ばかなやつほどかわいくて



 いい加減
 遅刻魔
 ウザイ
 うるさい
 話を聞かない
 余計なことばっかりやる
 自己中

 カカシにいいところなんてあるのか、と聞かれて考えてみればみるほどカカシの悪いところしか思い浮かばない。
 ここまで印象がわるいと、逆に一つでもいいところがあればそれが凄くよく見えてしまう。
 ま、あいつにいいところなんてないけどな。
 そんなことを思いながら、ナルトは額から流れてくる汗を拭った。








「あつい…」
 つい弱音を吐いてしまいそうになるほど、今日の木葉は暑かった。夏真っ盛りなのだからそれも仕方のないことなのかもしれないが、それにしても暑すぎる。
 そしてそんなときに限って言い渡される任務は草むしりだったりするのだ。不満顔で抗議をしても、イルカにさわやかにがんばれよ、と言われてなにも言えなくなってしまう。
 イルカせんせーには、逆らえねぇってばよ。そんなことをを考えながら今日も灼熱の太陽の下で草むしりを終えてきたところだ。
 もちろん、担当上忍であるカカシは木陰で涼みながらのんびりしていたようだったけれど。
(…あいつ今度任務一緒に入ったら超こきつかってやる)
 がんばれ、とかおざなりな応援をしていたカカシを思い出して、ナルトの額に青筋が浮かぶ。
「ナルト〜!!」
 と、ナルトがそんなことを考えていると、聞き覚えのある声が遠くから聞こえた。顔を上げてみると、ぶんぶんと何かを振りまわしながらカカシが駆けてくる。
 このクソ暑いのに、元気なヤツだな、と少し感心するくらいだ。
 なんだよ、と思いながらナルトはカカシが持っているものを確認しようとするが、カカシは持っていたものをぱっと後ろに隠した。
「なんだってばよ」
 目の前まできたカカシはもじもじとしていて大変気持ち悪い。
 呆れたような目でナルトはカカシを見つめると、カカシはぽっと顔を赤らめた。
「なんだって聞いてんだよ…っ」
 カカシの顔が赤くなる瞬間を直視したせいか、軽い不快感を感じてナルトはイライラしたような声でもう一度カカシに問いかける。そんなナルトの声を聞いて、カカシははっとして口を開いた。
「あのね、ナルトにプレゼントがあるんだけどもらってくれる?」
 とりあえず、顔を赤らめるのはやめろ、とナルトは心の中で呟いた。
「いらねぇっつっても、押しつける気だろ」
 今まで、何度いらないと言っても押しつけられてきた「プレゼント」と書いて「くだらないもの」と読む物品の数々を思い出して、ため息混じりにナルトは呟いた。そのナルトの言葉に、カカシは恥じらいながら「ウン」と頷いた。
 そこは恥じらうところではない。けれどうるうると涙目で見つめられるよりはマシかもしれない。気色悪さが8割増しくらいになるだろうから。
「ほら、さっさと寄こせよ」
 後ろに隠しているのは明白で、ナルトは後ろを覗き込もうとするが、それをカカシが実をよじって阻止する。
「ちょっと待って!目をつぶってくれる?」
「はぁ?」
 カカシはまた訳の分からん恥じらいとやらを抱いているのだろうか。ナルトは頭が痛いと思いながら、しぶしぶ目をつぶった。
 しかし、待てど暮らせどカカシからのリアクションはない。じりじりと太陽が照りつけて軽い痛みすら感じる。
「早くしろってばよ」
「う、うん…」
 機嫌の悪そうなナルトの声にカカシは動揺しているのか、どもったような返事を返す。そして、それと同時にカカシの手がナルトの肩を掴んだ。
 ん?とナルトの頭に疑問が浮かぶ。なぜ肩を掴まれなくてはならないのだろうか。
 嫌な予感がして、ナルトはうっすらと目を開けた。
 目の前にカカシの顔が迫っていて、ナルトはびくっと体を震わせた。
「何してやがる……!!」
 めいっぱい力を篭めて、ナルトはカカシの頭に拳を落とす。