夢と幻と現実~K~


 夢であえたら、お前の体が軋むほど抱きしめて

 夜が明けても、お前の姿だけを見続けていたい

 





 イカレタ視界に映ったお前だけが、この世の全て。















 俺のスベテ。

















 国外の任務が入り、帰ってきて一番最初にお前を訪ねてみれば、この状況。

 ナルトの部屋にはベットと机、そして額当て。それしか残されて無くて。





 カカシは、煙のように姿を消し、事情を知っているだろう火影の元へ走った。

 気配を隠そうともせず、あわただしい態度でカカシは火影の部屋へ入っていく。

「・・・・ナルト・・・ナルトは?!あの部屋の有様は、一体どういうことですか?!」

 殺さんばかりの勢いで火影に詰め寄る。

「ナルトは・・・・殺された・・・・・。」

 絶望的な、火影の言葉。がくりと、膝をつく。





 任務に行く前、アノ子と約束したんだ。



 俺が帰ってきたら、必ず「おかえり」と迎えてくれると。

 

 ナルトから、キスをしてくれると。もちろん、俺もそれ以上にたくさんキスを贈ると。









 抱きしめて、くれると。

  







 目の前が、真っ黒に染まる。その中にただ浮かぶのはアノ子の笑顔。











 ひとり、

 ふたり、

 さんにん・・・・・・









 カカシは、ナルトを殺した容疑者をただの肉塊になるまで切り刻み続けた。





 火影が捕らえていたヤツら、一人一人に見せつけながら。

 オマエらもこうなるのだと憎しみを込めた眼差しを閃かせながら。





 全員を殺し終わり、返り血を拭おうともせずその場を後にした。

 家に帰るとどさりっ・・・と音を立てて、ソファーに沈みこむ。





 血の臭いが鼻につく。





 時が刻まれる音が部屋中に響く。それがやけに煩くて、カカシは家にあった全ての時計を壊した。

 一筋の光も入らぬようカーテンを閉め切ってただカカシは宙を見上げていた。

 何日も、何日も、食事もとらずただ、眠りにつく。

 眠りにつけば、そこにはカカシが一番愛している子供が笑顔で迎えてくれる。





 手を繋いだ温もりも。

 体を重ねた熱も。

 





 お前の輝く笑顔も。





 どうして、夢から覚めてもこう鮮明に残っているのだろうね。



 夢から覚めたときのその喪失感がたまらなくて、カカシはまた眠りにつく。





 夢なんて儚いもの。





 ナルトが死んだ。

 頭ではその事実を理解しているものの、カカシの心はそれを受け付けない。











 ナニも食べない

 ナニもしゃべらない

 ナニもしたくない

 ナニも欲しくない

















 ナルト以外、何にもイラナイ。と。

















 ナルトの血が付いた額当てを握りしめて。アノ子の匂いがついているものは、それしかなくて。

 



 ふと、目を覚ますと、そこには、ただの闇が広がるばかり。

 夜か?昼か?

 光もささないくらい部屋ではソレすらも解らない。





「・・・ト・・・」



 

 ポツリと、カカシが独り言を漏らす。





 ただ、一点を見つめて。





「・・・・ナルトっっ・・・・・」





 カカシせんせー











 ダイスキ











 微笑むナルトの姿が、カカシには見えていた。

 



 ぶつぶつと、小さく「ナルト」と呟きながら、カカシはナルトに手を伸ばず。



 双眸からは、涙が溢れていて。







 幻だって解ってる。

 イカレタ頭が見せた幻覚だって解ってる。







 



俺の全てを、お前に捧げるよ。








 イカレタ視界に映った。













 お前だけが、この世の全て ―――――







カカシ Side 終







死にネタ注意。      

        

この話は死にネタですが、夢と幻と現実シリーズを全て読むと甘い…かもしれません。

2002/06/21