アナタの向日葵になりたい。
アナタが、向日葵みたいだって言ってくれた、俺の笑顔。
だから、アナタの傍にずっと、咲き続けていたい。
真冬のひまわり
~ナルト SIDE~
「ナルトって向日葵に似てるよね?」
「はぁ?せんせーってば、何言ってんだってばよ?」
突如、カカシが自分に言ってきた言葉に意味が分からず首をひねった。
「ん~・・・さっきね、向日葵が咲いてたからちょっとそう思っただけ」
にっこりと笑って、カカシはナルトのあたまをぽんぽんっと撫でた。
その目はとろけそうなくらいに甘くって。
そして、ナルトにはその笑顔がまるで太陽のように思えた。
俺が向日葵だったら、カカシせんせーは太陽
カカシせんせーが毎日、俺に好きって言葉を浴びせかけてくれるから
せんせーが、俺をずっと見ていてくれるから
俺だってずっとずーっと、せんせーの笑顔が見ていたいってばよ。
だから、俺は向日葵みたいに太陽みたいなせんせーの笑顔を追いかけてるんだってばよ。
「向日葵って、ナルトの笑顔にそっくりだから好きなんだよね。来年の夏、いっぱい向日葵が咲くように種もらってきて植えようか?」
来年の夏。
咲き誇る向日葵と一緒になって、アナタを追いかけているのかな?
「一緒に向日葵見よう」
そう言ってくれた、カカシせんせーの顔があまりにも眩しすぎて。
「・・・・ウン!!でも、どこに種まくの?やっぱりせんせーの家の庭?」
少し返事をするのが遅くなってしまった。
向日葵がたくさん咲いている、アナタの庭を思い浮かべて。わくわくした気持ちが心の奥底から広がってくる。
「ナルトも先生の家に引っ越しておいで。・・・・一緒に、暮らそう?」
そう言われたことは初めてじゃなかった。だけど、俺はいつも『嫌だってば』と返事をして。そのたび落ち込むせんせーをなだめるの大変だったってばよ。『俺と暮らすのが嫌なの?』って聞かれたことがあって、俺はこう答えた『カカシせんせーと一緒に住んだら、体が持たないってばよ』恥ずかしそうに答えた俺に、カカシせんせーは『それもそっか』だって。
「せんせーの家に、住んでもいいの?」
「もちろん」
カカシせんせーのその答えに、俺はにっこりと笑った。
本当に嬉しかった。
そして、俺の顔を見たカカシせんせーもにっこり笑ってくれた。
夏の太陽と同じくらい眩しい太陽みたいなアナタの笑顔
秋になってもう夏の薄れたころ、任務の帰りにサクラがナルトを呼び止めた。
「ナルト、向日葵の種、欲しがってたでしょ?」
そう言ってサクラが中くらいの袋に入った向日葵の種をナルトに差し出した。
「アリガト!!サクラちゃん!」
「うちの庭に咲いてた向日葵の種だから、ちゃんと大事に育ててよね」
ぴしっとナルトの目の前に人差し指を突きつけて、サクラはナルトに言い聞かせるように言った。
「分かってるってば!!じゃーねーサクラちゃん、今から帰ってカカシせんせーと一緒に植えるから!ばいばーい!!」
家の方向に走りながら、ナルトはサクラに手を振った。
ナルトが家に帰ると、カカシはまだ帰ってきておらず、椅子に座ってカカシの帰りを待った。
ドアノブをひねる音がすると、ナルトはバタバタと騒がしい音を立てながら、カカシの元へと急ぐ。
「おかえりなさいvカカシせんせーv」
ドアを入ってきたカカシにナルトは抱きつく。
「ただいま、ナルト」
そう言ってカカシもナルトのカラダを抱きしめた。
「サクラちゃんが、向日葵の種くれたんだってばよ!!一緒に植えようってば!」
少し興奮した面もちでナルトはカカシに話しかける。
「カカシせんせー早く植えようってば!!」
ぐいぐいとナルトはカカシの腕を引っ張って庭へ出ようとした。
「やれやれ・・・そんなに急いで植えても、咲くのは来年の夏ダヨ?」
そう言いながらも、スコップを持ってきてくれるカカシ。
ナルトはそれを横目で見ながら嬉しそうに微笑んだ。
いっぱい、きれいな向日葵が咲くように、カカシせんせーの傍でたくさん笑っていれるように。
懸命にナルトが土を掘り返してくると、にょろん、と大きなミミズが姿を現した。
元いたずら小僧の名残というか、ナルトはそのミミズをカカシの目の前に突きつけた。
せんせー、びっくりするかな?イシシ・・・びっくりして腰抜かしちゃったりして!!
だが、ナルトの思惑とは裏腹に、カカシは少し苦笑すると、ひょいっとそのミミズをナルトから取り上げた。
「こーんなの、ナルトの見慣れてるから平気ダヨv」
にっこりと笑って言ったカカシの言葉に、ナルトは少し首をひねって意味が分かった途端顔が真っ赤になった。
「ばっ!!バカッッ!!カカシせんせーのエッチ、変態!!それに・・・いくら俺でもそんなに細くは・・・」
と、ここまで叫んではっとなった。あんなコトをあんな大きな声で叫んでしまったことに羞恥を感じてナルトは俯いた。
「じゃ、確かめてみようか?」
いつの間にか、カカシの手にミミズはなくて、自分の腰に手を回している。
にっこりといやらしい笑みを浮かべたカカシが、ナルトを押し倒した。
だけど、ここで受けいれてしまうのもまた自分で、ナルトはゆっくりと降りてくるカカシの唇を自分の唇で受け止めた。
明日は、種を植えられるのかな?
