「ナルト、ちょっと話がある」
サスケがナルトに話を切りだした。
そして、ナルトが答える暇も与えずに腕を掴み歩き始めた。
訳が分からないのはナルト。
「別離の日」から必要以上に関わっては来なかったのに。
サクラの前では大喧嘩を繰り広げて見せて。
二人っきりになってしまったらそのままだんまり。
やっぱり、何もなかったフリなんて二人きりのときにはできるはずがない。
今だって、ナルトの心にはサスケに別離を告げられたときの傷は色鮮やかに残っていた。
そして、今サスケがひっぱいている手がまた、何かイヤなことを告げられそうな予感でナルトはいっぱいだった。
「もうっ!!離せってばよ!!」
サスケに捕まれていた腕をナルトは思い切り振り払った。
その瞬間、サスケは少し、傷ついた表情を見せた。
ひどく苦しげなその表情に、ナルトはつい目をそらしてしまった。
今、カカシと付き合っていることに罪悪感を感じたのかもしれない。
そのことに自分が罪悪感を感じる必要がないと分かっているのに、ナルトの心臓はどくどくと鼓動を早めていった。
「で?話って何だってばよ?」
ナルトは小刻みに自分が震えていることが分かった。そんな自分をサスケに悟られないようにナルトはぐっと拳を握り込む。
「お前・・・」
ようやく口を開いたサスケは、そこでいったん言葉を切る。
「ナルト・・・・カカシと、付き合ってるって・・・本当か?」
絞り出すようなサスケの声にナルトの心臓は激しく跳ねた気がした。
なんで、サスケはこんなコトを聞いてくるのだろう?
なんで、咎めるような視線で自分をみてくるのだろうか?
「・・・そ、それがなんかサスケに関係あるのかよ?」
自分の口から出た言葉はひどいモノだということはわかっていた。
言ってから後悔した。サスケは再び顔をゆがめると、ぐっと唇をかみしめた。
次の瞬間、サスケはカッと目を見開くと
「関係、あるだろっっ?!」
サスケはナルトの肩をぐっと掴み、自分の方へと引き寄せ抱きしめた。
「なんで、お前は本当に平気そうにできるんだ?!」
「お前が・・・サスケがそうしようって言ったから・・・だから・・・」
抱きしめられるその感触に、ナルトは懐かしさを感じていた。
「だから、俺・・・・」
「やり直そうぜ・・・」
サスケはそっとナルトの耳元で囁いた。
「・・・・・・」
「なぁ、何とか言えよ」
先ほどまで身を固くしていたナルトの身体からふっと力が抜ける。
「離して」
ナルトの口から出てきた言葉は、深くサスケの胸に突き刺さった。
「俺より、カカシを選ぶのか?」
「離して」
「俺よりも、カカシが好きなのか?!」
「離して、痛い・・・」
さっきよりも抱きしめる力が強くなっている。
ナルトの細い身体が折れるくらいサスケは力を込めた。
みしみしと、自分の身体から骨がきしむ音が聞こえる気がする。
「やめろってば!!離せ!!」
ナルトは抱きしめられて初めて抵抗して暴れた。
「離さない」
サスケは、隠し持っていた白い布をナルトの口に当てた。
しばらくすると、ナルトの身体がサスケの腕の中に崩れ落ちた。
「お前は、俺のものだ」
サスケはそういうとナルトを抱きかかえ、たった一人で住んでいる自分の家へナルトを連れ去った。
ふと、ナルトは下肢に違和感を感じて目を覚ました。
どこか見覚えのある景色。
まだ意識はもやがかかったかのように朦朧としている。
柔らかなシーツの感触と、ギシギシ・・と何かが軋む音、そして後ろからの刺激に一瞬にしてナルトは意識を覚醒させた。
ばちっと大きな目を見開き、驚愕の表情で後ろに顔を向けた。
「目が覚めたか?」
ナルトが後ろを向くと、案の定サスケがナルトを貫いていた。
サスケはいったん動きを止め、不敵な笑みを浮かべてナルトへと言葉を投げかける。
「な、何やってんだってば・・ぁっ・・・」
ナルトの意識がはっきりと覚醒したことをサスケは確認すると再び動きを始めた。
意識を失っているときにじっくりと濡らされたのだろう、ぐちゅぐちゅと卑猥な音とナルトの甘い声が響き渡る。
「はぁっっ・・・・あっっ・・・や、やめ・・・」
「お前の中は相変わらず熱いな・・・それに・・・俺に絡みついて離さないぜ?」
サスケは口の端をつり上げいじわるそうに笑い、ナルトの耳元で囁く。
「カカシとはもう寝たのか?」
激しく注挿を繰り返しながら、ナルトに問いかける。
「あっっ・・・っふぁっっ・・・・ああっ・・や、やぁっっ・・・」
