「ナ・ル・ト~v」
とある日のお昼頃。
「そろそろお昼寝するってばよ~♪」などと思っていたナルトの前に、例の隻眼の銀狼がにょっきりと地面から生えてきた。
「ぅわわわわっ!かっ、カカシせんせーってば、どっから出てきたんだってばよっ?!」
驚きで太くなってしまっているシッポを「可愛いねぇ~」などと言いながら眺めている銀狼を、半分警戒しながらにじにじと後ずさる。
この銀狼がこんな顔をしてやって来た時には、大抵ろくなことを考えていないのだということを、ナルトは最近になってようやく理解してきていた。
この時もその時もあの時もどの時も、あ~んなことになってしまった原因は、すべてこの銀狼にあったのだからっ!
「て、天雷なら、今はいないってばっ」
「あ~あ。そんなにいやがられるとセンセー傷ついちゃうなぁ」
鋼鉄の心臓を持ちやがる…いや、持っていらっしゃるくせして、胸で両手を重ねて「傷ついちゃう」ポーズをとる銀狼は、非常に気色悪い。
けれど、そんな銀狼の騙しにも、ナルトは簡単にひっかかってしまうのだ。
「あっ、ご、ごめんってば。オレ、別にセンセーのコト嫌なわけじゃないってばよっ!」
警戒することも忘れて再び近づいてきたナルトに内心「単純だね~」などと思いながらも、銀狼は本日ここに訪れた目的を果たすべく行動を起こす。
「ん~、ナルトはいい子だねぇ。そんないい子には、センセーごほうびあげちゃおうかなぁ」
にっこり。
うさんくさいほどに爽やかな笑顔で銀狼はそう宣った。
が!
「ごほうびっ?!」
いろんな意味で単純なお子さまは、それを素直に受け取って喜んでいる。
きらきらとその大きな瞳を輝かせて、「せんせー、イイヒト(狼?)だってばv」と下から銀狼の顔をのぞき込んでくる。
『ぐはっ!』
左右に振れているシッポと、なによりもその嬉しそうな笑顔の可愛らしさに、銀狼は噴き出しそうになる己のリビドー(?)を必死に抑え込んだ。
『ヤバイヤバイ。サスケじゃないんだから、こんなことで鼻血なんか噴けないって』
ちゃっかりと失礼なことを思いながら深呼吸をしていると、
「せんせー?」
罪作りなお子さまは、銀狼の服をぎゅうvと握って不思議そうに首を傾げた。
『………………っ!!』
再び己の中の煩悩(関係ないけど、煩悩と本能って濁点だけの違いなんだね…)と戦いながら、情けなくも首の後ろをトントンと叩く。
鼻血大噴出を堪え切り、くぅるりとナルトに向き直った銀狼は、その懐から綺麗な虹色に光る小瓶を取り出した。
「?…なんだってば」
「キレイでしょー?これはねー、ナルトのために持ってきてあげたんだヨ?」
日の光を反射してキラキラと輝く小瓶とその中身は、好奇心旺盛なナルトの興味を引くのに十分な効果を発揮する。
「さあさあ、飲んでみて」
うまい具合にそそのかされ、ナルトはさっきまで警戒していたことなどす~っかり忘れて、その小瓶を受け取った。
栓を抜いて香りを嗅ぐと、ふんわりと甘い匂いがする。
「いただきますってばよ~v」
おいしそうな香りに上機嫌なナルトは、両手で持った瓶に口をつけた。
んく、んく、んく………
「おいしいってば~vv」
「でショ?ナルトが好きそうだな~って思って、特別に持ってきてあげたんだヨ?」
「せんせー、ありがとうってば!大好きだってばよv」
にこぉ、っととろけそうな笑顔を浮かべ、ナルトが銀狼に向かって礼をする。
「いえいえ」
などと答えながらも、銀狼はにんまりと口元を緩ませた。
『さ~て、っと♪』
目の前でお昼寝をしようかどうかと悩んでいるナルトをアブナイ眼で眺めながら、妖狐の帰りを待つことにする。
なぜ妖狐がロスだと知っているのか。
それは、この屋敷に入った時に妖狐が現れなかったからだ。
屋敷でのことはそこに居さえすれば妖狐に丸分かりなのだから。
当然、銀狼を警戒している妖狐が、ナルトへの接触を自分のいないところで許すはずはない。
結果、この屋敷を訪れた時に妖狐が現れなければ、それはヤツが留守にしている、ということになるのだ。
ふと気づけば、縁側ではナルトが毛繕いをしている。
しかも、大股開きで!!
