Oblivion 3

「ナルト・・・オイ・・・ナルト・・・」

 ぺちぺち・・・・

「オイ・・・・」

 誰かに頬を軽く叩かれてナルトは目を覚ました。

「・・・・・う・・・サスケ・・・?」

 ナルトが目を覚ますと心配そうに自分を見ているサスケの姿が目に入った。

「う、じゃねぇよ。いきなり倒れるから驚いただろ、ドベ」

「倒れた・・・・?なんで・・・・?」

「知るかよ。大方久しぶりの任務で疲れでも出たんじゃねぇか?」

 ナルトはまだ少しぼーっとしている。少し放心状態のようだ。

「あ、アレ?ここどこだってばよ?」

 ふと気が付くと自分が見慣れないところにいることが分かる。ナルトが気が付いてから5分経ったころだった。

「俺の部屋。勝手にお前の部屋に入るわけにはいかねーし、連れてきた」

 「ふーん」とナルトは相づちをうつと、興味深そうにサスケの部屋を見回した。

 棚には忍術書がきちんと整理され、並べられていた。

 机の上には磨きかけだろうと思われるクナイがおいてあった。

「サスケが、運んできてくれたのか?」

「道ばたに置き去りにしてくるわけにもいかねぇだろうが」

「・・・・ありがとう・・・」

 ぽつり、と呟いた言葉はサスケの耳にも届いたようだった。

 少し顔を赤らめてそっぽを向いた。

「・・・・外真っ暗だってばよ、急いで帰らなきゃ!!」

 がばっと起きあがり、慌ててナルトはベットから下りようとした。

「もう遅いから、泊まって行け。それに、倒れるくらいだからまだ体、きついんだろ?寝てろ」

 あっという間にナルトは無理矢理ベットに戻された。

「う~・・・・わりぃ・・・サスケ・・・」

 布団をかぶって横になっていると、ナルトは次第に眠りの底へと落ちていった。

 ナルトが寝息を立てて眠ったころ、サスケはナルトの鎖骨辺りに小さく口づけを落とした。











『ナルト・・・』

 まるで、映画のように写し出されている光景。

 そこには確かに俺がいて、誰かが俺の名前を呼びかけてきた。

 そして、その呼びかけに俺も嬉しそうにその人のいる方向へと体を向ける。

 だれ・・・・?

 顔は見えないのに、確かに目の前にいる人は笑っていて。

『ナルト・・・・好きだよ』

 にっこりと微笑んで、その人は俺を抱き上げて。

 俺も、その言葉に少し顔を赤らめながらも、

『俺も大好きだってばよ!』

 とこれ以上ないというような笑顔で、その人に笑いかけた。

 知らない。

 こんな光景なんて、知らない・・・・!











『お前は、どうしたいんだ?』

 ふと、ナルトの耳に聞き慣れた声が聞こえてきた。

「・・・誰?」

 恐る恐る、ナルトはその声の主に問いかける。

『俺は、お前』

 そう声の主が答えると、まるで鏡が目の前に現れたかのように、自分と同じ姿をした人がナルトの目の前に現れた。

「・・・俺・・・?」

『そう、俺はお前。お前は俺。お前は、今どうしたい?』

「今・・・?」

『記憶を無くしてるだろ?想い出したいのか?それとも・・・・このままなくしたままでもいいのか?それを決めるのは、お前自身・・・』

「そんなの・・・分からないってばよ・・・それに・・・カカシせんせーのことしか忘れてないし、別に思い出さなくてもいいかなって・・・」

『怖いから?』

 自分に言われて、ぎくりと身が強張るのが分かる。そっと“ナルト”へ目を向けると、刺すような視線で自分を見ているのが分かる。

 思わず、目をそらしてしまった。

『思い出したくないってコトは、逃げているんだろう?そんなに、カカシと過ごした日々のことを思い出すのが、辛いの?』

「そ・・・ん・・・」

『全てを否定するの?』

『自分の気持ちも、カカシと過ごしてきた自分も』  

『思い出して、聞きたいことがあったらカカシに聞けばいい。何にもしなくて諦めるのはお前の悪い癖』

 ぴんっと“ナルト”がナルトのおでこを弾いた。

 ナルトはいたい・・・と額をさすっている。

「・・・でも・・・でももし俺が聞きたくない言葉を聞かされたら?「化けギツネなんて、本当は殺してしまいたかった」・・・なんて言われたら・・・俺、どうすればいいんだってば・・・」

『そのときは・・・・・』

 













 俺がアイツを殺してやるよ













 

 ぶんっと音を立てて消えた“ナルト”の瞳は、確かに赤かった。



 

 ふっと目を覚ますと、そこには見慣れない天井。

 温もりを感じて首を動かすと、隣にはサスケの姿。

 びっくりして飛び起きて、ナルトは慌ててサスケの家から飛び出していた。

 

 今日は、カカシせんせーと話をしよう。













『俺は、アナタの何だったんですか?』





 





 



 目の前を駆けていくのは、俺の愛しい子供。

 こんな朝早くから、一体どこへ行っていたんだろうね?

