「ナルト、苺食べるか?」
任務が終わった帰りに、ナルトはイルカにそう聞かれた。
「食べるってばよ~vv」
「実は昨日、商店街のくじ引きで博●とよ●かが10パックほど当たってな・・・一人じゃ食べきれないし、あんまり置いておくと悪くなるだろうから、7班のみんなで食べたらどうだ?」
「ありがとーイルカせんせーv」
それから、ナルトはいるかの家によって苺を手渡された。それも7パック。さすがに7班だけじゃ食べきれるわけがない。
とりあえず、キバたちがいる8班、シカマルたちのいる10班の面々も誘って食べれば7パックくらいいけるだろうと思い、ナルトは早速誘いに駆け回った。
のが・・・・そもそもの事件の発端だったりする。
「・・・ハイ!!サクラちゃん。これはいのとヒナタの分」
8班、10班の面々を誘い、苺を配っていた。
「アリガト、ナルト」
サクラはナルトから苺の入った器をいのとヒナタのところへ持っていった。
「ねぇ、サクラ・・・・男ども、何であんなにぴりぴりしてるの・・・?サスケ君まで」
サクラから器をもらいながら、ふと疑問に思ったことを聞く。
少し離れた位置にいる7、8、10班の野郎ども面々(ナルトを除く)は異様なまでにぴりぴりとした雰囲気に囚われていた。
「・・・ナルトでしょー、コレだから男って言うのは・・・」
「ナルトがどうかしたの?もっとわかりやすく説明しなさいよ」
いのがそう言うと、サクラはくいっと男どもの方に顎をしゃくった。
「・・・・よく観察すればわかるわよ」
それだけ言うと、サクラは苺を食べ始めた。
いのとヒナタは男どもの視線をたどってみる。
・・・・・・・・・・・・
「もしかして、全員ナルト狙い?」
「・・・・・」
サクラは何も言わなかった。いのは、サクラの沈黙が肯定だととった。
「・・・な、何で・・・?」
「知らないわよ。私だってわからないのに。・・・まぁ、顔は可愛いわね」
そうサクラが言うと、いのはじっとナルトを見つめ、「たしかに」とこくりと頷いた。
「でも・・・サスケ君まで・・・・」
「サスケ君は、ナルトの魅力をダイレクトに感じているから・・・アノ子の笑顔、たまに私でもクラッと来るわよ・・・しかもそれを無意識に振りまいているんだからナルトも罪よねぇ・・・・」
「そうね・・・」
サクラといのとヒナタは苺に練乳をかけながらその成り行きを見守っていた。
サクラがその手に握っている「練乳」それが今回の事件を起こすこととなった。
「イルカせんせーからもらったイチゴ~、甘くておいしいってばよ~v」
にこにこしながらナルトはイチゴを口に運んでいる。
そこへ目をぎらつかせている男ども。それに全くナルトは気が付いていない。
「オイ」
そこへ、サスケが一言かけた。
「そんなに好きなら一個やろうか?」
『抜け駆けすんじゃんねぇっっ!!このむっつりスケベ!!』
ナルトと同じくらい単純明快なキバも、
サスケよりも何を考えているのかわからないシノも
「めんどくせぇ」が口癖のシカマルも
ショタコンと名高い7班担任の上忍カカシも
「熊みたいだってばよー」とナルトに言われて傷ついているモノのなんだかんだ言ってナルトが可愛いアスマも
その目が如実に物語っていた。
そんな面々にサスケは勝ち誇った笑みを浮かべた。
『ウスラトンカチは俺モノなんだよ』
と思い切り看板を掲げたかのように。
「え、え?くれんの?サスケ」
「ああ」
「でもまだイルカ先生にもらった分が残ってるから食べたくなったらお代わりするってばよ」
「そうか・・・・」
サスケは内心チッと舌打ちをしてイチゴをまた口に運び始めた。
ちらり、とキバたちの方に目をやると、
『ザマァみろ』
といわんばかりの目でサスケを見ている。
カカシなどはあからさまに親指を下に向けてサスケを挑発した。
さすがにサスケはカチンときたが、ここで挑発に乗ろうものなら自分が悪者になることはわかっているので平常心、と自分の心をいさめながら落ち着けたのだった。
だがそのとき、
げしっっっ!!