『ん~、眼福ってヤツだね~』
後々の楽しみがあるせいか、カカシは普段なら「俺がやってあげるよ~」などと言いそうなところをグッと我慢し、ジィ~ッとそれを見つめている。
ようやく満足したのか大きくあくびをしたナルトは、ひょいっと庭に降りると、いつものように芝生が特にふかふかしている辺りを探り、そこで丸くなった。
この後、自分の身に起こる恐ろしい事態を、まだナルトは知らない………。
* * *
出先から戻ってきた妖狐は、呆然と立ちつくした。
視線の先には、いつものようにナルトがいる。
いや、別にナルトが庭で昼寝をしていたからとか、それがいつも以上にプリキューvだったからとかで驚いたわけではない(いや、それもあるが)。
妖狐が魂を半分ほど口からはみ出させている理由は、勿論ナルトのことだ。
今朝、出かける前までは確実に小さかった。
そりゃもう、べらぼうに小さかったはずなのだ。
だが、今目の前で寝返りをうったナルトはどうだろうか。
腰まである、美しい蜜色に輝く髪。
紅を引いたような艶やかな赤い唇。
雪のように白い肌。
しなやかな体つき。
それに見合うバランスを持った細い手足。
小さい時にはアンバランスだった耳とシッポが、丁度よくなっている。
そう………ナルトは成長していたのだ。
それも、一気に10歳程度も!
「コルァっっ!!カカシィッッ!!」
「んっ?」
迷わず、妖狐は縁側の下に顔を突っ込んで叫んだ。
そこでは、例の瓶の証拠隠滅を謀ろうとしていた銀狼が地面に穴を掘っている真っ最中だったのだが、見つかってしまっては仕方がない、とばかりに這い出てくる。
「ナニ?あんまり怒ると血圧あがるヨ?もう年なんだから………」
はふうぅ、と肩でため息をつきながらのたまう銀狼の襟首をひっつかみ、ビシッとナルトを指さした妖狐は、
「アレはどういうことだ………?」
と、ドスのきいた低~い声で脅しをかけた。
「趣味v」
その言葉を聞いた途端、妖狐は本気でこの銀狼を葬り去ろうと心に決めた。
「ま、待て待て待て待て待てっ!早まるなっ、なっ!早まるなよっ?!」
拳に力を溜めはじめた妖狐を見て取り、これはヤバイとばかりにカカシが止める。
「取り敢えず、俺の話を聞けって」
「ほぉ…ならさっさと話してもらおうじゃねぇか」
妖狐の額に、血管が浮き出ている。
マズイ、ヤツは本気だ……銀狼は長年の感でそれを察し、背筋に流れる冷や汗を自覚した。
「ほら、ナルト、もうあれ以上成長しないでショ?」
言われた言葉に、妖狐がグッと詰まる。
そうなのだ。
ナルトは、あれ以上成長することがないのである。
本来、妖怪変化の類というのは、年を重ねればどんな生物でも物でもなれるものだ。
いや、正確に言えばなってしまう。
ただ、そこまで長く生きるモノが少ないというだけの話で。
そうして、妖力を得た妖は、そこで体の成長を止めるのだ。
死を迎えない限り、その姿が変わることはないのである。
生まれた時からの妖ではない限り、妖力を得ると同時に体の成長が止まってしまうのは仕方のないことなのだが、ナルトの場合は幼いうちから妖狐によって妖力を分け与えられる形で妖へと変化したために、死ぬまであの幼い姿のまま成長することはない。
それは、妖狐が胸を痛める部分でもあった。
失いたくないばかりにナルトを妖へと変えたが、それが本当に正しい判断だったのかと問われれば、正しい、と答える自信が妖狐にはない。
が、それを普段は考えないようにしているし、考えているとナルトが怒るので、妖狐にとっては中途半端に消化されぬまま胸に残っているのだった。
と、シリアスなことを妖狐が考えているというのに、目の前の銀狼は、
「ちょっとぐらい見たいじゃないか。ナルトの成長後ってヤツをさv」
などと宣いやがった。
『やっぱり殺るか…?』
内心ちょこっと考えてしまったが、チラリと横目で大きくなったナルトを見て考えを改める。
力を込めて、妖狐が銀狼の肩を掴んだ。
