『これは………』
最凶の妖狐と恐れられ、その力の強大さから仲間からも疎まれていた狐は、目の前の生き物に戸惑っていた。
誰も訪れるはずのない屋敷の庭先で、すやすやと寝息を立てる小さな子ども………どこからどう見ても普通の子狐だ。
ふわふわの毛並みも愛らしく、妖狐の存在にも気付かずにすぴよすぴよと惰眠を貪っている。
「………ふにゅっ」
突然鳴き声をあげた子狐に、妖狐は口から心臓が飛び出すかと思うほどに驚いた。バクバクと壊れそうな音を立てている心臓をひた隠し、ころりと寝返りをうってまた眠りに落ちてしまった子狐に手を伸ばす。
その手触りはあまりにも柔らかく、思わずパッと手を引いてしまった。
けれど指先に残る感触は暖かく、それを感じたくて再び触れてみる。
「ん………ぅにゅ?」
触れた手に起こされたのか、子狐は寝惚けたような声をあげて眼を開いた。
眠たそうな瞳をこしこしと擦り、辺りをキョロキョロと見回してから妖狐に気付く。
「誰?」
首を傾げて聞いてくる子狐に、妖狐は驚いた。
自分の存在を知らない者に出会ったことはなかったから。
大きな碧の瞳に見つめられ、それを心地よいと思う自分を不思議に思いながら妖狐自身すら忘れかけていた名を口にした。
「天雷」
※ ※ ※
子狐はナルトと名乗った。
親を人間に殺されたのだが、それに気付いた他の人間に今まで育てられていたらしい。
人間の匂いが移っていたせいで警戒した仲間に疎まれ、ろくに狩りの仕方も教わらないまま森に放されたナルトは、それでも木の実などを食べて生きてきたという。
そのせいか、実際に聞いた年よりも随分と成長が遅れているようだった。
「なあなあ、天雷!遊んでってばよ!」
背後から飛びついてくる子どもの騒々しさにうんざりしながらも、擦り寄ってくる温もりが愛しいと思う。
だが、子どもに付き合っているとどれだけ体力があっても足りないのは確かなので、ナルトの前でシッポを揺らしてみせる。
妖狐のふっさりと豊かな尾はナルトが抱きつくのに丁度良く、この子狐がそれを気に入っているのでこうして尾を揺らして遊んでやるのだ。
きゃっきゃと歓声を上げて喜んでいるナルトを微笑ましく見つめながら、外の様子を伺う。
昼を過ぎてやや日が傾いてきたのを確認すると、ナルトが抱きついているシッポをゆったりとした動きに変えた。
そうして10分もすれば、すよすよと寝息が聞こえ始める。
お昼寝の時間まで気にするようになってしまった妖狐は、当初の思惑に反して今やすっかり保護者になってしまっているのだった。
「何かが違う………」
首を傾げながらも、懐いてくるナルトは心臓直撃なほどに可愛くて、ギュッと自分の尾にしがみついて眠る寝顔を見ているとなんだかムラムラしてくる。
「………まずいだろう、それは」
自分で自分に突っ込みを入れつつ、すっかり熟睡している子どもを起こさないように、ゆっくりと尾を揺らし続けるのだった。
※ ※ ※
そんなこんなで二人が供に暮らすことにも慣れた頃。
そりゃもう、どーにもこーにもならなくなっちゃってるお方が一人。
(言わずと知れた)妖狐である。
今日も今日とて元気なお子さまは、庭先で飛ぶ蝶にじゃれてみたり、小鳥にじゃれてみたり、蛇にじゃれてみたり、逆襲されてみたり(!?)してころころ転がっている。
その度に短い丈の着物(妖狐の趣味)がめくれたりはだけたりと、それはもう大変なのだ。見ている妖狐が!
飢えたケダモノが、ギラギラした眼で自分の太股や胸元やおへそなんかがチラチラするのを鼻の下伸ばして眺めているのにも気付かずに、ナルトは無邪気に遊んでいる。
『くっそー。美味そうなモン目の前でチラつかせやがって』
ここ数日の間、ナルトはまるで自分のの欲望を知っていて煽っているのかと思う程に無防備なのだ。いや、当たり前なのだが………
「天雷ーっ!」
突然飛びついてきた子どもの勢いに驚いたが、顔には出さずに受け止めてやる。「どうした?」
「腹減ったってば!メシ、ご飯!」
胸元にじゃれついてくるナルトの頬を尾の先でくすぐると、すぐにそちらへ意識が向いたのか、いつも通り自分と同じ程も大きさのあるシッポに飛びつく。
それでも「メシ~、ご飯~」とうるさいナルトに呆れて、何か言ってやろうと振り返った視線の先には………!」
『うっ!』
毎日いやというほど日を浴びているのにいっこうに焼けない白い滑らかな胸元が露になっており、ピンクのチェリーが「食べて」とばかりに顔を覗かせている。”プツーンッ!”