さりげにナルトの横をキープしていたサスケが、いきなり蹴り飛ばされた。
あまりにも突然なことに、受け身もとれずにずさぁっっと音を立てて転がっていくサスケ。その蹴りは相当な威力を持っていたのだろう。哀れなりサスケ。
「ナルト」
そこに現れたのはサスケが殺したくて殺したくて未だ敵わない、サスケの兄・イタチが立っていた。
「あっ!!イタチにーちゃんだってばよv」
蹴り飛ばされたサスケには全く気が付かず、ナルトはイタチに抱きついた。
サスケと同じ黒い髪。それは腰のあたりまで伸ばされていて、顔立ちはサスケと違い、いつもにこにこ笑っているような印象がある。
だが、イタチはサスケ以外の一族を皆殺しにした人間なのだ。ナルトは、いつもにこにこしているイタチに騙されている。
それも、これも、イタチがナルトにはべらぼうに甘いということだった。
「ナルト、元気だったか?」
にっこりと人の良さそうな笑みを顔に張り付け、イタチはナルトを抱き上げた。
ナルトは抱き上げられたことに嬉しそうに目を細め、「元気だってばよ」とイタチに答える。
「イタチにーちゃんもイチゴ食べるってば?」
フォークにぐさっとイチゴを突き刺したものをそのままイタチの口に向ける。
「じゃ、もらおうかな」
イタチはパクリ、とナルトが差し出すイチゴを口に運んだ。
「イタチにーちゃん、おいしい?」
「ああ、甘くておいしいな」
それはまさしく、
「ハイアナタ、あ~んv」
「あ~ん」
「アナタ、おいしい?」
「おいしいよハニーv」
という新婚さんのような光景だった。
『クルァア(舌巻いてます)、殺すぞ、テメぇっっ!』
男性一同ギラッとした殺気をイタチに向かって発する。
ナルトが全くそんな気がなかったにせよ、新婚のような光景を見せつけられてしまっては男として、忍として(?)黙っているわけにはいかない。
意を決して、叫ぼうとしたところに、
「テメぇっっ!!イタチ!!なに、人蹴っ飛ばしてやがるんだっ!」
と、頭に砂をつけてナルトの元まで戻ってきたサスケがイタチに喧嘩腰で怒鳴りつけた。
「サスケ、お兄ちゃんと呼びなさい。それにしても、ふぅ・・・あのくらいの蹴りを交わせないくらいじゃ、まだまだだね・・・」
フッとナルトをだっこしたままわざとらしく呆れた素振りを見せてみた。
「なっっ!!」
「ナルトもそう思うよな?」
「ホントに情けないってばよ~」
なんだと!と言おうとしたサスケはナルトの「情けない」という言葉にいたく傷ついた。
対して、そんなことを言ったナルトは全く悪気がない。サスケ、撃沈。
「イタチにーちゃん、イチゴもっとあるから食べていってくれってばよ!」
「そうだな、ナルトがそう言うのなら俺は食べないわけには行かないね」
イタチがそういうと、ナルトは嬉しそうににっこりと笑い、トンッとイタチの腕から抜けてイチゴ取ってくる!!と走り出した。
「危ないから、そんなに急がなくていいぞ」
というイタチの言葉にくるりと後ろを向き「わかってるってば~!!」と言ったその矢先。
ドンッ!!
