がばっっ!!
やっと寝付いたころ、ナルトの夢を見て飛び起きる。
クソッ・・・なんなんだ、最近・・・。
ナルトの夢ばかり見る・・・。
目に焼き付いてるのはナルトの泣き顔。あれから7年も経ったのに、鮮明に覚えてる。 あの場所に来たのは、カカシでナルトじゃなかった。それから三代目のところに連れて行かれた、てっきりナルトがカカシか何かに口を滑らせて、バレて今からお小言か、そう思っていたのに。
「ナルトが、昨夜里を抜けた」
・・・・・・・・・頭が真っ白になった。
「・・・ナルトひとりで?」
弾けてしまった思考回路。
やっとの思いで吐き出した言葉はそれだった。その言葉に、三代目、カカシ、そしてその場にいたイルカは苦々しい顔でサスケを見据えた。
「―――――大蛇丸と、じゃ・・・」
大蛇丸、中忍試験の時、俺の体に未だに消えない呪印を残していった男。
ますます自分の頭は混乱した。
「言っておくが、ナルトが望んだことじゃ。大蛇丸は、それに頷いただけであろう・・・ナルトには追い忍はかけぬ。かけても無駄じゃろうて・・・あの男がいてはいくら忍びがいたとしても犠牲が多くなるだけじゃ・・・。おぬしは、しばらく謹慎じゃ。屋敷でおとなしくしておれ」
重々しく火影に伝えられる。
だけど、そんな言葉俺の耳には入っていなかった。カカシに促されてふらり、と火影の前を後にする。
それから、俺はナルトを憎んできた。愛しただけ憎くなった。
俺を裏切って、あの男・・・大蛇丸と共に里を出たナルト。
サスケは、煙草に火をつけようとしたが、それを投げ捨てベットに突っ伏した。・・・とそこで不穏な気配を感じる。
「さっすけく~ん。おっはーv」
夜中にふざけた挨拶をかましやがる、5代目火影カカシ。
ナルトが里を抜けた後、3代目は病に倒れその後すぐに土に還った。
3代目の遺言でカカシは5代目を襲名。
「・・・・なんか用か?腐れ火影」
あまりにもお言葉なサスケのセリフにカカシはカチン、と来る。
「ん~vあんまり言うと左遷するぞv・・・っと冗談はさておき、だ。話があるからついてきなさい。」
前半とは違って後半はとてつもなく真剣な声。
ついてこい、という言葉にサスケは少々うさんくさげなものを感じたが、おとなしく付いていくことにした。
こんなカカシを見るのは数年ぶりだったから。
火影の執務室、その一角にある壁に向かってカカシは手をかざし、それから何か呟いて印を結んだ。
幻術の一種だったのだろうか、そこには壁ではなく、一枚の扉。
「・・・ま、入れ。」
そうカカシに促され、中にはいるとそこは階段が続いていた。
後ろを振り向くと早く降りろ、といわんばかりにカカシは目でサスケに合図をする。
渋々降りていくと、最下層に着いたのかそこにはもう一枚の扉。
呪符で覆いつくされている。ヒンヤリとした気が扉の向こうから伝わってくる。
「・・・・開けてみなさい。開くようになってるから」
サスケは、ドアノブに手を掛けゆっくりと回した。そして、扉が開かれる。
ぎぃぃぃぃぃ・・・・・・
中に進むと大量の呪符、注連縄がびっしりと部屋中に張り巡らされてあった。そこは結界の中。
ふ、と中央の台座に目をやるとそこに、何か横たわるものがあった。
恐る恐る近づいていくと、見覚えのある色。感じた覚えがある気配。
驚愕に目を見開いた。
そこに横たわるのは紛れもなくナルトの姿。
髪と背は伸びているが、その明るい金髪はナルトのものだった。
蝋人形のように血の気のない顔色。
死んでいるような真っ青なその色。
白い着物に身を包んで、まるで死人のように。だが、微かに呼吸音が聞こえる。
ひゅぅっ・・・・扉から入ってきた風が、ナルトの金色の長い髪を揺らせた。
「・・・これは、どういうことだ!!」
ぎっとカカシを睨む。
「お~・・・怖い怖い。話してあげるためにお前をここに連れてきたんデショ。少しは落ち着けよ。オマエが訳が分からないのもわかるけどね・・・」
「ナルトは・・・大蛇丸と、里を出たって・・・」
昔聞かされた言葉。
ずっと裏切られたと思っていたのに。
ずっと、アイツを憎んできたのに。
アイツは7年もひとりで、この場所に眠っていたというのか。
「・・・サスケ、オマエまだ、ナルトのこと愛してるか?」
愛してる?
