やっとここまで来たよ。
小さな、小さな島。
青い海、青い空、白い砂浜と、雲。
俺はもう、ずっとここにいるよ。
「ナルトを封印する」
里の上層部がそう、ナルトとカカシに言い渡した。
二人の関係を、里の上層部が知ってからの出来事。
それから二人は会うことを禁じられ、そして、会うことがないままナルトは離島へ封印された。
数人の暗部に押さえつけられたカカシと、連れて行かれたナルト。
押さえつけられる前、カカシはナルトに手を伸ばした。ナルトも、賢明に手を伸ばした。
「ナルトっ…!!」
「カカシせんせーっ!!いきたくない!!助けて!!」
二人の手は一瞬触れ合っただけで、どんなに手を伸ばしても、繋がることはなかった。
二人の未来のようにするりと離れていったのだ。
※※※※※※※※※※※※
ナルトが封じられた島は南に位置する小さな無人島。
白い砂浜と、ブルーに輝く海。
そして、鬱蒼と茂る熱帯雨林にはたくさんの果物と、海では魚が踊るようにはねている。
一人、この島に置き去りにされたときこの島で独り過ごしていかなければいけないかと思うと、ナルトは愕然とした。
美しすぎるこの島で、たった独り。気が触れるかと思った。
そして、逃げ出すことも叶いはしない。ナルトだけを通さない結界がこの島の海の周りを取り囲んでいる。
もっとも、結界がなかったとしても、周りは延々海で何一つ移動手段がないナルトが逃げ出せるはずがないのだ。
だけど、この島にはたくさんの動物たちがいて、ナルトを慰めてくれる。
それは、鳥だったり、小さな魚たちだったり。
ナルトが砂浜で寝ころんでいれば、たくさんの海鳥がいつの間にかナルトのそばに寄り添ったりしている。
海に潜れば、きれいな魚たちが自然と集まってくる。
独りじゃないと思えた。
だけど、やっぱり寂しくて。
このきれいな海で、サスケやキバ、下忍同期のみんなと遊べたりするならば、どんなによかっただろう。
このきれいな海を、サクラに見せれたらあの桃色の髪の毛をした女の子はきっとこの海の美しさに感動したことだろう。「サスケ君と、二人できたかったなぁ」なんてことを言いながら。
このきれいな海を、カカシとともにみていたのなら、きっとあの人はこんなことを言ってくれるに違いない。
「ナルトの瞳の色と、同じ色だネ」
ちょっとキザだけど、あの人は少し目尻を下げて、いうのだろう。
そしたら、教えてあげたい。
赤い夕日が沈む頃、この目はカカシと同じ色になるということを。
でも、教えてあげられない。
あの人はここにはいないから。遠く離れた地にいるのだから。
二度と、会えないかもしれない。
会えると、信じていたい。
今日も、ナルトは赤い夕日を見ながら涙を流した。
※※※※※※※※※※※※
あれから、何年たっただろう。
小さな、ナルトの手を握れなかったときから。
下忍だったサスケやサクラたちは着実に自分に近づいてきてる。とくに、サスケの上へ行こうとする執念はすさまじいものだ。
サスケが昔、自分に言った言葉をふと思い出す。
ナルトが遠いところへいってしまった、とただそれだけを伝えただけだったのに、サスケもサクラもなにかを感じ取ったようだ。
特にサスケの方は反応がすごかった。
いきなり自分に『何で守らなかった!!』と食ってかかってきたほどだ。
守らなかったのではなく、守れなかったのだ。
それもそれで、情けない話だと思うが。
それから、自分はサスケやサクラの担任をはずれ、二人はそれぞれ別の版に移った。
ナルトがいなくなってあっさりとなくなってしまった7班。
別れ際というか、最後にサスケにあったときの言葉が忘れられない。
『アンタが会いに行かないのなら、俺が会いに行く。アンタからナルトを奪い取ってやる』
会いたいさ。
胸が焼き焦がれるくらい。
最期に見たナルトの顔を思い出せば、いてもたってもいられないくらい。
『助けて』というナルトの声が、頭の中で反芻しておかしくなるくらい。
どんなことをしてでもナルトに会いに行きたくて堪らない。
ナルトがいなくなってから、どれだけ必死に探しても行方は依然しれない。
上層部に何度詰め寄っても、何一つ情報が得られない。
任務にでれば自分を監視しているであろう暗部の目を盗んで情報収集に明け暮れた。
何一つ、ナルトに関する手がかりは見つからない。
まるで霞か靄のようになんにもつかめなくて。
もしかしたら、と予感が頭をちらつくようになった。
あきらめた訳じゃない。だけど……
不安で不安で仕方なくなる。
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