その日の任務は、7班と10班の合同任務だった。
壮大な広さを持つ地主の敷地内の庭掃除…内容自体は単純だったが、三人だけでは一日どころか一週間経っても終わるかどうか分からないほどの広さの敷地。
イノは手元の草を引き抜きながら、予想しなかったものを見付けて呆然としていた。
「むっきーっ!ムカつくってばよーっ!!」
「うるさい。ドベ」
「ドベって言うなぁーっ!!」
などとジャレあっているサスケとナルトではない。
サスケがナルトを好きで、相手にして欲しくてわざとちょっかいをかけていることは、周りからすれば一目瞭然のことだからだ。
サスケを狙っているイノとしては、それはそれなりに悔しいが、今はそれよりも予想外の人間に視線が向いてしまう。
サクラだ。
自分と同じようにサスケを狙っていたはずなのに、その視線は少し見ないうちにナルトだけに注がれるようになってしまっている。
それも、見ている方がとろけそうなほどに甘い眼差しで!
『サクラのヤツ…宗旨変えでもしたのかな?』
昔から一緒にいることが多かったサクラとイノは、自然と好みも似てしまっていた。
それからすると、バカ嫌いのサクラの好みから、ナルトは一番に除外されるはずだ。
なのに、あの眼はどうだろう。
むしろサスケに嫉妬しているかのようなあの視線の意味は…?
謎が謎を呼ぶこの出来事に、興味が最終的に向くのがナルトなのは当然のことで。
『アイツ…そんなにイイか?』
どう見ても、単なる野生児だ。
それは確かに顔は多少可愛いかもしれないが、サスケの方が男として魅力的なのは否めない。
頭良し、顔良し、忍としても優秀で、ついでに家柄も良い。
これ以上の良質物件はないだろう!と嫌味を言いたくなってしまうほど格好良いサスケ。
そこから正反対とも言えるナルトへと向かったサクラの感情の方向の理由が知りたくなる。
そうなると、ナルトに対して俄然興味が湧いてくるから不思議なものだ。
『ちょっと味見してみるか♪』
思ったイノは、任務終了を見計らってナルトに、
「帰りに飯でも食べて帰らないか?」
誘ってみる。
「別に良いけど…どういう風の吹き回しだってば」
いつもは声もかけてこないイノに誘われたナルトは、どことなくうさんくさそうだ。
「良いじゃんか。たまには親睦深めようぜ☆」
うさんくさそうにしがらも、ナルトはコクンと頷く。
その反応に、おっ、とイノは思った。
『コイツなんか…可愛い?』
サクラよりも少し高い程度の自分の身長よりもずっと小さなナルトは、近距離で自分と話すと自然と上目遣いになる。
そのせいでグッと可愛らしく感じるのだろうか。
「イノのおごりなっ♪」
「お前…人にたかるなよ~」
「イノから誘ったんだってば!これぐらい良いじゃん」
少しすねた素振りでそんなことを言ってくるナルトは、どうにもこうにも愛らしい。
何だか自分のわけの分からない部分をグォッと煽られて、イノは戸惑った。
『ちょっと待て。俺はそっち(する方)は趣味じゃ…』
ない…と言い切れなくなってしまった自分を自覚し、イノはふいに納得する。
『そうか。サクラも…』
そう考えれば納得がいく。
サクラは、ナルトのこのわけの分からないフェロモン(?)にヤられてしまったのだ。
なんというかこう…男の庇護欲や征服欲を煽るというか…妙に虐めて泣かせ、そして泣き出したところを自分で慰めてやりたくなるのだ。
歪んだ感情がしきりに頭をもたげてきて、なかなかにあらがい難い誘惑である。
いたずら心が弾み始め、抑えきれなくなってきた。
「俺が何か作ってやるから、ナルトん家行こうぜ?」
行ってやれば、「え~。一楽が良いってば~」などとブツブツ言いながらも嬉しそうな足取りで家に向かって歩き始める。
そういえば、ナルトの家に行くのは初めてだ。
今までサスケに意識がいっていたせいか、どうしてもナルトは粗末に扱いがちだった。
これまでの自分の所業を多少反省しつつ、ナルトの家に入る。
「おじゃましま~す」
「どうぞってば」
揃えて差し出されたスリッパを履いて、中に上がり込む。
そこは、予想もしていなかったような景色だった。
綺麗に整頓されているのだが、どことなく生活感のない部屋。
まるでホテルの一室か、モデルルームのようだ。
それに、極端にモノが少ない。
ナルトのことだから、山のようなガラクタに囲まれて、部屋はグチャグチャだと思っていたのに。