ナルトは甘い声を漏らすだけでサスケの問いには答えられなかった。
「そんなイヤラシイ声、カカシにも・・・聞かせたのかよ!!」
サスケはギリギリまでナルトの中から自身を引き抜き、それからナルトの最奥を一気に突き上げた。
「はぁっっ・・・・あ・・あぁん・・・・あぁああぁぁっっ!!」
ナルトはひときわ甲高い声を上げて絶頂へと達した。
肩で息をしていると、サスケは繋がったままぐいっとナルトの上体を持ち上げ、自分の膝の上に座らせるような格好をとらせた。
自分の体重がかかり、さらに深いところまでサスケが侵入してくる。
「もう、やめ・・・・あはぁっっ・・・ゆ、揺らさ・・・ない・・・でぁっっ・・・・」
サスケはナルトの膝を両サイドに大きく開き、小刻みに腰を揺り動かす。
微妙な振動がナルトの身体に再び火をつけた。
幼い雄が再び立ち上がり始めた。
嫌な行為のハズなのに、体が火照って仕方なかった。
身体は―――――心もだがまだサスケの愛撫も、サスケ自身の熱さも忘れてはいなかった。
だけど、自分の心はもう・・・・。
「お前、さ・・・こういうときどういう顔してるか・・・知ってるか?」
ぐじゅっっとナルトの秘所から音が漏れる。
「はぁ・・・っっ・・・し、知らな・・・はぁんっっ!!」
サスケはくいっとナルトの顎を掴み、正面を向かせた。
「こういう顔だ。前、見てみろよ」
ナルトはサスケに促されるまま、前を見る。
「やだっっ!!」
目を向けた先には、大きく足を広げて、サスケと繋がっている自分の姿があった。
鏡に映された自分の姿を見るのは耐えきれずに、慌てて目をそらす。
「見ろよ。アレがお前の姿だぜ?」
そういうと、サスケは再びナルトを突き上げだした。
「いやぁ・・・あ・・・ああっ・・・・」
「嫌だっつっても、身体はしっかり感じてるみたいだぜ?よく見ろよ鏡。」
ナルトは目をつぶりぷるぷると首を振る。
サスケは、ナルトの柔らかな袋をぎゅっと握りつぶすように掴む。
「いたっっ・・・やめろ!!サスケ!!」
「だったら、鏡見ろよ・・・。いまお前がどんな風になってるか、ちゃんと教えてやるから」
ナルトはこのまま握りつぶされるのではないかと思い、恐る恐る鏡を見つめる。
そこに映し出されている光景はやはり目を背けたくなる。
「ここ・・・こんなになってるんだぜ?」
サスケはナルトの手を繋がっている部分に持っていった。
「い・・・やぁ・・・」
くちゅくちゅと抜き差しが繰り返される。赤黒いサスケ自身が自分の中に入ったり出ていったりするのを見て羞恥で気が狂いそうになる。
「こんなにたくさん濡らして、ヤらしいカラダだな。くちゅくちゅ言ってるぜ?聞こえてるか?」
わざと濡れた音が聞こえるように注挿を繰り返し、ときにはゆっくりと、ときには激しくナルトを下から突き上げた。
「あっ・・・はぁぁっん・・・・!!いやぁあっっ!!あ・・ン・・・っ!!」
突き上げられるたびに、身体に甘い痺れが走っていく。
快感に押しつぶされていく。
「お前、カカシの前でもこんな顔してるんだぜ?恥ずかしくねぇの?・・・こんなに濡らして、グチュグチュ言わせて、よがって。」
「い・・・やだ・・・いわないでぇっっ!!あぁっっ!!はぁっんっっ!!」
サスケは、前に手を回しナルト自身を掴むと緩やかに扱いていった。
「ここから白い蜜が垂れてきてるぜ?・・・イかせて欲しいか?」
サスケは意地悪に聞いてみた。ナルトに「イかせて」と言わせたいのだろう。
だが、決してナルトはそれを口にしなかった。
「も、いいぜ・・・イかせてやる・・・。」
ナルトの中にいて、とうとう我慢のできなくなったサスケは、先ほどナルトで遊んでいたときよりも激しくナルトの中を掻き回した。
「はぁっ!!ああぁぁぁっっ!!ああ・・・・んっっt!!:・・いやぁぁっっ!!」
ビュッッと勢い良くナルトは精を吐きだした。
続いてサスケもナルトの中に思う存分吐精した。
ナルトはかくりと頭を垂れ、そのまま意識を失う、サスケはナルトの中から自身を引き抜き、ナルトの額に小さくキスを落とした。
目が覚めた。そこは、知っている腕の中。好きだったやつの、腕の中。
「起きた・・・か・・・?」
激しい情交のときの彼とは違う声。心底心配しているような、声。
「なぁ・・・・やっぱり、やり直そうぜ・・・・お前が、カカシと付き合ってるって知って、めちゃくちゃ嫉妬した。俺は、まだお前のことを好きなんだ・・・だから、やりなおそうぜ。・・・・それに・・・」
そんな身体じゃ戻れないだろう?
