アナタと夕食を〜漁夫の利編〜

 

 

 

 

 「あら、アナタ、そんな貧相な材料でナルトくんにラーメンを食べさせるつもりなの?はっ、これだから貧乏一族の末裔っていうのは」

せせら笑いながらの大蛇丸の言葉に、イタチの額に血管が浮いて見える。

貧相、とは言っても、中身は麺に出汁用の豚骨と鳥ガラ、きゃべつにもやしになると、それにチャーシューといった、ごく普通のラーメンの材料である。

別にこれ以上なにかが必要なわけではないだろう。

だが、『貧乏一族』と言われたことに、イタチはムカついていた。

幼少の頃、そう言ってからかってきた同級生を半殺しにしたことまでも思い出してしまい、過去のトラウマも相まって通常の三倍ほどもダメージを受けている。だが、そこはうちはイタチ。

こみ上げてくる殺意をひた隠し、にっこりと顔に笑みを浮かべる。

「そうおっしゃる大蛇丸さんは、料理なんてできるんですか?包丁、握ったことあります?」

うっ、と大蛇丸が言葉に詰まる。

どうやら、料理に関しては初心者らしい。

「ふふ、そんな不確かな腕でナルトに手料理を食べさせようなんて百年早いですよ。お腹壊したらどうするんですか」

ちなみに俺はプロ級ですよ、と勝利宣言までしているイタチ。

「料理は愛情って言うわよ」

「愛情だけでうまいものが作れるなら、新婚で食中毒おこす夫の数は激減するでしょうね」

二人の間で火花が散る。

「アナタには、少しお仕置きが必要みたいね」

ゆらり、とチャクラを具現化させそうな勢いの大蛇丸が、さりげなくホルダーに手を伸ばせば。

「そうですね。私もそろそろ邪魔者を始末させていただきましょう」

さりげなく『俺』が『私』になった殺戮モード全開のイタチが、写輪眼を回し始める。

そんな二人を前に、ナルトはキュルキュルと鳴るお腹を抱えて地面に座り込んでいた。

「腹減ったってばよ〜。イタチ兄ちゃんも、大蛇丸も、なんだか二人の世界だってば」

どこをどう見たら、この殺伐とした二人の雰囲気を『二人の世界』と言えてしまうのだろうか。

激しく謎だが、そこに突っ込みを入れる人間が、今は周りにいなかった。

一瞬即発、といった状態の二人を前になんだか置いてけぼりをくってしまったような気分になったナルトは、後ろの方から聞こえてきた咳に気づいて振り返る。「えー、ナルトくん……ゴホッ………どうしたんですか?」

相変わらず今にも死にそうな風体で、ハヤテが立っている。

「あ、ハヤテせんせえ。俺、腹減ったってばよ〜」

えぐえぐと半泣きで訴えてくるナルトと、目の前でにらみ合っている最強の忍二人を見比べて、ハヤテは状況を察する。

「それでは、ゴホッ……ウチに来ますか?」

「いいのっ?!」

嬉しそうにキラキラと眼を輝かせているナルトに、誰がダメだと言えるだろう。

「ええ、もちろんですよ……ゴホッ。なにが食べたいですか?」

「ラーメン!」

即答するナルトに、ハヤテは苦笑する。

「ラーメンばかりでは、ゴホッ………栄養が偏りますよ?」

ふわふわした金の髪を撫でながらのハヤテの言葉に、何事かを思い付いたらしいナルトは肩をすくめていたずらっぽくニシシ、と笑い、

「ハヤテせんせーは体が弱いから、仕方ないからせんせーの手料理で我慢してやるってば」

それがハヤテの体を思いやっての言葉だということは勿論分かっていて。

「それでは、お言葉に甘えてそうしましょうか……ゴホッ」

さりげなくもみじのような手を握り、ハヤテは自分の家へと向かって歩き始める。「それにしても………」

どうして商店街の店は、どこも閉まっていたのだろうか?

「どうしたんだってば?」

ナルトの問いかけに我に返ったハヤテはにっこりと笑って、

「いえ、別に……ゴホッ。何でもありませんよ」

まあ良いか、と結論を出す。

少し考えれば分かりそうなものだが、それ以上深く考えることはせずに、帰ってからの夕食のメニューを考えることに集中した。

 

 

 

イタチと大蛇丸がナルトの不在に気づいたのは、それから10時間後のことで。ナルトはハヤテの腕の中でぐっすりとお休みになった頃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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