アイノコトバ


 俺が、殺したんだ。







 鋭いクナイを、君の首に突き立てて。

 真っ赤な血を吹き出して、それでも君は・・・・・





 微笑んでいて。





 お前は、何にも悪くないのにね。

 里の犠牲にされて、憎まれて、迫害されて。

 お前は、何にも悪くないのにね。



 どんな扱いを受けても、火影になると、強くなるって、胸を張って生きていたナルト。

 恨み言ひとつ言わず、泣き言だって言わなかったナルト。

 いつも笑顔で、辛いことなど何もないという風に振る舞って、だけど独りで痛みを抱え込んで、傷ついてたナルト。





 舌っ足らずの口調で『カカシせんせー、アイシテルってば』真っ赤になりながら、微笑んで

 いつも、俺の孤独な心を癒してくれたナルト。

 

 俺の『愛してる』って言葉で、『好きだよ』って言葉でどれだけお前を救えたのか、お前の傷を癒せたのか分からないけど。

 お前はその青い目を、輝かせて微笑んでくれた。

 

 なんて、幸せな日々。

 幸せな時間。



 だけど



 もう、そんなお前に二度と会えない。    

 今腕の中にいるお前の青い目が二度と開かれないことを知っている。

 今腕の中にいるお前の小さな口が二度と俺の名前を呼んでくれないことを知っている。

 今腕の中にいるお前の細くて、小さな腕が俺を抱きしめてくれないことを知っている。

 だけど。





「ナルト」





 問いかければ、今にも目を開けて微笑んでくれそうで

 俺の名前を呼んでくれそうで

 

 きつく抱きしめれば、今にも俺の体を抱きしめてくれそうで

 折れるくらいにナルトを抱きしめた。



 だけど

 冷たくなった君の体は、目を開けない、口を開かない、動かない。





 俺が殺したから。



「殺してね」

 と君は笑った。

「せんせーが、俺を殺してね」

 俺はそのとき、どんな顔をしていたのか分からない。

「カカシせんせーに、殺されたいんだ」

 なんて、残酷なコトバ。











 俺は何に変えても、お前を守りたかったのに



 いっそ、憎めて殺せていたら、どれだけ楽だっただろうね。



 いや、そんなことを俺に言うお前を、憎んでいたよ。

 

 愛してると言った俺に、殺してというナルト。

 どこで俺達は、すれ違ったんだろうね。

 どこで俺達は、通い合ったんだろうね。





 俺以外の誰にもお前を触らせたくないんだよ。

 オマエも、お礼外の誰かに殺されたくなかったんだね。

 

 お前を殺したのは俺

 俺の心を壊したのはお前



「せんせーは生きて」



「カカシせんせーに殺されるんなら俺は嬉しいってばよ」





 微笑みながら、そんなことを言わないで。



 お前を・・・失った俺に、生きて、なんて言わないで。

 それだけは、いくらナルトの言うことでも聞きたくないけど。





 お前が、生きてというのなら。

 いつか、必ず迎えに来てくれるとしんじているから。

 そのときまでは ―――――





 愛の言葉を捧げるから。





 愛してる

 愛してる

 愛してる

 

 そう、囁き続けるから。













だけど











 どれだけ、囁いても返事のない、アイノコトバ。





「ねぇ・・・・いつになったら、迎えに来てくれるの・・・・・?」











その問いかけは、虚しく、宙に響くだけ。













死にネタ注意。       
        


カカシ独白。
ナルトが死んだら多分廃人一直線。

2002/03/19