なぜだか胸が締め付けられるような気がした。
こんな部屋に毎日、一人でどう過ごしているのだろう。
途端、目の前でお茶を入れている小さな肩が頼りなく見えてきた。
背後からそっと近づいて、優しく抱き締める。
「どっ、どうしたんだってばっ?」
驚いて固まってしまったナルトに、おや?と首を傾げる。
微かに見える頬が赤い。
その反応の中に官能の色を見付けて、イノは舌打ちした。
『サクラのヤツ…もう手ぇつけてたのか』
仕事が早いったらない。
ついこの前まで「サスケ」とうるさかったのに、いつの間にこんないたいけな子ども(決めつけ)に手を出したのだろう。
サクラに対する腹立たしさと共に、先程湧いてきたイタズラ心が、また頭を擡げてきた。
『今、耳舐めたら…』
どういう反応を示すのだろう。
想像するよりも先に、舌を這わせた。
「ひゃぅ…っ」
ビクビクッと跳ねた体が、ナルトの感度の良さを語る。
続けて上着のチャックを下げて中に手を入れ、胸をまさぐってみた。
シャツ越しに小さな突起物を探り当て、指の腹で回して押しつぶす。
「………っ」
「おっと」
ガクンッと崩れ落ちたナルトの体を支え、イノはソファにナルトを運ぶ。
あまり体格は良くないが、ナルトの体は想像以上に軽かったために抱いたまま寝かせることができた。
改めてのしかかり、覗き込んだ瞳はうるうるしていて、光を反射して輝いている。
里の誰とも違う碧の瞳は、ただそれだけで宝石のように綺麗だ。
『もうちょっとで…泣くかな』
思うと同時に、手をナルトのズボンに潜り込ませる。
「やっ、やだっ、やだっ」
抵抗するナルトの手を簡単にひとまとめにして、下半身を露にする。
ピンク色をしたナルトのモノが、白い滑らかな太股の間で主張を始めていた。
「うっ、うぇ…っ」
羞恥からか泣き出してしまったナルトの頭をよしよしと撫でてやる。
今の自分の顔は、絶対に弛みきっているだろう。
「あ~ぁ、悪かったよ。ほら、泣くな…な?」
小さな子どもをそうするように横抱きに抱えて、ポンポンと背中を叩いた。
ぐすぐすと鼻をすすっている様が可愛くてたまらない。
どうやら、サクラだけではなく自分までもがこのおチビなドベにヤられてしまったようだ。
苦笑しながらもそう自覚してしまったイノは、取り合えず今日は帰ることにする。
あやしながら服を着せてやって頭を撫で、
「また来るからな」
と言い残して部屋を出る。
途端に。
「アンタ…今、どこから出てきた………?」
ドスのきいた低く地を這うような声がイノを威嚇する。
そこには、今にも飛びかからんばかりに激昂したサクラが立っていた。
「見てたんなら分かるだろ。ナルトの部屋だよ」
「へえ…やっぱり僕の見間違いじゃなかったみたいだね」
凄みのある笑みを口元にだけ浮かべ、サクラはスッと手にクナイを取る。
「…消えてくれる?前々から邪魔だと思ってたけど、本当に邪魔みたいだし」
だが、イノは引かずにその手に小刀を取った。
「そんなこと言える立場かよ。小さい頃は俺の後をくっついてきたイジメられっ子が」
お互いの額に、切れそうなほど血管が浮いている。
先に切れたのはサクラだった。
「うるせぇっ、イノブタぁっ!!」
「黙れっ、デコぉっ!!」
ここに、この後100回を超える、第一回ナルト争奪戦イノVSサクラの熾烈な戦いが幕を開けたのだった。
※ ※ ※
イノにイタズラされたショックが収まらないナルトは、ソファに丸まったままグスグスと鼻を啜っていた。
サクラ以外の人間に触られて感じてしまった自分が許せなくて、悲しくなってくる。
立ち直れないままうずくまっていると、ふいに扉がノックされた。
「ナルト?入るよ」
返事を待たずに入ってきたのは、サクラ。
初めて二人が一夜を共にしてから、サクラは毎日こうして通ってきているのだ。
まあ、毎回夜にはごにょごにょ………なお決まりの展開になっているのだが。
いつもは嬉しいその訪れも、今のナルトにとっては恐怖にしかならなかった。
「あっ、さっ、サクラ…っ」
「ん?どうしたの、こんな暗い部屋の中で」
電気をつけながらの言葉に、イノとのことを気付いた様子がなくてホッと胸をなで下ろし、ナルトは「なんでもないってば」と笑ってみせる。
だが。
「そう?」
そう答えたサクラの眼は笑っていなかった。