『あら~?失敗したかナ?』
微妙な自分の状況に、妖狐に同意してもらおう、という目論見がはずれたかと、冷や汗の代わりに脂汗が滲んでくる。
だが、妖狐はこれ以上ないほど真剣な眼差しで、
「よくやってくれた!」
言った。
一気に生への希望が開けて、銀狼は内心ホッと胸をなで下ろす。
『コイツからかうのも命がけだよね~』
ならやるなよ、という突っ込みが入ったか入らないかは別として、とにかく銀狼は上機嫌になった妖狐に、へらっと笑って見せた。
がっちりと手を握り合い、即物的な熱い友情(?)が妖狐と銀狼の間に築かれた頃、ようやく話題の中心であるナルトが目を覚ます。
「ん~………えっ?!」
視界に入った世界が違うことに気づき、ナルトは驚いて辺りを見回す。
さっきまで広かったはずの庭が、いつもよりも狭く感じる。
簡単に隠れられそうな垣根は、随分と低くなっていた。
なによりも、こちらを見ている妖狐と銀狼との視線の位置がなんだか近い。
「天雷にせんせー…縮んだ?」
あんまりなお言葉に、二人同時にこける。
「違うよ~。ナルトが大きくなったんだヨv」
銀狼の言葉に、自分の手を見たナルトは、いつも見慣れたソレとは違うことに一瞬真っ白になった。
「なっ、なんなんだってばよーっ!!?」
いつもよりも幾分低い絶叫が、のどかな山々に響きわたった。
* * *
ひとしきり興奮していたナルトは、自分の今の状況を確認してむっつりと膨れていた。
「せんせー酷いってば!オレのこと騙したっ!!」
むぅ、と眉を寄せて拗ねる。
いつもの愛らしい顔がこんな風に膨れれば、ますますつつきたくなってしまうのだが、今の傾国もかくやと言わんばかりの美しい顔でされると、どんなことをしてでも機嫌を治して欲しくなる。
銀狼は「ごめんね~」などと良いながらも、内心では『よっしゃー!よくやった、オレ!想像以上だ!!』とか考えているし。
妖狐は妖狐で、そんな二人を傍観しながらも、内心では『成長するまで待ってからにしても良かったか…ちょっと後悔』などと考えている。
なんだか激しく違う気がするのだが、この二匹にかかっては道理も曲がる(?)といった風なので仕方がない。
「でも、おいしかったでショ?」
「う~、それは…おいしかったってば」
「じゃあ、良いじゃないか。ちょっとした副作用だと思えばサ。それに、今のナルトすっごい美人だよ♪」
「雄のオレが美人でも意味ないってばよーっ!!」
折角収まりかけていた怒りが、「美人」発言によってまた噴き出す。
「もう、せんせーなんか大大大大っキライだってばあぁぁーっ!!」
「なっ!?」
怒りにまかせたナルトの言葉に、銀狼はショックを隠せない。
「な、ナルトおぉ~っ!キライなんてウソだよな?ウソだって言ってくれえぇ~っ!!」
微妙な半泣き状態で縋りつかれ、ナルトは驚いて飛び上がる。
必死に銀狼を引き剥がそうと、ギュウギュウと頭を押しやり必死に妖狐を呼んだ。
「天雷っ、てーんーらーいいぃ~っ!助けてってばあぁ~っ!!」
だが、妖狐は銀狼に今回のことで借りがある(と思っている)ので、強く出るコトも出来ずに苦笑するばかり。
どうにもこうにも銀狼の手はナルトから剥がれそうもなく、仕方なくナルトは「許すっ!許すってばっ!!」と言うことを余儀なくされた。
「でもっ!オレは心の底から怒ってるってばよ!当分、カカシせんせーは出入り禁止っ!!」
ズビシッ!と指を突きつけてナルトが宣言すると、銀狼はころっと態度を変え、
「じゃあ、また来るからネv」
と、軽快な足取りで帰って行った。
ナルトの内心と妖狐の本音は一つだった。
『もう来なくていいから…!』
* * *
「なんか…変な感じだってば」
「ん?」
いつもの通りにナルトの上にのしかかりながら妖狐が問い返す。
「だって、なんか………違うってばよ」
「どう違うんだ?」
どうもナルトの言いたいことが分からずに妖狐が首を傾げる。
「ん~、あえて言うなら…天雷が浮気してる感じ?」