俺は、7年間ナルトを憎んだ。裏切られて、憎んでいた。
だけど、そんなにまで憎んだのは、
狂おしいほど愛しているから。
「・・・俺は・・・ナルトを愛してる・・・」
その言葉を口にした途端、両目から涙が溢れた。
裏切られたと思って、枯れた心。もう、誰のことも愛さないと思った。
その渇いた心を潤すことができるのはナルトの存在だけだった。
7年前に枯れた心。二度と言うことのないと思った言葉。
その言葉を口にした途端、自分の心に隅々まで行き渡る、ナルトへ愛。
「・・・知ってるヨ・・・俺を誰だと思ってんのサ。今をトキメク5代目火影だぞ。・・・オマエはさ、ナルトがいなくなってからその能面顔に磨きがかかった。誰も寄せ付けないで、誰にも心を許さないで・・・」
「ナルトを目覚めさせる方法が一つだけある」
バッとサスケは顔を上げた。
いつもはいけ好かないカカシだが、ナルトの目が覚める、そう聞くとそれに縋らずにはいられなかった。
お前の声が聞きたい。
お前の笑顔が見たい。
ドベでウスラトンカチで俺には何にも話してくれなかった上に勝手にどこかえ消えていて、いきなり姿を現して。
一度殴ってから抱きしめないときがすまねぇ・・・・。
お願いだから、目を覚ませよ。
俺を、お前の視界に入れろよ。
お前の瞳に俺を映せよ。
いつまでも寝てんじゃねぇよ。
「教えろ」
「普通ならあと数十年はナルトは眠り続けなければいけない。この封印は三代目が掛けた禁術でね~、術者の命と定期的な犠牲によって、九尾を浄化する。オマエも知ってるだろう?九尾の狐。22年前、この里を壊滅寸前にまで追いつめた妖狐だ。・・・そいつがナルトに封じられている・・・」
どれだけ問いつめても、何も言ってくれなかったナルト。
九尾の話は少しだけ、両親が生きていたころ聞いたことがある。
うちは一族の人間も相当亡くなったとか。
そういえば、その九尾がどうやって倒されたのかは知らなかった。
産まれたころから、里の業全てを背負わされてきたナルト。
ナルトに罪があるというのなら、その身に九尾を宿したナルトを犠牲にして生きながらえている里人の罪はないのか・・・。
「ま、今すぐには目が覚めないかもしれないけど、その数十年を短くすることは可能だって言うことサ。すぐに目が覚めるか覚めないかはオマエの力量次第。だけど、オマエひとりでは無理」
「なんでだ?」
トントンっとカカシは自分の左の首筋を指しながら言った。
「オマエの首、大蛇丸につけられた呪印がまだ残ってるだろう?俺がおさえててやるからオマエはその間にナルトにありったけのチャクラを注入しろ。けどな、一つだけ言っておく。・・・もしかしたら、二度と車輪眼が使えなくなるかもしれない。忍者としてはソレが全てじゃナイケドね・・・・どうする?」
「やるに決まってるだろう、今更聞くな」
サスケが間髪入れずにカカシにそう答えると、カカシはとても満足そうに笑った。
「そ~だよね~、サスケ君はナルトが大好きだもんな~」
「・・・・いいからさっさと始めるぞ」
