どうして、なにも伝えてくれなかったのだろうか。
どうして、ナルトの様子がおかしいことに早く気づかなかったのだろうか。
きっとナルトの言葉を遮ってきたのは。
自分自身がささやいた、愛してるという、言葉。
一人取り残された部屋で、カカシは動けないでいた。ナルトがいなくなっても。何日も、何日も。
ただ部屋のなかでじっとしていた。外には見たくもない世界が広がっていそうだったから。
初めて聞いた愛してるという言葉は、カカシの胸に深く刺さっていた。
どれだけ、自分の言葉がナルトにとって重かったのかと。
軽々しく、愛してると言っていたわけではない。本当に心からナルトを愛してる。愛しくて、愛しすぎて。言葉を継げずにはいられなかったほど。
ナルトは、どんな気持ちで自分のことを好きだと言ってくれていたのだろうか。そして、その言葉に不満さえ抱いていた自分を、どう思っていたのだろうか。
問いかけたくても、答えてほしい子供はもういない。
この里が、カカシのすべてを奪っていった。ナルトが愛したこの里が、すべてを奪っていく。
「…すき、だよ」
ぼんやりと空を見つめながら、カカシはそうつぶやいた。もちろん、帰ってくる言葉はなくて、記憶の中でよみがえってくる言葉も、静寂にかき消される。
「あいし…」
愛してる、その言葉を口にすることはできなかった。
「…ナルト」
もう、ここにはいない。
「ナルト…」
二度と、笑顔も見られない。
「ナルト…」
名前を呼んでももう二度と自分のところにくることもない。
「ナルト、好きだよ」
『俺も、カカシせんせー大好き!』その言葉は永遠に返ってこなくて。
だめだ、とカカシはつぶやいた。
けれど思いはとめることができなくて
「愛してるよ…」
やっぱり、自分のナルトへの思いは、好きよりもささやくことになれていた。
ひどく重く、その言葉は心に残っていたけれど…。
続