「…待て」
思わずナルトの上から体を起こした妖狐に、ナルトが不思議そうな顔をした。
「しないってば?」
あっけらかんと聞かれて絶句するが、結局「いや、するが…」と答えてしまう辺りが情けない。
「浮気、とまで言われては、このまま手を出すと…いや、でもナルトはナルトなわけだから………」
腕組みをして考え込んでしまった妖狐に、ナルトは目の前で揺れている大好きな9本の尾と同じぐらいふっさりとした自分のシッポをたぐり寄せる。
まだ2本しか生えていないそれをなんとなく撫でながら、ナルトは妖狐が思考の世界から戻ってくるまで待っていた。
「………するぞ」
「あ、戻ってきたってば?」
2本とも終わって、妖狐の尾の毛づくろいに突入していたナルトは、あんまりなセリフを口にする。
「最近、天雷ってば考えすぎだってばよ。する前に悩むんなら、最初っからしないで欲しいってば」
少々ご立腹らしいのだが、その言葉は大変妖狐を凹ませた。
が、素直に「はい」と答える辺り、この二人の力関係が窺える。
「じゃあ、ちゅうv」
いつもの通りに軽く言ったナルトだが、妖狐はそこで初めて、中身は子ども、体は大人vというアンバランスさの危険性に気づいた。
いつもの愛らしいナルトが「ちゅうv」とか言っても、可愛いだけなのだが、今のナルトが「ちゅうv」などと言うと、とんでもなくいやらしい。
それだけではなく、なんだかあやしい遊びをしているような気にまでなってくる。
『あかん………!!』
なぜか怪しい方言で思った妖狐は、それ以上ナルトの口から(妖狐的に)ヤバげな言葉が出てこないうちにと、改めて細い体にのしかかった。
だが…
「天雷」
名を呼ばれて、再び中断された行為に、ガックリと妖狐は肩を落とす。
このパターンから言うと、もしかしたらこのまま今夜はお預けだろうか。
『それはちょっと………』
だが、妖狐のそんな心配をよそに、ナルトは自分の思う通りに行動する。
気づけば、あぐらをかいた妖狐の上に、向かい合う形でナルトが座っていた。
「………何だ?」
いまいちナルトの意図がつかめない。
「今日は、俺がするってば!」
その言葉に、カチンッと妖狐が固まる。
『待て…待て、それは………もしかして、ナルトが俺を×××………?』
恐ろしい想像に、一気に血の気が引く。
「まっ、待て、それは………っ!」
慌てふためく妖狐を無視して、ナルトはにっこりと笑った。
「ずっとしてあげたいって思ってたんだってばよ。だって、俺ばっかりズルイってば!」
そう言われてしまうと何とも返しようがない。
「だから、天雷はジッとしてて?」
こんな時ばかり上目遣いに可愛くおねだりしてくるナルトに、とうとう妖狐も折れざるをえなくなってしまった。
『数百年生きてきても、こんなことになるなんざ想像もしなかった…(泣)』
胸の前で十字を切りながら、表面だけは冷静にナルトの好きなようにさせている。
軽く座椅子に体を預けた妖狐の上に、ナルトは爆弾発言をした割にはおずおずと体を寄せた。
「絶対、天雷はジッとしててってば」
上目遣いに訴えてくるナルトの耳は、何故か後ろに垂れている。
『ん?』
そこでようやくナルトの様子が想像と違うことに気づいた。
非常に恥じらっている様子のナルトは、どうやら「シたい」わけではないらしい。
「ナル…」
「ジッとしててってば!」
どうしたいのかを訪ねようとしたのだが、きっぱりとナルトに制止されてしまった。
仕方なく乗り出していた体を元の座椅子に納め、ナルトの仕草を伺う。
妖狐の単衣の前を大きく開いて、ナルトはそっとそこに頬を寄せた。
すりすりと甘えてくる仕草は愛らしいが、どうにも手持ちぶさたで仕方がない。
これぐらいは許されるだろう、と、そっといつもとは違う長い髪に手を伸ばした。
触れたその感触は驚くほどなめらかで、思わず触れた自分の手を凝視してしまう。
しっとりとした感触が手に残り、絹糸のようだと思った。