ナルトは何かにぶつかり、しりもちをついた。
「いってぇ・・・てばよ・・・」
「ナルト君、大丈夫?」
すっとナルトを抱き上げる。
そのお方はまさに。
「大蛇丸・・・?こんなトコで何やってるんだってばよ?」
大蛇丸はその顔に似合わない笑みを浮かべると、
「ナルト君に会いに来たのよ」
とサラッと言ってのけた。
「ふ~ん・・・・」
あんまりわかってないナルトは、気のない返事を返した。
「でも、どうして俺がここにいることわかったんだってばよ?」
「ナルト君の担任だった、ホラ、鼻のところに傷がある先生に教えてくださいってオネガイしたら教えてくれたのよ」
『オネガイって書いて脅迫って読むんだろうが、このクソ蛇野郎っっ!!』
先ほどから殺気立っていた木の葉の忍びの面々は、あからさまな殺気を見せて大蛇丸を睨みつける。
そんな殺気に全く気が付かないナルトも大物といえば大物だが、平然と全ての殺気を受け止めている大蛇丸も大物だ。
さすが伝説の三忍だけはある。
「ねぇ・・・・サクラ」
「何~?」
男性陣を全く無視して、サクラたちはイチゴを食べていた。
「さっきから、あっちスゴイ殺気を感じるんだけど~」
「どうせナルト絡みでしょ、ほっときなさいって。とばっちり食うのイヤでしょ~」
「ん、そうだね。見てるだけにするわ」
そうそう、といいながらサクラは再びイチゴを口に運んだ。
ああいうのに関わって、自分が無事で済んだ試しがないため、最近ではもう放っておくことにした。
「ナルト、ぜんっっっっぜん気が付いてないのね・・・」
ポツリ、といのは漏らした。
その通りだ、いの。ナルトは全く気が付いていない。
「大蛇丸もイチゴ食うか?」
「アラ、アタシにもくれるの?」
っていうか、最初からそれが目的だっただろう。
「もちろんだってば!イタチにーちゃんの分と一緒に持ってくるからちょっと待ってるってばよ!」
再びナルトはイチゴの方に向かって走り出した。
ナルトの姿が少し遠くなると、そこはまるで戦場のような空気に包まれた。
「・・・お久しぶりね、木の葉の忍び君たち」
口元は笑ってるが、目が笑ってない、笑ってない。
「久しぶりですねぇ、大蛇丸サマ。それにしても、しょっちゅう木の葉の里に出入りしているみたいですけど、音隠れの里の首領ってそんなにお暇なんですか?」
言葉の端々に、あからさまにイヤミを含めてにっこりとイタチが挨拶をした。
「フン・・・アナタこそ、今帰ってきてるんですって?一族を皆殺しにまでしておいて今更帰ってくるなんて、良くものこのこ顔を出せたものね。無神経ってアナタのような人のコト言うのかしら」
バチィッッ!!
伝説の三忍vsうちは家嫡男イタチ。
他の人間は二人を温かく見守っていた。
『相打ちになったら遠慮なくとどめを刺してやるぜ』
と、思いながら。
フフフフフフ・・・・
気味の悪い笑い声を二人があげたと思ったら、いきなり戦闘態勢に入った。
イタチの写輪眼はぐるぐると回っているし、大蛇丸もそれに構えるかのようにペロリ、と口の端を舐めあげた。
「いやぁ、いくら伝説の三忍とはいえど、今は出来たての暇な里の首領をしている楽隠居みたいな方にそこまで言われるなんて、私はとても心外ですよ」
虐殺モードに入っているイタチ。一人称が「私」になっている。コレを止められる人間はただ一人・・・・。
「アラ、たかがうちは一族を壊滅させた程度のガキに、あんなコト言われるなんてアタシの方こそ心外だわ。」
表面上は穏やかだが、とてもそんな風には見えない。
今まさに、蛇とマングース(鼬)の戦いが始まろうとしたそのとき!!
