忘れ方。
愛し方を教えてくれたなら忘れ方も教えて?
この心が忘れることなんて出来やしないと叫んでる。
愛なんていらないと思ってた。必要ない感情だと思ってた。
たくさん、俺に愛をくれたヒト。
たくさん、俺を抱き締めてくれたヒト。
たくさん、愛し方を教えてくれたヒト。
貴方に愛される日々。
貴方を愛する日々。
とても幸せで、終わりがこないと思ってた。
どうして、別れは突然やってくるんだろう。息をツク間もなく。
もう、貴方にキスをすることも、貴方を抱き締めることも出来ないんだね。
そう思うと、無性に涙が溢れてたまらなかった。
「ナールトvv」
いきなり背後からきゅっと抱き締めてくる腕にナルトは「ひゃっ!」と驚いたように声を上げる。
「カカシせんせー?!もうっ!脅かすなってばよ!!」
ぷりぷりとカカシの小さな恋人は声を立てた。
「ナルトも忍者なら気配くらい読めないとダメデショー?」
上忍の気配がそう簡単によめるか!とナルトは心の中で叫んだ。
「せんせーってば、こんな人目があるとこでくっつかないでってば!」
じたばたと暴れるナルトだったががっちりとナルトを抱き締めるカカシの腕は離れない。
それどころか、ますます強く抱きしめてくる。
「だったら、はやくおうちに帰ってくっつこう?」
ナルトもくっつきたいデショ?
悪戯な微笑みを浮かべるカカシにナルトは真っ赤になった。
「……ウン……」
そして下を向きながら頷いたのだ。
トマトみたいに真っ赤になりながら。
こんな恋人の仕草がカカシにはとてもかわいらしく感じた。愛しくてたまらない。
「じゃ、早く帰ってもっといっぱいくっつこうねvv」
にっこりと笑ったカカシはぱっとナルトを抱き締めていた腕を離して歩き出した。
腕が外されたことがなんだかナルトは寂しくってナルトはちらちらとカカシを見る。
そんな様子にカカシが気付かない訳がなくて。
「どーしたの?ナルト」
きっとカカシには解っているのだ。意地悪そうな笑顔を浮かべている。
「……カカシせんせー、手ぇ繋いでもいい…??」
控え目に聞いてくるナルトに一瞬意地悪をしようかとカカシは思ったけど、必死な顔して聞いてくるナルトに意地悪なんて言えなくて。
「いいよ。手、繋ご」 はい、とナルトに手を差し出した。その手をナルトはきゅっと握る。
そして二人は仲睦まじく家路を歩いて行ったのだった。
好きな人と手を繋ぐことがこんなに幸せなことだなんて思ってもいなかった。
幸せも、愛情も、全部貴方が教えてくれたこと。
でも。
忘れ方は教えてくれなかった。
どうしたら、せんせーのこと忘れれる?
ふらりとナルトはたちあがり、里の裏手へと向かう。
ボロボロに錆びたフェンスの向こうには底が見えないほどの深い闇があった。
フェンスにかかっている看板には立入禁止の文字。
だけどナルトはそんな看板なんてお構いなしにがしゃがしゃと音を立ててフェンスを登る。
一番上にまで来ると、ナルトはフェンスの上に立ち空を見上げた。
こんな夜は、もしかしたら亡くしたあの人にも会えるかもしれない。
くすり、とナルトは笑って深呼吸するとフェンスから空へと一歩踏み出した。
忘れ方を探しに行こう。
このフェンスを越えたその先に。
終