いつものナルトの髪の手触りは、なんだかふわふわとした綿菓子を撫でているような感触なのだが、それが成長するとこうなるのかと驚く。
『やっぱりもう少し育つのを待ってからでも………』
当初の罪悪感からではなく、純粋な煩悩からそんなことを考えてしまった妖狐は、ふいに胸で感じていたサラサラの感触が下へと下がっていくことに気づいた。
「っ!?」
帯をくわえたナルトが、それを引っ張ってほどいていく。
子狐だった時にするならばジャレているようにしか見えないようなことが、今のナルトではシャレにならない。
妙に手慣れた娼婦を相手にしているような気になってくる。
「わ…」
自分で露わにしておきながら、現れたモノにナルトは思わず身を引いた。
いつものナルトと変わらない反応を見て、ようやく余裕が戻ってきた妖狐はニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら、
「シてくれるんだろう?」
と揶揄する。
「むぅ…」
ほんの少しむくれてみせ、ナルトは興味深そうに自己主張を始めている妖狐に手を伸ばした。
手の中で、グッとそれが頭をもたげる。
妖狐の様子を伺いながら、そっと舌を当ててみた。
あまり変な味はしない。
「ふ…っ」
鼻にかかった声が妖狐から聞こえてきたことに満足し、けれどそれ以上どうすれば良いのかが分からなくて動きが止まる。
迷っているナルトの髪に指を滑らせ、ゆっくりと撫でながら先を促す妖狐は、自分の中で小さなナルトと大きなナルトが繋がるのを感じた。
「舐めて、くれるんじゃないのか?」
さりげなく次の行為を教えてやると、ナルトはコクッと頷いてペロペロと舐め始めた。
『こっ、これは…っ!』
初めてするナルトの技巧は、妖狐が喰ってきた(オイ)どの相手よりも稚拙だ。
稚拙なのだが、それがまたなんとも言えない初々しさを醸し出していて妖狐を煽る。
『ってーか、舌がザラついて………』
舌から上に舐めあげる仕草を延々と繰り返すその姿も愛らしい。
ただ、どうも表皮が擦り剥けそうで………。
「ナルト………」
もう良いから、と言おうとした妖狐の眼に、うっとりと瞳を潤ませたナルトの姿が映った。
準備万端に整っているが今だ終わる様子を見せない自分のモノを両手で掴み、頬を紅潮させたまま恍惚としているナルトは、下半身直撃の色っぽさで。
『う…っ!』
どこかの犬ではないが思わず噴き出しそうになった鼻をとっさに押さえる。
バクバクいっている自分の心臓をなんとかなだめすかし、直視しなかようにしてナルトの顔をそこから引き剥がす。
「んぁ………?」
どうやら舐めただけで惚けていたらしいナルトは、おもちゃを取り上げられた子どものような顔をした。
それをキスで慰めて、いつもより腕になじみの良い体を抱きしめる。
後ろ抱きのまま、ナルトの肢体を改めて観察した。
肌の色は、小さい時と変わらない。
透明感のある、雪のような白さだ。
あれだけ外で遊んでいてどうして焼けないのかいつも不思議なのだが、成長してもそれは変わらないらしい。
綺麗な艶を持つ髪は、随分と長くなっていた。
ナルトの全身を覆いそうなほどに伸びているそれは、けれど極上の手触りを持っていることは先程体験済みだ。
脇腹や胸を撫でられているせいで、軽く伏せられた睫が震えている。
その先端までが金蜜色で、舐めると甘いのではないかと思った。
そして………。
「ああ、こっちもちゃんと大人になってるな」
軽く広げた細い足の付け根に手を伸ばすと、白い頬が羞恥で赤く染まる。
「やだ…ってば………」
恥じらうナルトを軽く刺激しながら「何故だ?」と囁いた。
「形も手触りも良い。別におかしいところなんてないぞ?」
そうではないことが分かっているのに、そんなことを良いながら手の中のナルトを指でなぶる。
「んぅ…あっ、あぁ………ん…っ」
小さく体を震わせて越えを押さえようとする仕草が、いつもと違って妖艶に見える。
