きっと、これがカカシせんせーに贈る最後の言葉。
『だいすき』
なにを伝えればいいのだろう。今このときに。
俺はもう、死ぬ。
息を切らせてやって来たあの人になにを遺して逝けるだろう。
ナルトは床に倒れ伏せてカカシを見つめる。
ざわつく里の重鎮たち。
だが、ナルトの世界に雑音は一切聞こえない。
ただ。
ただカカシだけが瞳に映っていた。
カカシだけの息遣いしか聞こえなかった。
うっすらとナルトは微笑みを浮かべ、その瞳にカカシの姿を焼き付ける。
きっとこれが最後になるのに、目がかすれてカカシの顔がナルトにはよく見えない。
漏れ出した九尾がナルトの体を蝕み、突き破ってくるのも時間の問題だった。
最後の力を振り絞り、ナルトはカカシのほうへ向かう。
抱き着いて、きっと血の味がするキスをして。
顔のパーツ一つ一つを確かめるようにナルトはカカシの顔を撫でた。
「カカシせんせー。大好き」
ほかには?ほかになにかしてあげたかったことは?
決して、自分からキスしたことなんてなかった。
自分から好きだと言ったことはなかった。
もう、体が重い。
これ以上、なにもできることはないけれど。何も伝えられないけど。
カカシせんせー、だいすき。
ナルトの体がゆっくりと倒れ伏す。まるで 糸が切れた繰人形のように。
たった一瞬前まではカカシの首に絡み付いていた腕はもう床に投げ出されてい
る。碧い瞳は二度と開かれることはない。
こと切れたナルトを抱き締めたカカシがカタカタと震えていた。 信じない。
と、呟きながら。
苦しまなくていいんだってば。
これは俺が決めたこと。
だから苦しんだりなんかしないで幸福になって。
カカシせんせー。
だいすき。
ごめん、ね。
終