こんな状況で人のことをからかおうとするのはカカシの悪癖だ。さっさと始めるに限る。
サスケはぎゅっとナルトの手を握りしめ、チャクラを流し始めた。後ろではカカシが大蛇丸の呪印を押さえるかのように手を置いている。
呪印が燃えるように痛みを突きつける。それに呼応するかのように瞳が痛み出した。
しばらくすると蒼白だったナルトの顔に赤みが差した。次第に脈も強くなってきて、その鼓動がサスケを励ました。
「・・・・もう少しだ・・・」
サスケの額には玉のような汗が浮かび、したたり落ちていく。
それはぽたぽたとナルトの顔に降り注いだ。
「・・・・スケ・・・」
それは蚊が鳴くくらいの小さな声だったが、確かにナルトの声だった。うわごとのようにサスケ、と繰り返している。
「・・・・・おいっ!!ナルト!!起きろ!!」
サスケがさらに力を込めてナルトの手を握ると、それまでぴくり、とも動かなかったナルトの手が弱々しくサスケの手を握り返してきた。
瞳がじくじくと痛む。片目の機能が失われてきたようだ視界が白くなる。
「・・・起きろよっっ・・・・!」
ポツリ、とサスケの涙がナルトの手に滴った。
そのときだった。
ナルトの瞳がゆっくりと開かれる。
青い双眸。
空のようなその色。
「・・・サスケ・・・?」
7年ぶりに聞くナルトの声。
サスケはナルトを一発殴る、ということも忘れて抱きしめた。
「・・ウスラトンカチ・・・」
右目はもうよく見えない。
だけど、ナルトの姿だけはよく見えた。
抱きしめたままナルトの上体を起こすと、震える手でナルトはサスケの背中に腕を回した。
「・・・会いた・・かった・・てば・・・」
ぱたぱたと、ナルトの瞳からは涙が溢れてくる。それはサスケの服にシミを作った。
問いつめるとか、そんなものはサスケの頭からは吹き飛んでいて、ただただ、ナルトの感触を確かめたかった。
夢では何度もナルトを抱きしめた。
だけど目が覚めると夢だと思い知らされてまたナルトを憎んだ。
今は確かにその体を抱きしめることができた。
夢じゃないことに心が震えた。
「俺も・・・会いたかったぜ」
だから二度と、どこかに勝手に行くな。
ボソリとナルトの耳元でサスケは囁いた。ナルトは頷くとサスケの肩に顔を埋めてまた涙を流すと、ぽつりと言った。
「・・・ゴメンってば・・・」
二人の感動の再会のシーンを見守るものがひとり。
うらやましそうに指をくわえて見ている。
「・・・・存在忘れられてるかな~?もしかして」
ぼそりと言った一言に、ナルトが反応した。
「カカシせんせー!!」
ぱっとサスケから体を離すとカカシの方に向き直った。
明らかにサスケの顔色が不機嫌なものになっていった。
「何で俺起きてるんだってばよ。どうしてサスケがここにいるんだってばよ。なんで・・・」
「ま、その前に言うことがあるから聞きなさい」
と、ナルトの疑問はカカシに遮られた。
「おはようナルト。サスケとイチャラブこくのはいいんだけどサ、人が見てないところでやろうね。せんせー独り身だからちょっと辛いんだよ」
それともナルトが相手してくれる?