自然と開く足がその快楽を妖狐に伝えるが、それすらも意図的に煽られている気になってしまう。
そんなことをナルトができるはずがないと分かっているのに、そう感じてしまう自分に苦笑する。
どうやらまだ戸惑っているらしい自分を自覚して、その珍しい感情の動きを酷く新鮮に感じた。
「な…に………?」
軽く方を揺らした妖狐に、ナルトが潤んだ瞳のまま問いかけてくる。
「いや。大きくなっても、ナルトはナルトだと思ってな」
怪訝そうなナルトをそのままに、指をいじっていた箇所の更に奥へと伸ばした。
「あっ………や、やぁ………っ」
入り口を軽く擦られ、とっさにナルトは妖狐の腕にしがみつく。
かまわずに、第二関節までを内部に埋めた。
「やっ、あっ、あっ………」
軽く抜き差ししただけで敏感に反応する。
随分と敏感に成長するものだと感心しながらも、頭の中に渦巻くものは、
『まあ、俺が仕込むんだしな』
だったりする辺りが妖狐だろう。
「あぁっ………や、やぁ………っだぁ………っ」
「何が?」
聞きながら、指を二本に増やす。
「やぁ…っ!」
前からこぼれ落ちてくる滴で濡れている入り口は、妖狐の指を拒めない。
いつもと違う快楽に襲われ、ナルトは混乱しながら感じていた。
「柔らかいな。ココ…」
「ひっ、ぃあぁ…っ!」
指を広げて、軽く回す。
しがみついている腕に爪を立てるが、妖狐の指は止まらない。
「こら。あんまりおいたが過ぎるとこのまま入れるぞ」
言った後で、名案だと気づく。
「や…ん………っ」
ナルトの中から指を抜き、すらりと伸びた足を抱えた。
「えっ、うそっ、やっ、やめっ……ああぁ………っ!!」
ナルトが育てた自身を押し当て、ゆっくりと差し込んでいく。
「ふあぁ………っ、あぁっ、ああぁ………っ!!」
ナルトが必死になって頭を横に振っているが、無視して根元までを強引にねじ込んだ。
「………っ!!」
ビクッと腕の中の体が跳ねて硬直し、弛緩する。
白い腹に散ったさらに白い花に、ナルトが挿入だけで達したのだと分かり笑みが浮かぶ。
小さいナルトだと、はじめはどうしても苦痛が先立つらしく、泣かれることも少なくはない。
だが今、ナルトは別な意味で泣いている。
『っしゃー!これなら多少無茶してもOKかっ?!』
内心ガッツポーズをとった妖狐は、目の前にさらされている項にきつく口づけた。
「ひっ、ぁ…っ!」
妖狐を飲み込んでいる口がきつく締まる。
予想外の刺激に持って行かれそうになり、舌打ちした。
想像以上だった。
内部が熱く熟れているせいでとろけそうだ。
肉壁がザワザワと絡みついてくる。
これを意図的にやっているのだとしたら大したものだが、ナルトの様子からすると勝手になってしまうようだった。
「なにっ、やら…っ、やらぁ………っ、なに、やあぁ………っ」
自分の体の変化についていけないのか、戸惑ったように泣きながらすがりついてくる。
「へんっ、俺っ………ヘンにな………っ!」
「なれば良い」
後ろに伏せられている耳を軽く髪ながらながらねっとりと囁いてやる。
濃い情欲の色を耳から流し込まれ、ナルトはきつく後口を喰い締めた。
目の前が霞み、体内の熱しか考えられなくなる。
「やぁっ、あ…っ、ひっ………ぃ、あぁ…っ!」
抱えられていた足が降ろされた。
体内から、充実していた熱が引き抜かれていく。
「やぁ…っ」
どうして突然中断されたのかが分からず、ナルトは半泣きで妖狐にすがりつく。
「あのままじゃあ、キスできないだろう?」
向かい合わせに抱きしめたナルトの肩に口づけ、改めてその体内に自身を埋めていく。
「あうぅっ!あっ、ああぁ………っ!!」
下から、緩やかな、けれど力強い律動が刻まれ始めた。
「だめ…、ひっ、だめぇ…っ!あぁっ、はぁ…っ、あ、ひ………っ」
いつもと違う快楽に、ナルトは戸惑い、助けを求めて手を伸ばす。
鍛えられた妖狐の肩に爪を立て、髪を振り乱して喘ぎ続ける。
貫かれている中が熱かった。