「いたちにーちゃん、大蛇丸~!!イチゴ持ってきたってばよ~!!」
両手にイチゴの入った器を抱え、一生懸命走ってくるナルトに今まで漂っていた雰囲気はどこへ?!といわんばかりに柔らかな雰囲気に包まれていた。
「有難う、ナルト」
「ありがとう、ナルト君」
にっこり。
極上の笑みを浮かべたイタチ&大蛇丸。
ナルトはどういたしましてvとぺこりとお辞儀をした。
『可愛いぞ~!!!俺のナルト!!!!』
とシノを除く男性陣が心の中で絶叫した。
シノといえば「・・・可愛いな・・・」くらいで済んでいる。さすがはシノ。
「アレ?ナルト・・・?お前が持ってるのそれどうしたんだ?」
出番がないぞ!!といわんばかりにカカシがしゃしゃり出てきて、ナルトが持っているものを指さした。
ナルトが持っているもの、それはサクラから預かってきた練乳だった。
「イチゴにかけるとおいしいわよ」と言われて手渡されたものだった。
「サクラちゃんから預かってきたんだってばよ。イチゴにかけたらオイシイって言ってたから」
「そうか~vせんせーにも貸してな」
さりげにナルトの頭を撫でる。
「うん!!俺が使ったら貸してやるってばよ!!」
と言い、ナルトは練乳の蓋を開けた。
だが、どうやって出すのかがわからない。とりあえず、握れば出てくるだろうと、ナルトは思いっきり練乳の入ったチューブを握った。
どぴゅっっ!!
出てくるところを上にしていたものだから、ナルトの顔にモロに練乳がかかった。
「う~・・・顔にかかっちゃったってばよ・・・・」
ハンカチなどという気が利いたものを持っていないナルトは、とりあえず手の甲で顔にかかった白い練乳を拭った。
さて、困ったのが男性陣。
先ほどの情景をしっかりと目にしている。練乳が飛び出してきて顔にかかるその瞬間まで脳裏に焼き付けられていた。
そして、拭った練乳をぺろぺろと赤い舌を出して舐めるナルト。
少しだけ拭いきれなかった練乳がまだナルトの顔に付着している。
「甘いってばv」
そんな顔をしたまま、ナルトは無防備にも当たりに向かって笑いかけた。
がちゃん!!!と、全員乱暴にイチゴの入った器を下へと置き、なぜか前屈みになって全員同じ方向へと走り去っていった。
その方向はというと、トイレ・・・・。途中でシノが戻ってきて、「顔を拭いておけ」とハンカチを手渡した。手渡すやいなやすさまじい早さで再びトイレへと走っていった。
察しがいい方ならもうおわかりだろう・・・。
ナルトの顔にかかった「練乳」アレがまずかったのだろう。
色といい、形(?)といい、そして、あの顔にかかったときのナルトのびっくりといったような顔といい、その後練乳をぺろぺろとなめる様子といい・・・。
多感なお年頃&邪な欲望を持つ大人たちはつい想像をしてしまったのだろう・・・。
顔○というものを・・・。
しかもリアルに想像してしまったがため、全員ヌかないと追いつかないところまでやらかしてしまったのだ。
後に残されたナルトは、何がなんだかわからずに佇むのだった。
そしていつの間にかいたサクラにぽんっっと肩を叩かれ
「アンタも罪なやつね・・・・」
と総てを見ていたサクラはナルトにそう呟いた。
それでもナルトは全然わかっておらず、帰ってきたら誰かに聞こうと思っていた。
一番最初に戻ってきたカカシにナルトは「どーしたんだってばよ?俺だけ仲間はずれなんてイヤだってば」と言うとカカシは
「んじゃ~、先生が教えてあげるから、俺の家行こうな~vv」
「うん!!カカシせんせーが教えてくれるなんて珍しいってばよ!!早く教えてってばよ~!!」
無邪気たっぷりナナルトに、カカシは内心「いただきます」と唱えた。
邪なオーラを纏ったカカシにサクラは止めもせずにナルトに「ご愁傷様・・・」と心の中で呟いたのだった。(止めろよ、オイ)
それから何があったのか、恥ずかしいので伏せておくことにする・・・・。
終われ