アナタと夕食を〜大蛇丸勝利編〜

 

 

 

 知らぬはナルトばかりという緊迫した状態で、ふいにその場の雰囲気をぶちこわした

のは。

『きゅるるるるる〜☆』

「あ………」

ナルトの腹の虫だった。

「原減ったってばぁー。ラーメン………」

その場でへたり込んでしまったナルトの前にしゃがみ込んで、イタチはにっこりと笑

みを浮かべる。

「さて、ここで選択」

続いて、大蛇丸がしゃがみ込んで、

「私と彼、どっちのラーメンが食べたい?」

にっこり。

だが、そのにっこりがなんだかとっても恐ろしい。

「え〜っと」

なんだかよく分からないが、ピンチらしい、とナルトは足りない頭で理解した。

ポリポリと頬を掻いていたナルトは、ふいにある名案を思い付いた。

「おいしいラーメン作ってくれた方のを食べるってばよ!」

かくして第一回ナルト争奪戦ラーメン杯開催のゴングが鳴ったのだった。

 

※       ※       ※

 

場所は、いつの間にやらナルトの部屋へと移動していた。

テーブルの前でお行儀悪く足をプラプラさせながら、ナルトは上機嫌でラーメンがで

きあがるのを待っている。

狭いキッチンに大の大人が並んで立っていると、非常にきつそうでむさ苦しい。

さて、ここでイタチと大蛇丸の二人が考えたのは二つだ。

一つは、いかなるラーメンを作ればナルトのハートをゲット!できるか。

ナルトが味噌ラーメンを好んでいることは、二人とも知っていた。

だが、ここで単純に味噌ラーメンを出したのではインパクトに欠ける。

そこらの店では決して出せない味を作り上げなければならないのだ。

しかも、それをふまえた上で、ちゃんと味噌ラーメンでなければならない。

なかなかに難しい課題である。

Aクラスの任務に負けず劣らずの難易度だ。

そしてもう一つ。

これが、二人の最も得意とするところであり、一番重要だと考えている部分でもある

だろう。

そう。いかにして相手の邪魔をするか、だ。

これが一番重要な鍵であるような気がする。

悔しいが、お互いに忍としての実力は互角。

ともなれば、自分の考え得ることは当然相手も考えているだろう。

二人の背筋に緊張の汗が流れる。

まずは、ナルトに自分の行為を目撃されることのないよう、この場から引き離さなけ

ればならない。

「ナルト、手と顔を洗ってきなさい。その間に作っておくから」

イタチの言葉に退屈を持て余していたナルトは、「は〜い」と素直に返事して洗面所

へと消えていった。

ギラリ、と大蛇丸の瞳が光る。

目にも留まらぬ早さでコショウの入っている容器をつかむと、イタチの鍋めがけて投

げ込んだ。

それに気づいたイタチは、寸前でなんとかそれをキャッチする。

すでに、二人の間で戦いは開始されていた。

大蛇丸がスープの出汁の味見をしようと小皿を舐めた瞬間、しょう油が鍋に向かって

投げ入れられる。

それを手にしていたお玉で受け止め、大蛇丸は敵の方を見た。

素知らぬ顔でスープをかき回しているイタチの頭部めがけて、菜箸が高速で飛んでく

る。

それをイタチは、手元にあったまな板で受け止めた。

木製のそれに深々と刺さり、四本中一本が貫通して少し先をのぞかせていることを確

認すると、イタチは改めて心に決めた。

『殺らなければ殺られる』

それは二人の間にある、共通の危機感だったりもする。

自身の命を守りながらも、目の前の鍋も守らなければならない。

さらに、相手が隙を見せたら息の根を止めるつもりでいつつ、敵の鍋を狙うことも忘

れない。

キッチンのコンロの前で、する必要のないスピードで二人の手が動いている。

さすが伝説の三忍の一人と、たった一人で一族を滅ぼした男だ。

が!

無駄なところにそのすばらしい能力を発揮している。

「洗ってきたってばよ〜」

トテトテと可愛らしい足音を立てて戻ってきたナルトに、イタチの顔が一瞬へらっと

緩む。

その一瞬を、大蛇丸が見逃すはずはなかった。

イタチの鍋の中に、(どこからか取り出した)ドリアンのかけらを投げ込む。

よく熟れていたのだろうドリアンは、すぐに形を崩してスープにとけ込んだ。

とたんに、むぁっとイタチの鍋から異臭が発せられる。

「!」

「!」

ナルトとイタチが同時に眉をしかめる。

「へっ、変なにおいがするってば〜っ」

半泣きになりながら、ナルトが窓を開ける。

イタチも、大蛇丸をにらみながら換気扇のスイッチを入れた。

「それじゃあ、勝負といきましょうか」

自分の勝利を確信しながら、大蛇丸がラーメンを盛りつけながら言う。

しらじらしい、とばかりに睨みつけ、イタチも敗北を覚悟しながら盛りつけに入る。

 

 

 

結果は、おしてしるべし、といったところで。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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