何かが切れる音が妖狐の頭の中でした。
『そうか。喰われたいのか。喰われたいんだな?!』
そんなはずは絶対にないだろうに、今の妖狐にそんな考えは浮かばない。
「天雷?どうしたんだってば?」
ギュッとシッポを抱き締めて見上げてくるその瞳も罪なもので、ジッと見つめられるとますます食べ頃に見えてくる。
堪えきれず、気付けば小さな体を抱き寄せてナルトの首に舌を這わせていた。
「ひゃっ」
ペロッと舐められて、ナルトが鳴く。
「くすぐったいってばよ!」
きゃあきゃあ笑いながらも大人しく舐められているナルトに、妖狐の行為はますますエスカレートしていく。
スルスルと帯が解かれていく段階になって、ようやくナルトが軽い抵抗を始めた。「天雷?なに?なにするんだってば」
「………」
自分の胸に顔を埋めたままの妖狐に下から見上げる形で見つめられ、ナルトの頬が染まる。
心臓がドキドキしてきて、顔がカァッと熱くなった。
『しんぞぉがっ!俺のシンゾーおかしくなっちゃったってば!』
深紅の瞳が濡れたように光っていて、その中に自分の姿が映っている。
ジッと見つめられてドキドキがバクバクに変わる頃、ナルトは妖狐の前に全裸で転がっていた。
「何するか、分かるか?」
ペロッと頬を舐められる。
ブンブンと首を横に振る子どもに多少の罪悪感を覚えながらも、妖狐は行為を続けた。
「て、天雷………や………ソコ、だめだってば………ぁっ」
両手で包み込むように胸の肉を寄せると、柔らかい子どもの肌は軽く隆起してその先端を妖狐の目の前に差し出す。
軽く舐めると腕の中の体が震え、ピクピクと耳が動いた。
「お前を喰いたい………」
ビックーンッ!と、子どもの体が尋常でないひきつり方をする。
「おっ、俺なんか喰っても美味くないってばよーっ!!」
半泣きになりながらの叫びに、眼を点にした妖狐は思わずプッと噴き出してしまった。
まさか、そんな初な答えが帰ってくるとは思っても見なかった。
だが、いやいやと思い直す。
ナルトはまだ子どもなのだ。
知らなくて当然………と、そこまで考えて妖狐の思考は妖しい方向へと進む。
『ということは………初物だな』
当たり前だろう、と突っ込みが入りそうなことを考えている目の前の妖狐を今にも泣きそうな眼で見上げながら、ナルトはどうしたのかと首を傾げる。
何やら笑われたということは、自分はおかしなことを言ったのだろうか。
食べる、と言っても、別に頭からバリバリ食べるわけではないのかもしれない。天雷は妖狐だから、何か別な方法で別なものを食べるつもりだったのかもしれない。
そんな、本人が聞いたならまた笑い出してしまいそうなことを考えつつ妖狐が考えるのを止めるまで待つ。
危険な思考回路を一周して戻ってきた妖狐は上体を起こし、ナルトを膝の上に向かい合わせで座らせた。
「お前がメシを食うみたいに、俺も喰わなきゃ生きていけない………それは分かるな?」
やっぱり頭からバリバリ!?などと改めてひきつりながらも、ナルトは頷く。
「俺の食い物は、お前たち普通の狐が口にするようなものじゃない。俺は妖狐だからな。特別な食事が必要なんだ」
コックリと素直に頷くナルトを見ながら「可愛い…」などと腐ったことを考えていることなど少しも悟らせずに話を続ける。
「俺みたいな妖は、他の生き物の【精】を喰うんだ」
「それ食べなきゃ、天雷は生きていけないってことか?」
神妙に頷く妖狐。
嘘八百である。
確かに生き物の【精】は妖である妖狐の食事に成りうるが、それを口にしなければ生きていけないなどということはない。
嘘も方便。
とにかく、目の前のナルトをいただかなければおさまらないところまできてしまっているせいか、妖狐は手段を選んでいなかった。
「そ、それってば痛い?」
耳を伏せ、シッポを股に挟みながらも俯きがちに上目遣いで聞いてくるナルトに軽く笑って、「痛いことはなにもない」と返してやる。
いや、もしかしたら痛いかもいれないけど子どもだから体柔らかいだろうし大丈夫だよな~、などと考えながら「いいか?」と一応聞いてやる。
ダメだと言われてもやめる気はさらさらなかったけれども………
「い………」
「いや?」
「良いってば………俺のその、セイだっけ?喰っても良いってばよ」
ナニをされるのかも知らない子狐が不用意な発言をしたとたん、妖狐は文字どおりケダモノと化した。
※ ※ ※
「ふやっ………やっ………ぃにゃっ………い………」
肛腔に指を差し込まれて丹念にかき回されながら全身を舐められ、じんじんした今まで感じたことのないものがナルトを襲う。
