はらり
はらり
はらり
空から降ってくるのは白い白い、雪。
今年は初めて降る、雪。
ナルトは雪が降ってくる空をただ、その青い瞳で見つめていた。
せんせー、今年も、雪が降ってきたよ。
「せんせー、雪だってばv」
二人でこたつに入って丸くなって、ミカンを食べながらテレビを見て。まったりと過ごしていると、外には雪がちらほらと降って来ていた。
「そうですね・・・ごほっ・・・今夜は、寒くなるでしょうねぇ・・」
「外行こうってば!!ハヤテせんせー」
「私は・・・寒いのが苦手なんですね・・・ごほっ・・・」
のそりと、更にこたつの奥深くに入り込もうとしたハヤテ。
「え~!!ダメだってばよぅ!!初雪なのに、外に出なくてどうするんだってば!」
こたつから出るのを渋るハヤテをナルトはぐいぐいと引っ張った。
「ごほっっ・・・でもですねぇ・・・外は寒そうなのですが・・・」
「寒いに決まってるってば!!今の季節がなんだと思ってるんだってばよ!・・・ね?ハヤテせんせー行こうってば・・・」
コートを羽織って、手袋をして、マフラーを巻いて、耳当てまでしてナルトは準備万端で。自分の顔をのぞき込んでくるナルトにハヤテは諦めたようにこたつからは出す。
「仕方ありませんね・・・ごほっ・・・」
寒いのは本当苦手なんですけどね・・・。
といいながら、ハヤテはコートを羽織った。
どうもあまりにも可愛らしいナルトにほだされたらしい。男ハヤテ。
「・・・行きましょうか」
ハヤテは、柔らかく笑うとナルトに手を差し出した。ナルトもその差し出された手をぎゅっと握ると、ハヤテに向かってにっこりと笑いかける。
「せんせ、雪が積もったら、雪合戦して、雪だるま作って~・・・」
「今日は積もらないでしょう。まだ気温も暖かいですし・・・」
「え~!!それってば絶対ダメ!!またいつハヤテせんせーと雪見れるか分からないってばよ~・・・・オイ雪!!もっと頑張ってふるってばよ!!」
ナルトは腕で大きくバッテンを作り、空に向かって喝を入れていた。
そんなナルトを見て、ハヤテは優しげに微笑んだ。
「・・・ごほっ・・・大丈夫ですよまた一緒に、雪を見ましょう・・・ごほっっ・・」
軽くナルトの頭を撫でて、それからハヤテはナルトのカラダを抱きしめた。
「え~・・・でも、ハヤテせんせー寒いからってコタツからでないじゃん」
あまりにもハヤテが優しく笑うモノだから、ナルトは照れてぷいっと顔を逸らしてこんな憎まれ口をきいてしまった。
それが照れ隠しだということはハヤテには丸わかりで。
耳まで真っ赤になっているナルトを抱え上げ、耳元で囁いた。
「・・・ナルト君が一緒にいてくれるなら、ちゃんとコタツから出てきますよ」
ナルトの顔は赤くなる一方で、ハヤテはそれを面白そうに眺めている。
「んじゃ、約束。来年も再来年も、初雪は一緒に見ようってば」
ナルトはハヤテに小指を差し出した。ハヤテはクスクスと笑いを漏らしながら自分の小指もナルトのにからみつける。
「・・・約束です・・・ごほっ・・」
「約束だってば・・・」
きゅっと小指と小指を絡ませて、指切りをして。
その手が離れるとナルトはハヤテの唇に軽く唇を押しつけた。そして、素早くハヤテの腕から飛び降りる。
真っ赤になって顔を逸らすナルトを、ハヤテは愛おしそうな目で見つめる。
「・・・約束の証だってば!!」
顔を逸らしたままそう言うと、ナルトは少し降り積もった雪に足跡を残していった。
「来年も・・・再来年も・・・一緒に雪を見ましょうね・・・」
そうハヤテは呟いて、ナルトを追いかけた。
ハヤテせんせー、雪が降ってきたよ?
約束したのに、何でせんせーはいないってば
カカシせんせーから、ハヤテせんせーは死んだって、聞かされたけど
俺そんなの信じないってば
だって、だって・・・ハヤテせんせーはずっと一緒に、雪を見るって。
毎年一緒に初雪を見るって
約束したのに
「なんで・・・・・・・ハヤテせんせーの、ウソツキ・・・・」
こみ上げてくる涙を、拭おうとせずにナルトは空を見つめた。
真っ白な雪が降りしきる中でナルトは自分自身を抱きしめた。
だけど、それはハヤテが抱きしめてくれる温もりではなくて、ますます涙が止まらなかった。
「ハヤテせんせ・・・っ・・ふ・・・会いたい・・・っ会いた・・・よぅっ・・・」
ふわりと風が動いた。
「・・・・会いに来ましたよ」
きゅっと自分よりずっと大きな体がナルトを抱きしめる。
「・・・ふえ・・・?」
ずずっっと鼻をすすりながら、ナルトが後ろを振り向くと、そこには死んだと聞かされていたハヤテがナルトを抱きしめていた。
「ごほっ・・・すみませんね・・・ナルト君を泣かしてしまって・・・」
夢を見ているのではないだろうか、とナルトは自分の頬をぎゅっと引っ張る。
「いたひ・・・・」
痛みでなのか、ハヤテに会えて嬉しいからなのか、ナルトはぽろぽろと大粒の涙を流した。
「・・・ごほっ・・・ナルト君にそんなに泣かれると、困ってしまいます・・・ごほっ・・・・・・泣かないで、下さい」
ハヤテはくるり、とナルトをむき直させ、そっとナルトの涙を拭った。
「何で生きてるってば!!」
失礼にもナルトは指をさしながら後ずさる。
「・・・火影様の命令なのです・・・ごほっ・・・敵を欺くにはまず味方から、というでしょう?だけど、今日はどうしても・・・ゴホッ・・・ナルト君に逢いたかったのです」 ハヤテにしては珍しく少し顔を赤らめながらナルトを見つめている。
「約束、しましたから」
二人の周りには、チラリほらり、と真白の雪が舞っていた。
「・・・せんせ・・・っ」
言うなり、ナルトはハヤテの胸に飛び込んで大きな声で泣きまくった。
「落ち着きましたか・・・?」
激しく泣くナルトをハヤテは抱きかかえて泣きやむのを待っていた。胸の辺りはナルトの涙でびしょ濡れになっていた。鼻水もついているみたいだが、ハヤテ自身が原因でナルトが泣いたのだ。それはハヤテにとってとても嬉しいことで。少し微笑む。
(…)
嗚咽が聞こえなくなったので、ナルトの顔を覗いてみるとすやすやと寝息を立ていて。
そんなナルトに、くすりと笑顔を浮かべた。
「…目が覚めたら、うんと、私が生きてることを教えてあげますよ…ナルト君」
ハヤテは、ナルトを抱え上げると、ふっと煙のように消えてしまった。
次の日、雪が積もったにもかかわらず、一番煩いだろうナルトの姿が見えなかったのを不審に思ったカカシがナルトの家を訪ねて悲鳴が里中に響きわったったのは…また別のお話(笑)
終