 よ~く考えたら、ナルトが駆けてくる方向は、サスケの家がある方向じゃない?

 あらら、俺に気付いたみたい。また逃げちゃう?

 そんなコトされると、俺そろそろ





















 限界超しちゃうよ?





















「カカシせんせー!!」

 珍しい、っていうか、初めてじゃない?

 記憶を無くしてからナルトが声をかけてきたのなんて。

「な~に?ナルト」

 息を切らしながら、ナルトはカカシに真剣な眼差しを向けた。

「あのさ・・・俺・・・」

 何かを言い出そうとするナルトの顔をじっと見つめていると、ナルトの鎖骨辺りに、何か赤いモノがついていることに気が付いた。

 それは、サスケがナルトにつけた、キスマーク。



 それを見た瞬間、カカシの理性はがらがらと崩れた。 

 あ、ダメだ・・・・

 

 俺、もう・・・・限界だよ、ナルト

 カカシの中でぷつり・・・と何か切れる音がした。

 無邪気に駆け寄ってくる、ナルトが憎たらしくてたまらない。

 俺のことだけ覚えてないだなんて、許さない。



「あの・・・カカシせん・・・」」

「それ、さ、誰につけられたのかな?ナルト・・・・」

 ナルトが話し出そうとしているにもかかわらず、カカシの頭にあることは、ナルトについているキスマーク。

「へ?何が?」

 とんっっ・・・軽い衝撃が自分の身体に襲ったと思うと、ナルトは意識を手放さざるをえなかった。







 ふとナルトが目を覚ますとそこには見慣れない天井。辺りを見回しても見慣れない部屋。今のナルトにとって、という意味だが。

 だけど、なぜだか懐かしさを感じる。



 ぎしっっ・・・



 身動きを取ろうとして、柔らかいベットの上にいることにやっと気が付く。

 そして・・・・



 両腕が縛られていることに。





「・・・なんで・・・?」





 自分がどうして、こんな風に繋がれているのかが分からなかった。

「目が覚めた?」

 かちゃりと扉を開けて入ってきたのは、カカシだった。

 マスクも額当てもはずして、素顔を晒している。

 

 なぜか、ほっとした。



「カカシせんせー、これ、ほどいてくれってば・・・」

「ダメ。・・・・ほどいたら、ナルト・・・また逃げるデショ?」 



 俺じゃない、誰かのところに。

 イルカ先生?それともサスケ?

 お前を好きでいてくれるやつ、お前を愛しているヤツなんてたくさんいるサ。

 俺だってその一人。 

 だけど、この中で一番お前を愛しているのは確実に俺。

 

 お前が記憶を失ってから、避けられて、避けられて、避けられて。

 おまけにサスケの匂いをぷんぷんさせて、そんなアトまでつけられて・・・・。















 