「イノに、聞いたんだけれど…ね?」
ビクッとナルトの肩が跳ねる。
「嘘、ついたね?」
にっこりと笑ったままでサクラが近づいてくる。
けれど、その笑みは何よりも恐ろしい笑みだった。
「やっ、やだって…やだって言ったんだってば…っ」
「そうなの?」
必死になってコクコクと頷くナルトの頬を、綺麗な指が撫でる。
「でも、ナルトが僕に嘘をついたことに変わりはないね」
言われて、泣きそうになってしまう。
せっかく好きだと言ってもらえたのに、もう捨てられてしまうのだろうかと不安でいっぱいになる。
「お仕置きだね」
にっこり、と笑って告げたサクラに、ナルトは逆らえず、躊躇いながらもコクリと頷いたのだった。
※ ※ ※
「んぅっ…んっ、んっ……くふっ」
ソファに座ったサクラの股間で、ナルトは必死に口と頭を動かしていた。
すでに口内はサクラの先走りとナルトの唾液でいっぱいになっており、ナルトの口からサクラが出入りする度にヂュプヂュプと卑猥な音を立てる。
「おいしそうにしゃぶるんだね、ナルトは。いやらしいね…舐めてるだけで感じてるの?」
「んはっ、あっ、やあぁ…っ」
足先で、サクラを愛撫している間に反応していた下部をなぶられて、思わず口が離れた。
「ほら。休んじゃだめじゃないか」
「んむっ、んぅっ、ん…っ」
再び口の中に熱い塊を押し込まれ、それに舌を這わせる。
「そう、上手だよ。初めてとは思えないな。もしかして、誰かにしてあげたことがあるの?」
上下するナルトの頭を撫でながらの言葉に、ナルトは必死になって首を横に振る。
「そう?じゃあ、元からいやらしいんだね。そんなにおいしそうにしてるんだし」
「ふはっ、あ…っ、あっ」
サクラのモノを舐めながら自分も感じているナルトは、堪えきれずに自身を手で慰め始めた。
「いいね。いやらしいよ。でも…」
告げ、サクラの手がナルトの頭をそっと包み込む。
そのまま、腰を突き上げた。
「ふぐっ、ううぅっ!」
喉の奥を突かれて、ナルトの目尻に涙が浮かぶ。
それを眺めながら、サクラは自身の中にある嗜虐性に火がつくのを感じた。
「自分だけ気持ち良くなっちゃダメでしょう?」
「んっ、んぅっ、んむぅっ!」
苦げな顔をしながらも、ナルトはサクラの手で口腔を犯されることを甘受している。
濡れた自身をなぶりながら、自分の口で行われる疑似性交に、抱かれる快楽が思い出された。
「んむっ、んっ、んっ、んっ、かは…っ、ああぁっ!」
ビシャッと濡れた音が聞こえる。
「あ………はぁ、はぁ………」
ナルトの頬をサクラの体液が伝い落ちた。
恍惚とした表情を浮かべた顔でサクラを受け止め、ナルトは肩を大きく喘がせている。
自身をなぶっていた手には白濁した体液が絡み付き、ナルトが絶頂に達してしまったことを物語っていた。
「イッちゃったの?」
小さな顔にかかった自分の体液を拭ってやりながらサクラが問う。
頷いたナルトの手を取りながら、
「ふふ…かけられて感じたんでしょう?」
言い、濡れている指を舐める。
丹念に指の一本一本、果ては指の間にまで舌を這わせ、サクラはナルトの精をすべて舐め取った。
呆然とそれを見つめていたナルトの唇に、サクラのそれが重なる。
「んぅっ、んっ、んゃ…っ!」
まだナルトの精の味が濃く残っているままで重ねられた唇は、直接その味を伝えてきた。
それが嫌で逃げ出そうとする小さな舌を追いかけ、絡める。
「ほら…これがナルトの味だよ」
クチュリと音を立てて離れた唇が、触れそうなほど近くでそんなことを囁く。
カァッと顔が熱くなるのを感じて、あまりの恥ずかしさにサクラの胸に顔を埋めた。
「こら、ナルト。それじゃあキスできないから…ね?」
促されて、自ら口づけたナルトの双丘の狭間に、濡れた冷たい感触が伝う。
「んっ、んぐっ、ぐうぅ………っ!!」
次の瞬間、自身を襲った激しい衝撃に、大きな碧の瞳が限界にまで開かれた。
強くサクラの服を握りしめ、想像もしていなかったその行為に悲鳴をあげる。
だが、その唇はしっかりと塞がれ、辛さを堪えようと歯を噛みしめようにも、サクラの舌が口内にあるため、それができない。
ナルトはただ、いきなり貫かれたその苦痛を堪えるしかなかった。
「入っちゃったね」
楽しそうなサクラの声が遠くに聞こえる。