そうカカシが言った瞬間、サスケがクナイを投げはなった。
「・・・このセクハラ野郎が・・・・!!」
カカシはすかさずサスケの放ったクナイをよけるといつの間にかナルトのそばに立っていた。
「ナルト、お腹見せてごらん」
ぴくっっとサスケのこめかみが引きつる。
「アノネ・・・サスケ、別にイカガワシイコトする訳じゃないからそのクナイしまいなさいね。」
ヤるんならこんな所じゃなくて、もっといいところでするよ。
とは口には出さなかった。
ナルトは何の疑いもなく前をはだけさせている。
「カカシせんせー?脱いだってばよー?」
ったく、あのクソ火影・・・
と思いながらサスケはナルトの方に意識を戻すとあまりのことに呆然とした。
白い肌を何の惜しげもなく、ナルトはさらしていた。
「おっっ!!おまっっ!」
突然のことに鼻血が出そうになるのをやっとの思いで堪える。
この7年、ナルトに全く免疫がなかったサスケはその場で襲いかかってしまいそうになってしまった。
「イイ眺めだね~・・・じゃなくって・・・お腹の模様、消えたみたいだね。よかったな、ナルト」
ナルトはカカシにそう言われるとぱっと自分の腹を見た。赤黒い紋様が消えたことに安堵したのか、ほっとしたかのように微笑んだ。
「・・・・・・・・・・・・さっさと服を着ろ」
そこに水を差すのは、理性崩壊寸前のサスケ。
無防備に肌をさらしているナルトは、今のサスケにとっては毒そのものだった。
今にも押し倒しそうになる自分の身体を理性で押さえつけてサスケはがんばった!22年間培ってきた精神力とも言えよう。
「サスケ~!!真っ白だってばよ~!!ホラ」
がばっっ!!
勢いよくご開帳。
それはナルトの太股まであらわになっていた。パンツを穿いていたことはセーフだった。
・・・・白いうなじ、白い太股・・・・・・・・・・・・・・。
サスケの理性を試すかのようなナルトの行動に、ぷつん、とサスケの中で糸が切れた。その糸の名前は「理性」
「・・・オイ、カカシもう連れて帰っていいか?」
サスケの様子を察したのかカカシは人の悪い笑みを浮かべると、
「イイケド、あんまり無理させないんだヨ。明日・・・は無理か・・・明後日ナルトを連れてくること。命令だからネ」
その言葉を聞くとサスケはひょいっとナルトを米俵のように担ぎその場を光速で駆けていった。何するんだってばよぉぉぉぉぉ~・・・・・というナルトの声を響かせながら。
「・・・・・・・・・大変だねぇ・・・ナルト」
起き抜け早々無理させられちゃうなんてね~。
のほほんとカカシは言うとその場を後にする。
階段を上り、再び火影の執務室へ戻りその扉を閉めた。この扉が開かれることがないことを祈りつつ、机に座ると・・・
そこには呆然と立ちつくすイルカ。
「・・・・カカ・・・火影様、今、ナルトがいたような・・・」
「ああ、今サスケと一緒に出ていきましたよ。
あ、でも今日明日は会いに行かないでくださいね。それと、サクラに知らせてやってください。・・・今日はもういいですから」
イルカは、失礼します、と挨拶もそこそこに愛しい妻(笑)の元へと駆けていった。
その様子を見ていたカカシ、やはり独り身が寂しいようだ。
(う~ん・・・やっぱり、独り身にはサビシイねぇ・・・やっぱり・・・ナルトかな)
執務室でなにやらひとりにやける火影・カカシ。よからぬ考えを頭に巡らせている。その日、執務室にはピンクのチャクラが溢れたとか・・・。だれもそこには近づかなかったという。
「こ・・・・腰が痛いってばよ・・・」
ずいぶんな無体をサスケに働かれたナルトは、腰を押さえベットの上でうめいていた。
「フン、そんなこと言っててもオマエだってノリノリだったくせに」
もう一回ヤルか?
ふぅっっ、とナルトの耳に息を吹きかけながらサスケは囁いた。瞬間、ナルトの顔はボッと火を噴いたかのように赤くなる。
「いっっ・・・・・」
「い?」
「いっ・・・一回死んでこいってばよ~っっ!!」
顔を赤らめながらサスケに突っかかっていくナルト。それを見たサスケは・・・
可愛い・・・v
どこまでもナルトの受難は続くのであった・・・・。
それから二人がどうなったかは、また別のお話。
終