 お前を失うくらいならお前を壊してでも。

















 ばたんっと扉を閉めて、ナルトのそばに近寄ってくるカカシ。

 手には小さな小瓶が握られていて、それを持ったままカカシはベットに腰掛けた。



「これがなんだか覚えてる?」

 ちゃぷんと、小瓶に入った液体を振ってみせる。

 その液体は蜂蜜色をしていて。

 ナルトは振る振ると首を振った。

「・・ま、そのうち思い出すでしょ・・・・さて・・・」

 カカシはことん、とベットの脇の棚に小瓶を置いた。

 そして、素早い動きでナルトのズボンと下着を一緒に降ろす。

「なっっ!!何すんだってば!!」

 きっとカカシを睨みつけたが、カカシはもはやナルトの下肢に顔を埋めようとしていた。

「ふっっ・・・・」

 カカシの吐く息がナルトの幼い雄を刺激する。

 次の瞬間、カカシはナルトのそれを口に含んだ。

「ひぁっっ・・・・・あっっ・・・・ああっっんっっ・・・!!」

 巧みな舌技でカカシはナルトを追い上げていく。

 頭ではカカシのことを覚えていなくても、カカシに慣らされた体はカカシの愛撫を覚えていた。

「あ・・・っっ・・・あんっ・・・・・あぁぁぁんっっ・・・・!!!」

 かくり、とナルトのカラダから力が抜ける。

 肩で息をするナルトを見つめながら、カカシはナルとの放った精をごくり、と音を立てて飲み干した。

「・・・・な・・んで・・・・」

 少しばかり焦点の合わない目でナルトはカカシに問いかける。

「出してこなかったの?・・・ずいぶん、濃かったけど」

 なにを?と聞こうとしたとき、再びカカシはナルトのモノを弄び始める。

「ひぅっ・・・・や、やだぁっ・・・」

「ヤじゃないでしょ?こんなにびちょびちょにしちゃってるんだからサ」 

 くちゅくちゅと音を立てて、カカシはナルトのモノを上下に動かす。再びナルトのモノは勃ちあがり蜜を溢れさせた。

 片手でナルトのペニスを弄くりながら、カカシはナルトの秘所にも手を伸ばした。

「ここもキツイままだネ。サスケとして来なかったんだ」

 こんなアトまでつけているのに・・・・。

 憎悪を込めた瞳でカカシはナルトの鎖骨の上のアトをすっと撫でた。その感触にナルトはびくっと体を震わせる。

「そうそう・・・これ使わないとね~」

 先ほどおいた小瓶を再び手に取り、カカシは片手できゅぽんっっと蓋を開ける。

 中の液体を掬い、それをナルトの秘部へ塗り込めた。

「・・・つめ・・・たっっ・・・・」

 塗り込められた液体の冷たさに、ナルトはびくりと体を震わせる。

 くちゅくちゅと音を立てて、ナルトの秘部をまさぐり続ける。

「ひあっ・・・いたっっ・・・てば・・・あっっ・・・」

「痛い?ナルトはいつも、俺のを入れて気持ちよさそうにしていたのに?痛いワケないデショ・・・ナルトが好きなのはここらへんだったよね?」

 指を二本増やし、ぐるりと中を刺激する。

「ああっっ!!・・・ぁ・・はぁっっ!!」

 急な刺激にナルトの体は弓なりにのけぞる。

「あっ・・・あぁっん・・・・んっっ・・・あ・・!」

 びくびくと痙攣するかのようにナルトの体は震えている。だが、カカシはその手を止めることはなかった。

 しばらく、ナルトの秘部を弄ると、カカシはそこから手を抜いた。

 やっと終わったんだ、とナルトがほっと息を吐こうとした瞬間、身体の内部から言いようのない疼きが生まれてくる。

「ふ・・・ぁ・・・・なに・・・?」

 カカシに触られているわけでもないのに、自然と自分のペニスが立ち上がってくるのを目の当たりにする。

「前に一度使ったデショ?あのときもサスケには気をつけろって言ったよネ?」

 

 すっとカカシはナルトの双丘を撫で上げる。

「ひあっっ・・・あっ・・・せんせ、も・・・やぁ・・・っ」   

 もどかしげに腰をくねらせながら、ナルトは抵抗の色を見せる。

「ダメだヨ。これは・・・お仕置きなんだから」



 お前が、俺を思い出さないから。









 ぎしっっぎしっ・・・

 どれくらい時間が経ったのか分からない。

 ナルトは抵抗することも無くなっていた。

「あっっ・・・んっ・・あぁぁっっ・・・っ」

 ひっきりなしに喘ぎ声を上げて、ナルトはカカシに貫かれている。

「ナルト・・・・ナルト・・・」

 うわごとのように、カカシはそれだけを繰り返す。

 

 思い出して。



「ナルト・・・・っ」

 カカシはナルトの最奥に欲望を解き放った。

 再び、繋がったままナルトを抱え込み下から突き上げる。



 抱きしめて。



「あっっ!!ふあっっ・・・ああぁっっ・・・・」

 カカシにしがみつくように、ナルトは背中に手を回す。

 すると、カカシはぎゅぅっとナルトの躰を抱きしめる。

 カカシは耳元に口を寄せて呟いた。

「思い出して」

「あぁぁあっ・・・」

 ぐんっとカカシが腰を突き上げるとナルトはひときわ高い嬌声を上げた。

 

 

 快楽に溺れながらも、ナルトはカカシのその声を聞いていた。

 そして、思い出したい、と初めて思った。

 だけど、思い出すのはやっぱり怖くて。

 胸が痛くて泣きそうになる。





「俺のことだけ、忘れてないで」

 薄れいく意識の中で、ナルトはカカシの声を聞いた気がした。









 ふ、とナルトは目を開ける。

 そこには、知っているあたたかい感触があった。

 まだ脳味噌が覚醒せずに、ぼんやりとしていると

「起きた?」

「ん・・・・」

 こしこしと、ナルトは目をこすっている。

 ナルトが逃げないように、とカカシはナルトの手を握りしめて。

「ねぇ、ナルト・・・・話を、聞いて」

 カカシのこの言葉に、ナルトの体がビクリ、と震える。そして、カカシが握っている手を振り払おうとした。だが、もちろんそんなことをカカシが許すはずもなく、ナルトが振り払おうとした手を、さらに、力強く握る。