小さな体にはきつい肉塊を飲み込んだ口は切れてはいないものの、ナルトに強い異物感と辛い苦痛を与えていた。
準備もなく貫かれたため、どうしても体が強張ってしまう。
それが余計に苦痛を感じさせるのだと分かっていても、ナルト自身にはどうしようもなかった。
「動くから、ちゃんと捕まってるんだよ?」
優しすぎる声がそらぞらしい。
こんな酷いことをしておいて、と思いながらも、ナルトは素直にサクラの首へと腕を回した。
すがりつくように密着してくるナルトを抱き返し、ゆっくりと下から突き上げる。
「ふぁっ、や…っ、あっ、い…っ」
内臓を直接かき混ぜられる苦痛がナルトを泣かせる。
慣らされていない肉壁は挿入されている異物を拒み吐き出そうとするのだが、それに逆らって奥深くまで入り込んでくる塊は容赦がない。
「やっ、あ、やぁっ…あっ、んっ、んゃ…っ」
無意識のうちに逃れようとするナルトの腰をしっかりと抑え込むことでサクラは封じた。
普段よりもきつい内部にもっていかれそうになり内心冷や汗ものだったが、泣いてすがりついてくるナルトはいつもの何倍も可愛い。
いつも言い聞かせている成果で、ナルトはようやくこうして繋がっている時だけはサクラに「いやだ」と言うようになった。
けれど今度は、覚えたてのその言葉を、まるでしゃべり始めた子どものように連発するのだ。
無意識に言っているのも分かっているし、またそう言うようにしたのも自分なのだが、あまりにも言われ過ぎると少々傷つくものがあるのも本音で。
「いやなの?じゃあ…抜こうか」
ついついこんな意地悪を言ってしまう。
案の定、ナルトはその言葉を聞いた途端にいやいやをしてサクラにしがみついてくる。
その背中をポンポンと叩いて、内部を慣らすように小さくゆっくりと腰を使った。
どうもナルトを相手にしているといじめたくなってしまって仕方がない。
笑っているナルトも可愛いが、泣いているナルトはもっと可愛いのだ。
笑顔なんて、いつだっていくらでも見れる。
そんなナルトの泣き顔を自分だけが知っているという事実は優越感を満たして、サクラの独占欲を非常に満足させるのだ。
歪んでいるという自覚はあるが、それでもやめようという気にならないあたりがもう終わりかもしれない。
それでも、こんな自分が好きだとナルトが言ってくれればそれで良かった。
「ふぁっ、あ…、んっ、ぁは…っ、ぁ…、サク…ラぁ………っ」
どれだけいじめられても自分にすがりついてくるナルトは可愛かったし、自分だけに泣きついてくるナルトも愛しかった。
ねだられるままに口づけを与えて、優しい交合を続けていたサクラの頭の中に、ふいにイノの声が蘇る。
『ナルトのヤツ、俺がちょっといじっただけで泣いちまってさぁ。可愛い泣き顔だったぜ?』
ピキーンッ、と思考が絶対零度に固まる。
突然キスも動きも止まったサクラに、ナルトは感じ始めて頬を紅潮させたままで首を傾げた。
「忘れてた」
にっこりと笑いかけてきたサクラに、ナルトは「何がだってば?」とあやうく聞きそうになってしまった。
「お仕置き、だったね。ナルトがあんまり可愛いから、すっかり忘れてたよ」
場違いなほど爽やかに言い放ち、サクラはナルトの足を押し上げて小さな体をソファに埋める。
当然、ナルトはこれからの長い長い夜を予感して真っ青になった。
いやいやながらもその歪んだ愛情表現(?)の激しさを、体で知っていたので。
「覚悟してねv」
「………………っ!!」
その夜、ナルトが寝かせてもらえなかったことは当たり前のことで。
その上、一晩中酷くいじめられてしまったのはますます言うまでもなかった。
* * *
「もう、僕以外の前で泣いちゃだめだよ?」
目覚めて最初の言葉に、ナルトは意味が分からないとばかりに瞬きを繰り返していたけれど。
サクラがにっこりと笑って「分かった?」と問えば、少しだけ頬を染めて頷いた。
「じゃあ、今日はずっと一緒にいてあげるよv」
真っ赤な頬にちゅっと音を立てるキスをして、サクラはギュッと布団ごとナルトを抱きしめた。
あの子の涙を見ても良いの僕だけ。
あの子の可愛い顔を見ても良いのも僕だけ。
あの子は僕のもの。
全部、全部僕のもの。
泣かせて。
抱きつかせて。
すがりつかせて。
やっと、おねだりするようにもなってくれた。
征服欲?
独占欲?
いえいえ、やっぱり
愛、でしょう♪
終