大好き
愛してる
あいしてる
だいすき
どちらも同じような言葉なのに、どうして優劣をつけてしまうんだろう。
『愛してる』のほうが大きくて、『大好き』はそれに劣ってるだなんて、どうして決めつけてしまったのだろうか。
どうして、自分は『大好き』では満足できなかったのだろうか…。
「ねぇ、ナルト、愛してるって言ってみてよ」
「え?なんでだってば?」
「だって、好きとは言われたけど、愛してるって言われたことないからさ」
俺は何回も言ってるのに。そうカカシはすねたようにナルトに告げた。
「えー…いいじゃん!好きっていうのも俺はちょっと恥ずかしいんだってば」
顔を赤らめて『愛してる』というのをためらうナルトはとてもかわいく見えたけれど、カカシはどうしても『愛してる』と言って欲しかった。
愛してると言えるのは、里。
大好きとしか言えないのは、自分。
どうして、里を愛してるというのは平然といえるくせに、自分には愛してると言ってくれないのだろうか。
「ねぇ、言ってよ」
「カカシせんせーは大好きでいいんだってば!」
しつこく言葉をせがむカカシに、なるとはそっぽを向いてそう言った。
「えー…ナルトの意地悪」
本格的に拒絶されて、カカシはちょっぴり傷ついてた。
しょぼんとしているカカシをみて、ナルトの胸も少しだけ痛む。
「大好きじゃだめなんだってば?」
悲しそうな色をたたえた目で訴えてくるナルトを見ると、さすがにこれ以上は無理だと欠かし判断して、ナルトの髪をくしゃくしゃとかき回した。
「…大好きで、十分だよ」
そうカカシが言うとナルトは安心したように微笑んでくれて、カカシもほっと胸をなでおろす。
悲しい顔をさせたいわけじゃない。無理やり言わせたいわけじゃない。
ただ、少し言ってもらいたかっただけ。
ナルトは、『好き』だというものが多いから、『大好き』じゃただ、それの延長線上にあるだけのようなものかもしれないと不安になる。
「…大好き、だってばよ」
少し黙り込んでしまったカカシを安心させるように、ナルトはつぶやいた。
「うん、わかってるよ…」
大好きといわれるたびに不安で、愛してると言って欲しいと思う反面、ただ、その言葉にすがって安心しようとしている自分に少しだけ嫌悪感を抱く。
「…愛してるよ、ナルト」
どうか、自分がこうやって愛をささやくことが、ナルトにとって負担ではありませんように、とカカシは心の中でつぶやいた。
愛してると言って欲しい。
「カカシせんせー大好き!」
目がくらみそうなくらい眩しい笑顔でナルトは答えた。
ナルトの感情にはなんの曇りもなくて、いつまでも、ナルトの心が自分に向いていてくれることをカカシは願っていた。
続