君は、絶対俺に「好き」だとは言ってくれないね。
君次第
「好き」だと「愛していると」俺は何度君に伝えてきただろうか。
それなのに、君は「うん」とか「うれしいってば」とか、そんな答えしか返してくれなくて…。
抱きしめれば、君は細い腕を背中に回してくれるし、キスをすれば抵抗することなく受け入れてくれる。
なのに、どうして「言葉」はくれないんだろう。
「好き」だと嘘でもただ一言欲しいだけなのに。
本当は俺のことなんか好きじゃない?
カカシは、自分の腕の中にいる子供を見つめた。カカシの胸板を背もたれにしながら、ナルトは忍術書を読んでいる。
「ナルト…」
「ん?なんだってば?」
無邪気にカカシの呼びかけに反応するナルト。
「好きだよ…」
「うん…」
そうして、ナルトは黙り込む。気まずい雰囲気が部屋を包んだ。
どうして、そんな悲しい顔するの?
俺の言葉は、君にとってそんなに重い言葉?
「ナルトは…?」
ビクン、とナルトの肩が震える。
「…」
答えてくれないナルトに、カカシはだんだんと苛ついてくる。
ナルトを見るのが辛くて、拗ねたようにそっぽを向いた。
ナルトの視線が、痛いほど突き刺さる。
「ナルトはさ、俺のことなんてどうでも良いんでしょ?」
この言葉を吐き出した次の瞬間もうカカシは後悔していた。
「しまった」と思っても言ってしまった言葉はもう戻せない。
吐き出してしまった言葉に、カカシは軽く自己嫌悪に陥る。だけど、やっぱりそれはカカシが心の奥底で思ってる不安であって。
慌てて、ナルトの顔を覗き込むナルトの青い瞳はみるみるうちに潤んでいった。
しだいにナルトの頬には涙が伝っていた。
自分の言ったことが、どれだけナルトを傷つけたことか…。
「ごめんね…」
ぎゅっと、カカシはナルトを抱きしめる。
ナルトがカカシの服を濡らす。
「ごめん…ね…」
折れるくらいカカシはナルトを抱きしめた。
『だけど…やっぱり言葉が欲しいんだ…』
嘘でも、誤魔化しでもいい。
君がいつか俺に与えてくれるその言葉を。
与えられるのを待っている。
俺に「好き」と言わせるのはお前だけだから、俺はナルトがその言葉を言ってくれるのを待つ。
俺を生かせるのも殺せるのも
君次第
終