好きだよ…
今日も俺は偽りの言葉を囁く。
その言葉に『狐』は嬉しそうに頷いて俺に好きだと囁き返す。はっきり言って寒気がするね。
お前に別れの言葉を突き付けたら一体どうなるだろうな…。
楽しみだよ、ナルト…
「終わりに、しよっか?」
「え?」
いきなりカカシから吐き出された言葉に、ナルトはきょとんと首をかしげる。
「だからさ、もー別れよって言ってんの。俺は。ていうか、俺は最初から好きでも何でもなかったけどね」
むしろ大嫌いだったからね~。あはは。
そんな言葉をたたき付けられてもナルトはまだ首を傾げている。
そして、やっと意味が分かったのか、ぽんっと手を叩くと、スクっとナルトは立ち上がった。
「ようするに、キスしたりエッチしたり、こうやって俺がカカシせんせーのとこにもう遊びに行くことないってことだろ?」
「ま、そういうことになるな」
カカシが予想していた反応と違い、あっさりとしたナルトの態度にカカシは少々戸惑う。
「うん、わかったってば!じゃ、カカシせんせー、また任務でね!遅刻するなってばよ~!」
それだけを言うと、ナルトはバタバタと慌ただしくカカシの家を出て行った。
ナルトのあっさりした態度がなぜか気に食わない。
演技だと思える態度ではなかった。
まるで、今までの関係を一瞬でリセットしたかのように。
笑顔でナルトはカカシに手を振って帰っていった。
自分から別れを切り出したのにカカシは自分がナルトから捨てられた気分に陥ってしまい酷く嫌な気分になった。
別れてから2週間ナルトの態度はいっこうに変わらない。
ただの上司と部下の関係に戻った。
なんのわだかまりもなく。
ただ変わったのは、ナルトの瞳にまったくカカシが映っていないということだ。
眼中にない、といったナルトへの態度にカカシは正直苛ついていた。
「ナルト」
遂に我慢が出来なくてカカシはナルトに声をかけた。
「なんだってば?」
きょとんと首を傾げるナルトにも苛立ちが募る。
「お前さ、よく平気で任務に顔出せるよね?」
「どーゆー意味だってば…?」
ワカラナイという風な顔をする。
「お前、俺に憎まれてんだよ?」
「へ?別にそんなこと知ってたってばよ?」
今更、何を言っているのだろうと言わんばかりにナルトはカカシを見つめた。
ナルトの言葉にカカシは目を見開く。
カカシがナルトに好きだから恋人になってと言ってきたとき、ナルトはなにかの遊びか、賭でもしているのだと思った。
カカシが自分を…憎んでいることなど、ナルトはとうの昔に気付いていたのだ。
それはなぜか。
それは、ナルトが生まれ育って来た境遇がそうさせた。
「知ってて…どうして俺と付き合ったの…?」
搾り出すような声でカカシはナルトに問う。
「もちろん、せんせーが好きだったからだってばよ?」
ナルトはにっこりと微笑んだ。
とても無邪気な笑みがカカシの心を縛り付ける。
「別にね、愛してほしいなんて思わないからさ安心してってば」
「俺のこと嫌いなままでいてよ」
『愛』よりも確かな感情(憎しみ)を俺に向けていて。
『愛』なんて不安定な物。いつなくなるかわからないでしょう?だから。
愛より遥かに重い裏切りを俺に頂戴?
それが俺の唯一求めるものだから……
愛なんかいらないよ。
終