カカシははっきり言って凄く機嫌が悪かった。
他でもない大事なナルトが大変、大いに侮辱されてるからだ。
実際、今日も同僚に大変同情された。ぶん殴った。と、いうかほぼ半殺しだった。
あんなに感情をあらわにしてコトがないカカシが大激高して相手にくってかかり、あっという間に半殺し。アスマも紅もガイも、相当焦ってカカシを止めていた。
例え、あの噂が真実だとしても、カカシはナルトが大事だし、愛しく思っていた。
ナルトが俺の全て。
ナルトが俺の命を握っている。
いるのが当たり前で、いなくなるなんて信じられない。
ナルトが願うなら一緒に逃げよう
ナルトが願うなら里だって滅ぼしてみせるよ?
あの子が俺の全てだから、あの子を否定するってコトは俺を否定するってコト。
そんなヤツ、俺は容赦しないよ。
殺してやりたいくらい。
ナルトが止めるから殺らないけどネ。
12年前、ナルトがいなけりゃとうのとっくに滅びていた木の葉の里。
ナルトのおかげで生きていられるオマエらが、なんでナルトを蔑むんだ?
むしろ、蔑まれるのは俺たちだろう?
へその緒を切ったばかりの赤ん坊の腹に、あの禍々しい九尾を入れたのは俺たち12年前の人間。
俺たちの罪。
だけど、責められるのは、罪をなすりつけられたのは、まだ小さなナルト。
だから、ナルトが願うならこんな里すぐにでも滅ぼしてあげる。
だけどお前は優しいから、それを望まないんだよね。
ナルトの耳にあの噂が届いていないことを祈りつつ、カカシは自分の家へと帰っていった。
ここ数日、アスマは再びナルトを色街で探していた。
だがいっこうに見つけることは出来なかった。
家にいるのだろうと思い、ナルトの家を覗いてみたが誰もおらず、やはり客を取っているのだろうと思い数日間ずっとアスマは色街に通っている。
まるで愛し子を捜すかのように。
「・・・・アスマせんせー・・・しつこいってばよ」
その声に驚いて後ろを向くとナルトが立っていた。
・・・・オイオイ・・・上忍の後ろ取るんじゃねぇよ・・・。こえぇガキだな・・・。
「びっくりさせんなよ。おめぇ、俺を避けまくってた割に、あっさり姿を現したな」
「避けてたわけじゃないよ。アスマせんせーが俺のこと見つけられなかっただけでしょ?でもいい加減ウットウシイからいい加減俺を捜すのやめてくれない?それだけ言おうと思って」
「カカシを騙してるって言うのなら、俺はお前をゆるさねぇぞ?アイツはお前に本気で惚れてるんだ。弄ぶような真似だけはすんな。」
すっと、アスマの目が細められ、ナルトをとらえた。
「・・・そうだね。俺はカカシせんせーを騙してるのかもね。でも、俺だってカカシせんせーのこと大好きなんだよ。だから、アスマせんせー、俺の邪魔しないで。」
カカシせんせーが不幸になるから俺のこと邪魔しないで。
「お前、何考えてるんだ?カカシが好きならこんなことヤメロ。」
「んもう!!ほっといてくれれば良いんだってばよ!だいたい、アスマせんせーには関係ないってば!シカトして何も見なかったことにしてくれればいいじゃん!もう俺帰る!」
らちがあかないと思ったのか、アスマはナルトの肩をつかみ、だんっっと壁に押しつけた。
「・・・・・何のつもり?」
とたんに、子供のフリを装ってたナルトから、冷たい声がかかる。
「それはこっちのセリフだ。」
・・・・・・・
「・・・絶対に邪魔しない、絶対に誰にも話さないって誓うなら言ってもいいよ。」
「カカシに関係することか?」
「誓わないなら何も言わないよ。」
「・・・わかった。」
すっと、アスマはナルトから手を離した。
ナルトは少し痛かったのか離された瞬間少し顔をゆがめた。
「んじゃ、言うけど、マジで誰にも言わないでくれってばよ。特に、カカシせんせーには。言ったら、
・・・・・・・あんた、殺すよ?
ぞっ・・・・・・・・・・・。
(なんだって俺が下忍ごときに気圧されてんだ・・・)
「あのね・・・・
そして、アスマは聞いてしまった。
ナルトが何をしたかったのか。
そして、それを聞いてしまったからにはアスマ自身も後には引けない状況へと追いやられていた。
なんて、悲しいことを考える子供なのだろうか。
どうしてここまでカカシのことを愛することが出来るのだろうか。
カカシはそんなこと決して望んでいないのに。
「お前、それで本当に良いのか?」
「いいよ。俺はカカシせんせーが不幸にならないならそれでいいんだ」
あの人が俺の全て。
だからあの人を不幸にするものの存在は許さないよ。
だから、俺は自分の存在を許さない。
消えて
その次の日の任務。カカシはいつものように可愛い恋人を見ていた。だが、少し様子がおかしい。
いつもはカカシが手を振ると顔を真っ赤にして怒るくせに、今日は少し微笑むだけ。どことなく元気がない。
「ナルト?どうかしたの?」
任務終了後、サスケとサクラと別れた後、ナルトに問いかけた。
そんなカカシを見て、ナルトは切なくなった。
ああ、俺は、こんな優しい人を騙してるんだ。
「何でもないってば!!う~ん、でも最近ラーメン食べてないから元気が出てないのかなぁ?とにかく何でもないってばよ~」
カカシせんせーってば心配性なんだってばよ~
ナルトはにこにこ笑ってカカシを見た。
「あの噂、聞いたの?」
ぴくり、となるとの肩が震えた。
「聞いたんだね・・・。あの噂は、ホントウ?」
きゅっと、ナルトは唇をかみしめる。
ようやくナルトの計画が先にすすもとしていた。何も聞かないカカシにナルトから切り出そうと思ってたぐらいだ。
「・・・うん・・・・」
虫の鳴き声だけがあたりを包んでいた。
二人は何も言わずにてくてく夕暮れの道を歩いていた。
「・・・・カカシせんせー、今日は俺、先に帰るね。ごめんなさい。また明日」
ナルトは耐えきれなくなったのかそれだけ言うとカカシのもとを駆け足で去っていった。そして、カカシは一言も発することなくなるとを見送った。
確かに、カカシは戸惑っていたが、そのことでナルトを嫌いになるなどあり得なかった。だけど、なんて声をかけていいのかがわからなかった。
一言だけでも何か言えば良かった。そうカカシは後悔した。
だけど、今更後悔してももう遅い。ゆっくりゆっくり、ナルトの計画はカカシの知らないところで進んでいった。
ゆっくりゆっくり、私は貴方の前から消えましょう。