ぽそりと、サスケはナルトの耳元で呟いた。
その言葉に、ナルトはずきっと胸が痛んだ。
「・・・・俺は、サスケのこと、好きだったってば」
ダケド
「俺はもう、サスケとはやり直すことなんかできないってばよ・・・」
むくり、とナルトは起きあがり、散らばっている自分の衣服を身につけた。
「なんでっっ・・・・」
のどの奥から、絞り出すかのような声でサスケはナルトに問う。
「・・・今、やりなおしたとしても、サスケはまた、同じ理由で俺を捨てるってば。・・・あのとき、俺がどんな気持ちだったか、分かる?俺は、お前のこと好きだったから、すげぇ辛かった。もう、あんな思いをするのは嫌だし、そういうコト、抱えたままお前とつき合えない」
ナルトは服を着終わるとすたすたと、ドアの方に向かった。
「・・・・今日のことは」
何か言いたげに、サスケはナルトへと話しかけた。
「ちゃんと、カカシせんせーにも伝えるよ。・・・嫌われても仕方ないと思う・・・。だけど、サスケとのことは・・・・・・・・何も、なかったことにしようってば・・・。」
あの雨の日に、サスケが自分に言った言葉。それで終わりにしたかった。
「じゃ、また任務でな、サスケ・・・・・・バイバイ」
ナルトはドアを開け、振り向かずにサスケに告げ、その場をあとにした。
サスケははっきりと告げられた別離の言葉に、自分がどれだけひどいことをしたか今更ながらに後悔した。
それは、本当に今更だったけれど―――――
ナルトは怠い腰を庇いながら家路についていた。
サスケに「カカシせんせーにはちゃんと話す」とは言ったものの、どうやって伝えればいいかナルトは悩んでいた。
いくら薬で眠らされて、強引に身体を繋げられたとはいえサスケと寝たのは事実だ。
それをいくら話しても言い訳でしかないような気がする。
カカシが「付き合おう」と言ったとき、サスケから捨てられた辛さでその言葉に乗った。あとは、当てつけもあったのかもしれない。
きっと、カカシも分かっていただろう。
それなのにカカシは優しく自分を抱きしめてくれた。
愛してくれていた。
だけど、さすがのカカシもサスケと寝たと知ればきっと、もう付き合ってられない、と言うかもしれない。
「きっと、もうダメだろうな・・・」
ぽつりとナルトは呟いた。
このまま家には帰りたくないと思った。
いつからだっただろう、カカシに対する感情が「恋」になったのは。
はっきりとは覚えていないけど、自分から「しよう」と言ったときにはもうそうだった。
嫌われるのが、怖い。
そう思うと、サスケの家を出て初めて涙が出てきた。
失うのが怖いと心から感じた。
止めようと思っても止めどなく涙は流れてくる。もし誰かが通りかかって涙を見られるのが嫌だから、ナルトは一人土手へとうずくまった。
「うっ・・・ひっく・・・・カカシせんせー・・・えっ・・・」
問いかけても、返事はないことは分かっていた。
泣いても泣いても、涙は尽きることを知らない。
このまま、消えてしまいたい。
そうナルトが思ったときだった。
「ナルト!!」
そう、自分を呼ぶ声はカカシだった。
驚いてカカシを見ると、慌てた様子でいつものマスクも、額当てもしていなかった。
「せ、せんせー・・・・」
駆け寄ってくるカカシに、ナルトは立ち上がるとじりっと後ろに下がった。
「・・・ナルト?」
不思議そうな声を上げて、カカシはその場で立ちつくした。
「・・・・えっと、俺・・・・」
何を言っていいのかが分からず、ナルトはそれだけ呟いた。
「・・・心配したんだよ?昨日から家に帰ってなくて」
そのカカシの言葉に、ナルトはビクリ、と身を震わせた。
言わなければいけないのに、口が動かない。
「・・・・」
うつむいて、怯えているナルトを見て、カカシは、口を開いた。
「・・・・サスケのところに、帰るの?」
そうカカシが口にした瞬間ナルトが弾かれたように顔を上げた。
「サスケの、匂いがする・・・・」
ナルトはビクッと体を震わせた。顔色がどんどん青白くなっていく。
「えっと・・・せんせー、俺・・・」
「俺のこと、捨てるの?」
ナルトが話し出そうとしたが、その言葉をカカシが遮った。
「・・・違う!!」
きっと、カカシに捨てられるのは自分の方だ。
