森の妖狐さん〜和解(?)編〜

 

 

 

 

最凶の妖狐と恐れられ、その力の強大さから仲間にすら疎まれていた狐は、今だかつてないほど悩んでいた。

原因は、今も襖の影からこちらを警戒している子狐である。

愛しい可愛い子狐と初めて体を繋げたのが昨夜のこと。

意識を失った子どもが最初にしたことと言えば、隣で寝ていた妖狐の耳元でありったけの罵詈雑言をまくし立てることだった。

数時間たってもまだジンジンと痛む耳を忌々しく思いながらも、妖狐は怒ることなく襖から覗く空色の瞳に声をかけた。

 

※       ※       ※

 

「いい加減に出てこないか?」

声をかけられ、ナルトの耳が警戒するようにピンッと立つ。

昨夜のことが忘れられない。

アレは、どう考えても交尾だった。

いや、雄同士でもそう呼ぶのかは分からなかったが、自分がいやらしいことをされたのだという自覚だけはあった。

今だナルトが警戒していることに溜息を吐いた妖狐が、懐に手を入れる。

何が出てくるかと改めて緊張していると、ポテッ、と油揚げが床に放られた。

途端、宙を飛ぶ一つの影。

「あぶらげ〜vv」

妖狐を警戒していたことも忘れ、襖から飛び出して油揚げに食いつくと同時に、自分を見下ろしている赤い眼を思い出す。

伏せのポーズで油揚げをくわえたまま、じりじりと後ずさりながら妖狐を伺う。『今だっ!』

素早く方向を変えて駆け出そうとしたとこで、シッポを掴まれる。

「ぅわっ!」

ビタンッと顔から床に着地するはめになったナルトを、妖狐はシッポを掴んだまま引き寄せた。

往生際悪く床に爪を立てて抵抗したが、それも無駄である。

いつも通りに妖狐の膝に抱き上げられ、背中を撫でられた。

何だか上手い具合に捕まってしまった自分が情けなく、照れも手伝ってぶ然とした顔になる。

ここまできても口の油揚げを放さなかったところが、ナルトがナルトたる所以だ。取り上げられないうちにと、悔しいながらも口のまわりをベトベトにしながら油揚げを食べ始める。

その間も背中を撫でる手が、昨日までよりもずっと優しくて、なんだかうっとりしてくる。

と、気を許したのがいけなかった。

ひょいっと抱え上げられ、ペロッと唇を舐められてしまう。

「っ!!」

素早く口を手で覆ってしまったナルトに苦笑しながら、続けて頬を舐めた。

真っ赤になってしまったナルトの変化に、妖狐はほくそ笑んだ。

昨日までは平気でさせていた行為にここまで反応してもらえると嬉しい。

意識されているということは、ナルトの中で妖狐が性的対象へと変わったということだろう。

それで良い。

ニヤリ、と妖狐が心で笑う。

親や保護者のように信頼されることを望んでいるわけではないから。

発情して欲情してぐちゃぐちゃになるまで交じり合いたいと囁いたら、きっとこの子狐は逃げ出してしまうだろうからそれは内緒。

『でも、いつかヤる』

腐ったことを大真面目に考えながら、妖狐は立て続けにナルトの頬を舐めた。

「なっ、なにするんだってばっ!」

シッポを太くしてキャンキャン吠えるナルトに、妖狐は何でもない顔をして、

「もう少し上手く食え。ベトベトになってたぞ」

といかにも下心が無いかのように言ってやる。

世間ズレしていない子狐はあっさりそれを信じたらしく、「そっか」と納得していた。

………騙し易い。

この調子なら二回目もすぐかもしれない。

朝(いや、もう昼だったか)には散々文句を言われたが、二度としないとは言われなかった。

と、いうことは、行為自体に対する嫌悪感はなかったのだろう。

ならば容易い。

昨夜のように言いくるめてしまえば、またおいしくいただける。

警戒していたことをもう忘れたのか、ナルトは妖狐のシッポに抱きついて遊んでいることだし。

『今夜もイケるな』

ヨコシマな想像を頭の中で回しながら、妖狐はゆっくりと尾を振るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

押し倒した子狐に妖狐が殴られたのは当然ということで^^

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NOVEL TOP