だめだろ?ナルトは抱っこされるの好きなんだから、あれぐらいは持ちこたえられなきゃ。サスケはちょっと力がなさすぎるよ?」

ナルトは抱っこが好き、という言葉が一同の頭を巡る。

「そんな情報あったか?」

キバの問いに、シノは黙って首を振った。

「頭を撫でられるのが好きなのは知っているが」

さりげない一言に、キバが沈黙する。

「お前………そんな情報握ってやがったのかよ」

自分の知らない情報に、キバは怒りを通り越して脱力した。

「イルカとカカシと俺にしか、普段は許さないから、話しても仕方ないと思ったからな」

さらりともの凄い発言をして、シノは目の前で繰り広げられている一方的な兄弟喧嘩にふぅ、とため息をつく。

同時にキバも、こんな人間と今までスリーマンセルを組んでいた自分に同情すべくため息をつく。

「とりあえず、ナルトのことなら俺が一番かな?」

どことなく勝ち誇ったような顔をしているイタチを前に、下忍(エセ含む)たちが敗北を認めようとしたその時だ。

「なにを言っているの」

微妙なカマ言葉で登場してきたのは大蛇丸だった。

途端、イタチの目つきが鋭くなる。

「ああ、これはこれは」

イタチの存在を認めた大蛇丸も、眼を細めて好戦的に笑んだ。

「あら、あなたもいたの?まあ、その程度でナルトくんのすべてを知っているかのような顔をされちゃ困るけど」

肩をすくめて手を横に広げ、大げさに嘆いてみせた大蛇丸に、イタチの眉がピクピクしてくる。

「私はあの子が生まれた時から知っているのよ?当然、あの子の親だって知ってるわ。あの子の父親も母親もく・ろ・か・み。良い?人の髪の色って、後天的に変えない限りは親と同じ色を継ぐのよ。九尾の影響で金色になってるみたいだけど、まさか下の方にまで影響が出るなんて思えないわ。だから、あの子は黒ね」

きっぱりと断言し、ふふん、と勝ち誇った笑みでイタチを見る。

ギリギリと歯ぎしりしながらも、イタチは負けずに、

「そうですか。だてに年をとっていらっしゃるわけじゃなかったんですね。亀の甲より年の功、というヤツですか」

「なっ!!」

年齢のことを言われ、大蛇丸は激しく動揺する。

どうやら禁句だったらしい。

そのままギリギリとにらみ合う二人の上忍を前に、下忍5人はあきれていた。

ヘタに手を出して、とばっちりをくらうのもばからしいので放っておく。

それにしても、突如わいてきたこの連中。

見たわけでもないのに、よくこうも断言できるものだ。

「俺的には」

「ぅわあぁぁっ!」

突然地面からニョッキリ生えてきたカカシに、キバが驚きの声をあげる。

心臓の弱い人間だったら、今日これで何回死んだだろうか。

「ツルツルが良いなぁ」

イチャパラ片手に、にんまりと顔を崩したカカシに、思わず顔が引きつる。

 

『誰もお前の好みなんぞ聞いとらんわ!!』

 

その日初めて、全員の意見が一致した。

はっはっはっはっはっ、などと笑いながら再び地面に消えていったカカシは、もはや人間の域を脱してしまっているようで怖い。

「ヤツは妖怪かっ!?」

「お前………よくあんな上忍の下で過ごせるな」

「好きで教わってるんじゃないっ!」

「俺なら辞めるな」

「だから、好きでやってるんじゃないと言っているだろうっ!!」

冷たい視線の中、サスケが孤軍奮闘していると………

「おーい!みんな何してるんだってばーっ!!」

可愛らしい声とともに、向こうの方からナルトが駆けてくる。

笑顔全開で、どうやら機嫌がとてもよろしいらしい。

「あれ?大蛇丸とイタチ兄ちゃんがいるってば。どしたの?」

きょとん、と首を傾げたナルトの愛らしさに、全員が叫びたいのをグッと堪えた。

「みんな楽しそうに、何話してたんだってばよ」

にこにこと、まるで混ぜてvと言わんばかりのナルトの様子に、キバを除いた全員がハッとする。

まさか、話していた内容そのままをナルトに伝えるわけにはいかない。

だが、キバは違った。

むしろ、本人に聞けば謎はすべて解けるとばかりに口を開く。

「ナルト、お前さ。もう、下生えてんの?」

「なっ!」

顔を真っ赤にしてナルトは反論する。

「生えてるってば!ばかにすんなってばよーっ!!」

握りしめた拳をぷるぷると震わせながら渾身の力を込めて断言した。

その様子は「まだです」と言っているようで、なんだかそれはそれで微笑ましい。

「んじゃあ、お前ってさ。下も金髪なワケ?」

ついに、キバは言ってしまった。

よく言った!とばかりにガッツポーズを取る、カブト、イタチ、大蛇丸。

興味はない、といった風体だが、耳だけはいつもの三倍は働かせている、シノ、ネジ、サスケ。

だが、キバはいらぬ一言を言ってしまった。

「さっきからみんなで話してんだけど、誰も知らねぇんだよな。教えてくれよ」

全員の顔が真っ青になる。

ナルトはうつむいて黙り込んでしまった。

「あ、あれ?ナルト?」

いきなり気まずくなった雰囲気に戸惑い、キバがナルトの顔をのぞき込もうとする。

「み…」

「み?」

 

 

 

 

「みんな大っっ嫌いだってばよーっ!!」

 

 

 

 

ナルトの絶叫と共に、見事なアッパーカットがキバの顎をとらえた。

[ふっ…成長したな、ナルト………]

と、キバが思ったかどうかは知らないが、殴られた衝撃で浮き上がったキバの体は、ゆっくりと地面に沈んでいった。

「ぅわあああああぁぁぁーんっ!」

泣きながら走り去ってしまったナルトを追うこともできないほど、その場にいたメンバーは大打撃を受けた。

ちなみに、一番変態なことを言っていたカカシは、ナルトが登場する前に消えていたために、この『大嫌い攻撃』を受けることもなく、人生色々でお茶なんぞをすすっていたりする。

 

 

 

泣きながら走り去ったナルトは、よりにもよって、その一番変態なカカシの元へと駆け込んでいき。

うまい具合に丸め込まれたあげく、おいしくいただかれてしまうのだった。

  

 

 

 

終わりv 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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