カカシはゆっくりとナルトの方に近づいてきて、縋るようにナルトを抱きしめた。
「・・・・俺を、捨てないでよ、ナルト・・・」
ぎゅっと抱きしめられ、ナルトは抱きしめ返そうとしたが、戸惑う。
ナルトが躊躇していると何か温かいモノがぽつり、ぽつりと落ちてきた。
驚いて顔を上げると、カカシの頬に涙がつたっていた。
「・・・捨てないでよ、ナルト・・・・」
自分は、この手をカカシの背中に回していいのだろうかと、おそるおそるカカシを抱きしめ返した。
そうすると、さっきよりも強く抱きしめられ、ナルトは止まっていた涙が再び溢れてきた。
「何で、泣くの?」
ナルトの涙をカカシは拭いながら問いかけた。
「カカシせんせーが好きだから」
初めてナルトから「好きだ」と伝えた。
「・・・そう言ってくれたの、初めてだネ」
カカシは微笑むとナルトの頭を撫でた。
「・・・最後だから、伝えたかったんだってば・・・」
これから告白することに、きっとカカシは離れていくだろう。
「最後?・・・最後ってどういうこと!?」
さっきまで、確かになるとの気持ちも手に入れたと思っていたカカシは、つい語気が荒くなる。
「・・・・俺がサスケに言ったこと、知っちゃったから?」
ふるふると、ナルトは首を振った。
「・・・最初っから、知ってたってばよ・・・・」
「じゃぁ、ナンデ?」
カカシはぐっとナルトの肩を掴んだ。
ナルトは震える拳をぐっと握りしめ、
「俺・・・昨日、サスケと・・・・・・」
昨日サスケにされたことをナルトは話した。少しずつ、途切れ途切れになりながらも全てを話した。
「ゴメンナサイ・・・・ゴメンナサイ・・・・」
カカシの自分の肩を掴む力が弛んでいったときに、やっぱり、もうつき合えないって言われるとナルトは覚悟した。
「ナルト・・・・」
ぎゅっと目を閉じる。
いっそ、耳もふさぎたかった。
「・・・・俺は、ナルトのこと好きだよ?」
その言葉にナルトははっと目を開けた。
「ナルトの意志じゃなかったんデショ?」
本当に、さっきの話を信じたのだろうか。
「せんせーは、信じるの?」
「・・・ナルトはウソをつかないって知ってるから・・・。」
カカシは再びナルトを抱きしめた。
「本当は、凄く悔しいけど、ナルトが好きだって言ってくれたから・・・帳消し」
「ダケド、帰ったら消毒しようネ」
にっこりとカカシはナルトに笑いかけた。
最後の「消毒」の意味が分かってナルトは少し顔を赤らめたが黙って頷いた。
そして、初めて手を繋いで二人はカカシの家に帰った。
カカシは「消毒」をし終えたあと、すやすやと安らかに眠るナルトを眺めながら髪を梳いていた。
「う・・ん・・・」
ナルトの声に、起きたかな?と思い顔をのぞき込むが目は閉じられたままだった。
少々激しい「消毒」だったため朝まで起きそうにない。というか、朝になっても起きられるかが問題だ。
「起きたら、怒られるかな・・・?無理しちゃって、ゴメンネ?大好きだよ」
ちゅっとナルトの唇に軽くキスを落とすと、カカシも眠りに身を投じた。
カカシが深い眠りについたころ、むくり、と隣に眠っていたナルトが起きあがった。
「・・・俺も、カカシせんせーのこと、大好きだってばよ」
カカシと同じようにナルトもカカシの唇にキスを落とした。
そして、再び眠気に誘われてカカシの腕の中で眠りについた。
カカシが朝を迎えると、腕の中にはまだ深い眠りにいる子供。
時刻は10時30分。
「ナルト!!遅刻!!」
確か今日の集合は9時のはず、慌ててナルトにそう声をかけるとがばっと飛び起きた。
「ウソっっ!!せんせーが悪いんだってばよ!!昨日あんなにするから!!」
ベットから飛び降り走っていこうとするがナルトはかくんと崩れ落ちた。
「・・・・・・腰がたたないってばよ・・・・」
恨みがましい目でカカシを睨む。
「今日は無理だネェ・・・ナルトはゆっくり休んでなさい」
素早く身支度を整えカカシは家を出た。
「えっ!!ちょっと・・・!」
ナルトが言うのも待たずカカシは家を飛び出す。
俺が真夏の太陽になるから、ナルトはあの向日葵のような笑顔を見せて。
いつまでも、俺のために咲いていて。
今はまだ芽吹いたばかりの二人の種。
ゆっくりと育てていこう。
終