横向きにされて、肩や脇腹を舌や指で辿られると、体が勝手にビクビクと痙攣した。
「や…っ……かし………なる………ぅっ」
初めて与えられる快楽に、ナルトは戸惑い泣き出してしまう。
だがそれも妖狐の動きを止める作用にはならず、宥めるようなキスが時折与えられるだけだ。
何かを塗られた後口がぐちゅぐちゅと音を立ててナルトを狂わせる。
シッポを根元から先端に向かって軽く力を込めて撫で上げられると、体と比例して小振りなナルト自身が涙を流して震えた。
「やっ、みみ…やっ」
かじかじと尖った耳の先端を甘噛みされ、差し出された尾にしがみついていると、ふいに手の中からそれを奪われた。
体内で蠢いていた指が抜かれ、ころりと腹を曝す格好で足を抱えられる。
何をされても良いと思っているが、ただ、べったりとくっついていた体温が離れたことだけが心細かった。
「………て、らい………ぃ」
甘えを含んだ鼻声で名を呼ばれ、下肢に集中していた意識を戻す。
「ぎゅって………して」
愛おしさが胸に溢れ、差し伸べられた手を取り抱き寄せる。
この瞬間、妖狐は唐突に自覚した。
自分がこの力ないひ弱な子狐に、心底惚れてしまっているということを。
ほんの少し前までは、ただ可愛いからという理由だけで行っていた行為が、突然意味のあるものになってくる。
あまりにも突然な自分の感情の変化に苦笑しながらも、慎重に腰を進めた。
「きゅぅ………にゅ………っ」
しっかりとしがみついて挿入の衝撃に堪えようと噛みしめられている唇を舐める。ぷっくりと膨らんだ唇が傷つくのはもったいない。
「口を開けた方が楽だぞ」
耳の中に舌を差し込みながら囁くと、強張っていた体がゆっくりと弛緩する。
「ナルト………」
名を呼んでやると、自身を飲み込んだ狭い器官が緩く締め付けてきた。
その味を楽しみながら、軽く揺すり上げる。
「やぁっ、ぅっ、ひうぅっ」
ポロポロと溢れ出す涙を口づけで拭ってやりながら、今だ全てを収めきれていない入り口を指で辿る。
「やだぁ、やあだぁ………っ!」
妖狐の手を止めようと、上体を起こそうとするナルトの肩を軽く押し返した。
「何で?動いてないだろう?」
飲み込まされているだけで苦しいのか、薄い胸が上下している。
潤んだ瞳が哀願を含んで見つめてくるのを楽しみながら、ナルトの手を繋がっている部分に触れさせた。
「あ………」
「入ってる………分かるか?」
体内で感じていることと実際に触れてみることで感じることとは別である。
信じられないところに、信じられないものが入っていた。
「………って、る」
声をうわずらせながら呟く仕草が可愛くて口づける。
そのまま細い腰を抱え、慣れてきた内壁を擦り上げるようにしながら奥まで侵入を果たすと、幼い体が与えられた衝撃にひきつった。
「辛いか?」
今更だが口にした途端、拳で弱々しく胸を叩かれた。
「うそ………きぃ」
ポロポロ泣きながら子どもが詰る。
「いた………な、って………言った………」
そこで声が途切れ、力尽きたように腕がシーツの上に落ちた。
気を失ったのかと一瞬あせったが、そうではないようだ。
薄く眼を開いて浅い呼吸を繰り返している。
普段は空を映したような透明な瞳の色が、今は深い海のように揺らぎ、濃密な情動を煽る。
その瞳を見ながら、ふとあることに気付いた。
幼い瞳にちらりと覗くそれを察して、妖狐はうっとりとした笑みを浮かべた。
「感じているのか?」
言葉に、ナルトが過剰に反応する。
「そん………やっ、あぁぁっ!」
否定しようとしたナルトの腰を掴み、軽く奥を突いてやる。
すると、苦痛と喘ぎの入り交じった声がこぼれた。
『子どもゆえの順応性の高さ、ってヤツか?』
どうやら辛いだけではないらしいナルトを抱き寄せる。
腕をとって首に回させると、さっきまで尾にそうしていたようにきつく抱きついてきた。
その背を宥めるように撫でてやりながら、ゆっくりと律動を開始する。
「ふやっ………やっ………あ………っ」
出し慣れていない喘ぎ声が、可愛らしく耳を打つ。
口づけをねだられて、幾度も唇を交わした。
「も………やああぁぁ………っ!」
悲鳴交じりの喘ぎと共にナルトが初めて性的な絶頂を覚えた時点で、妖狐は繋がりを解いた。
指についた少量の体液を舐め取り、精の残滓を味わう。
気絶するように眠り込んでしまったナルトを微笑ましく見つめながら、妖狐はその小さな体を満足げに抱き寄せたのだった。
意識を取り戻したナルトの罵声まであと数時間………^^;
完