「・・・くな・・・聞きたくないっ!!」

 固く、強く握っていたカカシの手さえも振り払って、ナルトは耳をふさいだ。





“サヨナラ ナルト”





 崖の上から突き落とされる。

 幸せの絶頂から、地獄のそこへと突き落とされる。

 カカシの瞳を見るのが怖くて、カカシの声を聞くのが怖くて。

 ナルトはうつむき、泣きじゃくっている。

「サヨナラなんてっっ・・・言わないでッッ・・・・」

 

 戻ってしまった、記憶のカケラ。





 カケラが1つでも戻ってしまえば、あとはパズルを完成させるかのように記憶は戻っていく。



「俺が、お前にサヨナラを言うだって・・・・?」

 ばっとナルトの手を片手で掴みあげ、もう片方の手でナルトの顎をぐっと掴み、自分の方を見させた。

 強引なカカシの手つきに、ナルトは痛々しく顔をゆがめる。だが、それは肉体的な痛みに対して歪められているのではなかった。

 カカシの瞳を見るのが、カカシの声を聞くのが怖かった。

 その瞳が、憎しみの色を浮かべていたら?

 その口から出てきたコトバが、己の心を壊すコトバだったら?

 かちかち、と歯が震える。

 カカシが口を開いた瞬間ナルトは眦に涙を浮かべてぎゅっと目をつぶった。

 だが、カカシの口から出てきた言葉はナルトを傷つけるモノではなかった。

「お前が記憶をなくしてから、気が狂いそうだった。目も合わせない、話そうともしない。俺だけを避ける。俺のことだけ忘れてる・・・・お前を誰より愛してるのは、俺なのに・・・・・っ」

「どうして・・・・俺のことだけ思い出さないんだ・・・ナルト・・・お願いだから思い出して・・・・」

 ナルトの体に縋りつくように、カカシはナルトを抱きしめた。

 透明の液体が頬を伝い、ナルトの体にぽたぽたと落ちる。



 カカシせんせーが、泣いてる。



 ねぇ、泣かないで。



「せんせー、ゴメンナサイ・・・・」

 

 びくり、とカカシの体が引きつる。



 俺のことは思い出せないと言うの?

 俺のことは、忘れたかったと言うことなの?



「俺ね・・・・せんせーのこと」









「忘れたかった」









 心臓が、壊れるほどの衝撃がカカシを襲った。

 全てを、自分が生きている全てを否定されたような気がして。

 だが、ナルトの言葉はそこでは終わらなかった。





「せんせーが・・・カカシせんせーが好きだから」

 はっとナルトの顔をカカシは見る。

「カカシせんせーってばさ、上忍じゃん?で・・・・・俺の・・・・俺のさ・・・」

 ナルトの蒼い目からは、今にも透明な雫がこぼれ落ちそうだった。



 カカシせんせーは俺の監視役だってば。



 そう口に出すことは出来なかった。



「俺はナルトの・・・・恋人デショ?」

 それ以外のナニがあるって言うの?

 カカシはナルトを抱きしめて頭を撫でる。



 ナルトが言おうとしていたことがわかってしまった。

 確かに、自分は3代目にナルトの監視役を言い渡された。だけど。

 この役目をだれかに譲る気は毛頭なかった。

 だって、四六時中ナルトのことを見つめてられるから。



「・・・・ホントに?」

「本当だよ」

 そっと、カカシはナルトの頬を撫でる。

「でも・・・・」

「俺が、ナルトの監視役だって、聞きたいの?」

 びくりと、ナルトの体が震える。

 今にも泣き出しそうなナルトを見て、カカシはそっとその体を抱きしめた。



「確かに、俺はナルトを監視してるよ?だって―――――」





















 ナルトは、可愛すぎて誰に持って行かれるか分からないからね・・・。



















 そう、カカシはナルトの耳元で囁いた。





 ナルトは俺のもの。

 俺だってナルトのものだから。



 もう、絶対に、俺のことを忘れたりはしないでね。







 その言葉に、ナルトはこくりと頷いた。





「それはともかく・・・・・・・」





 ちらりと、カカシはナルトの首筋に目をやった。







「そのキスマークの説明をしてもらおうかな・・・?ナルト・・・?」

 にっっこりと微笑んだカカシの顔に、青筋が浮かんで見えたのは気のせいではないかもしれない。





 このあと、ナルトがどういう説明をして、どんな目にあったのかはまた、別のお話。













 終   

 



カカシ×ナルト。
Oblivionの完結編。

2002/05/08