いつものような苦しさが少ない分、襲い来る快感を制御できない。
出入りする妖狐の雄が肉の道を行き来する度に達してしまいそうになる。
こんなのは自分じゃない、と思いながらも、与えられるものに逆らえず乱されるしかない。
一方、妖狐もナルトの変化に舌を巻いていた。
柔らかな肉壁が、奥へ奥へと誘い込むように絡みついてくる。
根元から絞り上げられるような締め付けに堪えながら、いつもよりずっと奥まで入り込み中を犯した。
「やら…っ、ひっ!ぃたっ、あ………っ!!」
白いむき出しの肩に歯を立てる。
繰り返し、繰り返し………
本来の習性とは違う行為だが、止められなかった。
所有の証に傷を付けるほど獣ではなかったはずなのだが、どうやら今夜は抑えが効かない。
「やぅっ、あっ、ぃた…っ、あぁっ、やあ………っ、あはっ、あっ、あ………っ、もっ、もぉだっ………~~~っ!!!」
悲鳴を堪えるように、ナルトが妖狐の肩に噛みつく。
「痛っ!」
突然の刺激に堪えきれず、ナルトの腰を引き寄せて思い切りぶちまけた。
「………っ!!」
同時に強烈な絶頂へと、互いを引きずり合う。
強く抱き合い、これ以上ないほど体を密着させたまま短いが永遠にも感じるその時間をやり過ごす。
「…くはっ!はぁ、はぁ………っ」
喰い締めていた妖狐の肩から口を離し、ナルトが全身で息を付く。
今だ繋がったままの箇所からドロリとした粘液が溢れるのを感じて身震いした。
「あ………」
薄く目を開けたナルトの視界に入ったのは、自分が噛みついたせいで血を滲ませている妖狐の肩。
「俺ってば、ごめ…っ。夢中で………」
整わない息を肩でしながら、自分のつけた傷を舐める。
「良い。俺もナルトにたくさんつけたからな」
全身を襲う虚脱感に身を任せたまま、ナルトの頭を抱き寄せた。
「ん…っ」
官能に灯をともさない程度の口づけを交わしたまま、つながりを解く。
「すまないが…今夜はこのまま我慢してくれ。動く体力がない…」
そう言い残すと、妖狐は珍しいことにナルトを抱き寄せたまま眠ってしまった。
「ふぁ………」
無意識なのか、眠ったまま髪を撫でてくる妖狐にくっついているうちに、いつしかナルトも夢の世界へと旅立ったのだった。
* * *
翌日………
「いったいってばよーっ!!」
屋敷中にナルトの絶叫が響き渡る。
「ど、どうしたっ?!」
飛び起きた妖狐が見たものは、元の大きさに戻ったナルトが、腰を押さえてうずくまっている姿だった。
「戻った………な?」
「見れば分かるってば!それより天雷っ!」
恐ろしい形相で睨み付けられ、思わず身を引く。
天下の妖狐が子狐の一睨みに本気でビクついている様はなかなかにおもしろい。
「昨日の晩、俺がおっきくなってたからって無茶したってばっ!!」
「あ、いや、その………な?ほら…昨日は………な?」
何が「な?」なのだろう。
そんなことでナルトの怒りから逃れられるはずがない。
「すっごくすっごくすっごくすっごく、すうぅぅぅぅ~っごく!痛いってばよーっ!!」
大層ご立腹な様子のナルトに、ただ妖狐はオロオロするばかり。
齢数百年を生きる妖としての威厳は欠片もない。
「お風呂」
「はい?」
「お風呂に入りたいってば」
「あ、はいはい」
ナルトの言葉に慌てて風呂の用意に走る妖狐は、まるで尻に敷かれまくっている夫のようだ。(いや、あながち間違ってはいないが)
「ナルト~」
「なんだってばよっ!」
伺うような猫なで声で声をかけてくる妖狐が多少薄気味悪く、語気を強めて変じをする。
「一緒に入るぐらいは、良いよな?」
ダメだ、と言おうと口を開いたナルトだったが、あまりにも情けない妖狐の姿に同情したのか、そこが可愛く(…)思えたのか、
「…一緒に入るだけなら、良いってば」
と、許可を出した。
数十分後………
お風呂場でナルトにイタズラしようとした妖狐は、ぶち切れたナルトによって、容赦なく屋敷から蹴り出されたのだった。
終