冬のある早朝、ナルトはもぞもぞとカカシと一緒に寝ていたベットから這い出た。
昨夜カカシの手によって脱がされたパジャマをのろのろと着ると、そのまま外へと出る。
寒さは感じなかった。
ナルトは秋にカカシと一緒に向日葵の種を植えたところにぺたんと座り込んだ。
「・・・早く、花を咲かせて」
向日葵に訴えかけるようにナルトは土を軽く叩いた。
お願いだから、早く花を咲かせて。
カカシせんせーと一緒に見ようって約束した向日葵。
お願いだから、早く・・・
花を咲かせて
ぎゅうっと土を握り込んだとき、バタン!!とドアの開く音がしたと思ったら、カカシが慌てた形相で外へ出ていこうとするのが見えた。
「カカシせんせー!!」
ナルトが向日葵を植えたところに座り込んだままカカシに声をかけると、カカシは凄い勢いでナルトを抱きしめた。
「ナルト!!心配しただろ?目が覚めたら傍にいないから!」
ぎゅうっとカカシに抱きしめられて、カカシの暖かさが直に伝わってくる。
それだけ自分の身体が冷えていたことに、今初めて気が付く。
耳元で叫ばれてびっくりしたけど、それだけせんせーが俺のこと心配してくれたってことで、嬉しくて、涙が出そうになったよ。
「ご、ゴメンナサイ、カカシせんせー・・・でも、向日葵が気になって・・・」
「夏にならないと咲かないよ・・・。先生、ナルトがいなくてびっくりして心臓止まるかと思ったんだぞ?・・・こんなに冷たくなって・・・ほら、早く家に入ろう」
すっとカカシに抱き上げられて、ナルトはぎゅっとカカシの胸に縋りついた。
温かくて、温かくて、泣いてしまいそうだったから、俯いてじっと堪えていた。
家にはいるとカカシはストーブをつけてその傍にナルトを抱っこしたまま座る。
さっきから一言も口を利かないカカシに、ナルトは恐る恐る口を開いた。
「かかしせんせー、怒ってる?」
「・・・怒ってる」
その言葉に、ナルトはしょぼんとなった。
「・・・・ゴメンナサイ・・・・」
「あのな、ナルト、外に出るとき俺が目が覚めてなかったら一声かけて。じゃないと俺、本当に心臓止まっちゃうヨ?ナルトがいないと、心配で、心配で・・・オマエ、本当にいつかどっかに行っちゃいそうで怖いよ・・・・。お願いだから、俺を独りにしないでくれよ・・・ずっと一緒にいて」
そう言うカカシの声が、少し震えているようで。
ナルトはぎゅうっとカカシに抱きついた。
「・・・ずっと、カカシせんせーの傍にいるから。だから・・・そんな顔しないで欲しいってば。俺、カカシせんせーの笑った顔が大好きなんだってばよ?」
いつもは、アナタが俺に言ってくれること。だけど、覚えていて。俺もアナタの笑顔が大好きだっていうコト。
「いつまでも・・・・傍にいるから・・・」
ぎゅっと抱きしめた、アナタの大きな背中。
『一緒に向日葵見よう』
来年の夏に。
「ずっと傍にいるから、笑っていて、カカシせんせー」
俺が見たかったのは、アナタのそんな苦しんだ顔じゃないんだ。
これは、里の意志。
そして、俺の意志。・・・・俺が、望んだこと。
里の恐怖も、憎しみも、争いも、スベテ俺が持っていくから。
だから、カカシせんせーは、笑っていて。
何も言わなくてゴメンナサイ。
約束も破っちゃってゴメンナサイ。
一緒に向日葵見たかった。
だから冬には咲かないって分かってたのに、早く咲いてって思ってた。
せんせが、『来年の夏に一緒に向日葵見よう』って言ってくれたとき、嬉しくて、悲しかったってば。
間に合わないことが分かっていたから。
だから、だからセメテ・・・・
俺はアナタの傍に咲く、向日葵でありたい。
真冬に咲いた、向日葵。それは俺の笑顔だから。
「・・・ナルト?」
向日葵を見て、俺の名前を呼んでくれる。
分かってくれてありがとう。
せんせーはシアワセになって
体はなくなっちゃうけど、心と、笑顔は置いてくから
・・・約束、破ってごめんね・・・・
お願いだから・・・・シアワセになって
俺は、カカシせんせーの傍にいれて、幸せだから。
春が来て、また夏が来る。向日葵の季節。
里のあちこちに植えられた、向日葵。
『じっちゃん、お願いがあるんだ』
―――――なんじゃ?
『夏になったら、たくさん向日葵が咲くようにしてほしいんだってば。カカシせんせーが淋しくないように』
アナタの傍にずっといられるように・・・。
ずっと傍にいるから、だから、シアワセになって・・・
終