「ナルト~任務行くんでしょ?一緒に…」
「行かねぇ。ってゆーか俺任務の帰りだし」
カカシが全てを言い終わらないうちにナルトは言葉を切って捨てる。
ちらり、と横を見ればしょんぼりと落ち込んでいるのが目に入る。
それを見て、ナルトはカカシに見えないように満足げに微笑んだ。
「…ナルトと任務が一緒になることってめったにないよね…」
「お前と任務入るとスムーズに進まないからな」
俺が拒否ってんの。
冷たくナルトが言うと、今度は誰が見ても落ち込んでいますとばかりに肩を落とした。
仮にも上忍ならもっと感情を隠すような行動をとれよ、とナルトは思う。
「なんで……?」
「なんででも。あぁ、もう鬱陶しいから早く任務行けよ」
しっしっ。
と、ナルトはカカシのことを追い払うように手を振った。
「理由教えてくれないの…?」
教えないとわかんないのか、とナルトは内心ため息をつく。
「まず、お前ウザイ」
ナルトの言葉にショックを受けるように、カカシの顔ががんっと顔を引きつらせる。
「任務中ずっと俺にまとわりついてるし。そのせいで任務進まないからお前とは絶対組みたくない」
「じゃあ、任務が早く終わるように行動するんだったら一緒に任務行ってくれるの?」
ぱっと顔を輝かせながら、カカシはナルトに笑いかける。
正直、こんな風に一生懸命なカカシをナルトは可愛いと思う。
あからさまに邪険にあつかっているにも関わらず、こんなにも好き、好き、というオーラをにじみ出させてるカカシはウザい、と思う反面なぜかとても嬉しい気持ちになる。
「それでもダメだってば」
「…ナルトのけち」
ぽつり、とカカシは呟いた。けちと言われようがなんだろうが、ダメなものはダメだ。
ここで許してしまったら後々面倒くさいことになる。
「ほら、早く任務に行けってばよ。遅れるとツナデのばーちゃんがうるさいから」
そう言うと、やっとカカシはとぼとぼと任務へ向かっていく。その後ろ姿を見つめてはぁ、とため息をついた。
「おい、あんまりカカシ虐めるなよ」
いつの間に現れたのか、アスマが苦笑いしながら立っていた。
「うるせぇな。つか黙って見てるなよ、悪趣味な」
カカシの後ろ姿を見ていたことがばれていないかと内心ひやひやする。
「確かに、俺もカカシと任務は行きたくないけどな」
妙な恋愛相談されて全く任務がすすまねぇんだよ、とアスマはぽつりと呟いた。
もちろん、相談内容はナルトのことで最初のうちはそれなりにまじめに付き合ってアドバイスなんでしてやってたが、「告白なんてできないよ」なんて言いながらもじもじとしたり、『いっそ押し倒せ』と言ったアスマの言葉に何を妄想したのか知らないが、いきなり鼻血を出して倒れるカカシにほとほと嫌気がさしていた。
もちろん、その日の任務はアスマ一人で片づけることになったのだが。
そんなことが積み重なって最近はカカシ一人で任務に出かけているようだ。どうやら他の上忍や暗部たちもカカシの妙な恋愛相談にひっかかったのだろう。
「そもそも、お前がもうちょっとカカシに優しくしてやれば問題ねぇんだよ」
「冗談。なんっっで俺があいつに優しくしてやらないといけないんだよ」
心底嫌そうに、ナルトは吐き捨てた。
カカシに優しくしている自分の姿が思い浮かばない。カカシが近づいてくるたびに口をついて出る言葉は憎まれ口よりも、もっとタチが悪いモノ。そんな風にしか接することができないのだから仕方がない。
「お前も、もう少し素直になれよ」
「な……っっ!」
アスマの言葉に、かっとナルトは頬を赤らめる。
「バレバレだ。カカシは分かってないみたいだけどな」
にやにやと意地悪そうな笑みを浮かべるアスマの足をナルトは力のかぎり踏んづける。
むかつく。
むかつく。
むかつく。
どうして、カカシが分からないことをこいつに先に分かられないといけないのだろうか。だいたい、カカシもなんで気付かないのか。そう思うとアスマだけでなくカカシに対してもふつふつと怒りが沸いてくる。
ナルトに踏まれた痛みのあまり顔を歪ませてるアスマの足をナルトはさらにぐりぐりと踏みつけた。カカシへの怒りも込めて。
「…カカシによけいなこと吹き込んだらブチ殺すから覚えてろ」
あ?
アスマの胸ぐらをつかんですごむナルトの瞳は本気だと訴えていた。カカシに言うつもりなんてなかったが、これはちょっと口を滑らすだけで本気で殺される、とアスマは背筋に寒いものが走った。
「わかったからそろそろ足どけろ…っ」
ぐりぐりぐり、とナルトはまだアスマの足を踏みつけていたらしい。痛みに顔を歪めながらアスマはナルトに懇願する。そう言われて、ナルトは漸くアスマの足の上から自分の足をどかせた。「いってぇ……」と唸るアスマに背を向けてナルトは自分の家へと歩き出した。
数歩進んだところで、ナルトははた、と何かを思い出したかのように足をとめた。
「それと二度とそのこと口にするなよ」
ぎっ、とナルトはアスマを睨み付けて言うが、頬は少しだけ赤らんでいる。
「なんだ、照れてるのか?」
凝りもせず、ナルトをからかうような発言をしたアスマの方に今度は数本のクナイが飛んでいった。
むかつく。
むかつく。
むかつく。
空が青いのも郵便ポストが赤いのも、アスマにからかわれたのも全部全部カカシのせいだ。
カカシのしょんぼりした姿が可愛いなんて思うことも。
、俺がカカシのことを好きだなんて思うことも。
全部全部お前が悪いんだから。
任務から帰ってきたら思いっきりぶん殴ってやる。
そんな理不尽なことを考えながらナルトは一人ふてくされたような顔で家に帰っていった。
終
